p.12 抽出テキスト
−12− 徴的な所見を知っておく必要があるが,超音波診断でその組織性状を確定することはできない. 8肉眼的左室駆出率 左室収縮能の指標としては,2 断面ディスク法による左室駆出率が最も利用されていると述べたが,左室駆出率を視覚的に評価する“ 肉眼的左室駆出率(visual EF)” を,急性疾患患者に用いることの有用性が,多くの研究で実証されている.近年の心不全診療ガイドラインでは,左室駆出率が50%以上(HFpEF)か, 40%未満( 駆出率の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF))かどうかで心不全の治療方針が異なるが,その判断にも肉眼的左室駆出率は有用である. 6.肺POCUS の評価項目 6.1 正常所見 健常な肺は,含気がおおく,胸郭一杯に肺が広がっている.肺POCUS でその状態を評価すると,Lung sliding,Lung pulse,A-line,Curtain sign が観察される(図8, 図9).ただし喘息や慢性閉塞性呼吸器疾患などの病態では,肺 POCUS の所見が正常像を示すため, POCUS 所見だけでなく,患者状態と合わせて正常であるかを判断する.肺POCUS で推奨される評価項目を表3 に示す. 1Lung sliding(図8 左図) 壁側胸膜に対する臓側胸膜の呼吸性の動きであり,胸膜ライン上で左右に往復する所見. 2Lung pulse(図8 中図) 心拍動が肺を介して胸膜へ伝達され,胸膜ラインが心拍動に同期しながら垂直方向に動く所見. 3A-line(図8 右図) 含気良好な肺で認められる,プローブと胸膜との間で生じる多重反射である. プローブを胸壁に対し垂直当てることではっきりと描出できる. 喘息/ 慢性閉塞性肺疾患などの過膨張肺や気胸でも観察される. 4Curtain sign(図9) 呼気時に描出される横隔膜下臓器(肝臓,脾臓)が吸気時に肺で(一部)隠される所見.肺底部の含気が良好であることを示す. 的な左房圧上昇が疑われる.左室駆出率が保たれていても,左房拡大を認める場合にはHFpEF を疑い,循環血漿量の評価を考慮してガイドラインに従って心不全治療を行う. 慢性心房細動ではそれだけで左房拡大が生じる.この左房拡大による僧帽弁輪の拡大などによってMR が生じることがあり,心房性機能性MR(atrial functional MR)と呼ばれる. 5重症弁膜症 弁膜症の成因精査や重症度評価はPOCUS の範疇を超える.しかし,循環不全の患者においてその原因を究明するため,大まかに弁膜疾患を評価することは,心臓POCUS の重要な項目である.弁膜症の基本的な評価には,各弁構造の断層法による観察と,カラードプラ法による弁逆流や弁狭窄の評価,さらに心房・心室サイズや機能の評価が含まれる.慢性の重症MR および重度大動脈弁逆流症(aortic regurgitation:AR)は通常左室拡大を伴う.重症弁膜症の存在が判れば,原因不明の心不全,肺水腫,敗血症性ショックの患者管理の方向性を決めることができる. 重症MR,重症大動脈弁狭窄症(aortic stenosis: AS)は高齢者に多い疾患であり,日常臨床で遭遇する機会も多い.急性心筋梗塞の機械的合併症である,乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症を検出することは臨床的に重要であるが,急性発症のMR では左房拡大がなく,カラードプラ法による弁逆流シグナルも観察しにくいことがあり注意が必要である.重度僧帽弁狭窄症(mitral stenosis:MS)を来すリウマチ性弁膜症は少なくなったが,動脈硬化による僧帽弁輪石灰化によって重度MSも生じることもある.大動脈バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping:IABP)や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)を検討する際,それらの禁忌となる大動脈弁閉鎖不全症を除外することも重要である. 6シャント カラードプラ法を用いると,比較的容易に心室中隔欠損症や心房中隔欠損症を発見することができる.心房中隔欠損症は成人まで見逃されていることもあり,右室拡大を来す疾患である.また,心筋梗塞の合併症としての心室中隔穿孔を検出することもできる. 7異常構造物心腔内に腫瘤を指摘することは,脳梗塞の原因検索,感染性心内膜炎の診断などに有用である.血栓,腫瘍,疣腫は,その形態,サイズ,付着部位など,それぞれに特