p.14 抽出テキスト
−14−また片側2 か所以上かつ両側でmultiple B-lines を 認めた場合は,diffuse multiple B-lines と呼ぶ.Diffuse multiple B-lines は肺全体に水分が貯留した状態であり,心原性肺水腫だけでなく,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)などの非心原性肺水腫,間質性肺炎などのびまん性肺疾患でも認められる.一方で局在性に認められるmultiple B-lines をfocal multiple B-lines と呼び,肺炎,肺挫傷,肺梗塞,悪性疾患などで認められる. 3胸水(図12) る胸水の内に渦巻く点状の所見を示す.また滲出性胸水では柵状のフィブリンや被包化成分なども見られ,漏出性胸水との鑑別になる[21].両側に貯留していれば心不全の可能性があるが,腎不全や低アルブミン血症の可能性もある.片側性であれば肺炎や腫瘍の可能性があり,胸部CT などのさらなる精査を進める. Curtain sign が消失する程度の胸水貯留( 肺底部で45mm 以上) は大量と考え,安全にドレナージできるス 告されている[16, 17].肺POCUS を用いることで,胸部レントゲン撮影を減らすこともできる.肺内の水分密度が高まると,胸膜ラインから垂直方向に減衰せずに伸び,A-line をかき消す高輝度線状アーチファクトであるB-line が増加する.B-line は一肋間に1,2 本程度は正常肺でも認められるが,3 本以上観察される場合をmultiple B-lines と呼び,肺水腫の所見である(図11)[18]. B-line は胸膜から派生するアーチファクトであり,このアーチファクトを適切に描出するためには,肺のプリセットを選択するか空間コンパウンドイメージングをオフとし,フォーカスは胸膜ラインに近づける必要がある(図6,7)[19]. 肺POCUS による胸水の診断精度は感度100%,特異度100%であるのに対し,胸部X 線検査ではそれぞれ65%,81% であった[20].胸水が背側の脊椎近傍に貯留すると,Curtain sign が見えにくくなる.心不全による静水圧亢進や低アルブミン血症などの膠質浸透圧低下で生じる漏出性胸水は,細胞成分や線維素が少ないため,無エコー領域として描出されることが多い.一方,感染や腫瘍などによる滲出性胸水は混濁するため,描出され 表4.胸痛の鑑別診断 心臓疾患急性冠症候群,狭心症,心膜炎脈管系疾患急性大動脈解離,胸部大動脈瘤,肺血栓塞栓症,肺高血圧呼吸器疾患気管支炎,肺炎,胸膜炎,気胸,膿胸,縦隔炎消化器疾患逆流性食道炎,食道痙攣,アカラシア,胃十二指腸潰瘍, Mallory-Weiss 症候群,胆石症,胆嚢炎.膵炎整形外科疾患 肋骨骨折,肋軟骨炎,肋間筋痙攣,頚椎ヘルニア,脊椎炎,脊椎圧迫骨折,脊椎腫瘍胸壁疾患乳腺炎,帯状疱疹,Tietze 症候群心因性パニック障害(心臓神経症),過換気症候群 図12 胸水と膿胸 肺POCUSでは,胸水の有無も確認する.胸水のエコー性状により,漏出性胸水(左図)か滲出性胸水(右図)かがある程度鑑別できる. 図11 Multiple B-lines 一肋間に3本以上のB-line(*)が観察される場合は, Multiple B-linesといい,肺水腫の所見である.