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−10− などが考えられる.また,広範囲の肺血栓塞栓症や,重度のMR,心タンポナーデ,さらに,甲状腺機能亢進症や貧血,感染症などによる高拍出性心不全も鑑別にあがる. 5右室拡大 傍胸骨左縁長軸断面で,画面の近位に右室流出路近傍が観察される.健常者では右室の径は上行大動脈や左房とほぼ同じであるので,上行大動脈や左房より大きく観察される右室は,拡大している可能性がある.傍胸骨短軸断面では,正常では三日月状の右室が円形の左室に接している.また,心尖部四腔断面では,三角形の右室が左室と並んでいる.したがって,これらの断面で両心室の大きさを比較することで,右室拡大を評価することができる.また,心室中隔の動きを観察することも重要で,右室負荷(容量負荷/ 圧負荷)が存在すると心室中隔の呼吸性変動(septal bounce) や,平坦化などの変化が観察される.右室が拡大し,収縮期にも左室側に心室中隔を圧排している場合には肺塞栓症とそれによる肺高血圧症が疑われる.D ダイマーや造影コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)を考慮して,必要に応じて肺血栓塞栓症の治療を行う.慢性的な肺高血圧症の可能性もある.右室の拡大は,三尖弁逆流,肺動脈弁逆流,心房中隔欠損症などでも起こりうる.これらの容量負荷を来す疾患の場合には典型的には拡張期のみに中隔が左室側に圧排される.Advanced FoCUS で弁膜症やシャントの評価を行う. 6下大静脈の径と呼吸性変動 下大静脈の径と呼吸性変動は,心エコー図検査では中心静脈圧の推定に用いられている.FoCUS では,下大静脈が拡大して呼吸性変動が減弱あるいは消失している場合に溢水の状態,逆に下大静脈が虚脱している場合を脱水と判断する.基本の観察断面は心窩部アプローチによる下大静脈長軸断面であるが,下大静脈拡大の評価には短軸断面の観察も有用である.短軸断面における下大静脈は正常では楕円形に観察されるが,拡大すると円形に近づく[10]. 自発呼吸では吸気時に胸腔内圧が陰圧となって下大静脈径が減少するが,人工呼吸による陽圧換気では,送気で胸腔内圧が上昇すると下大静脈は拡張する.下大静脈から溢水と判断された場合,心不全,三尖弁逆流,肺高血圧症,心タンポナーデ,収縮性心膜炎など様々な疾患が考えられる.それらの鑑別にFoCUS も有用であるものの,循環器内科医や臨床検査技師に依頼して心エコー図検査(full study)を施行することが望ましい.逆に,下大静脈が虚脱している症例では,利尿薬を内服 1心膜液貯留 心膜液貯留は,心膜と心臓の間のエコーフリースペース(黒く表示される無エコー領域)として観察される.左室後壁に収縮期のみに少量のエコーフリースペースを認める場合は生理的貯留といってよい.心膜液が増加すれば,心収縮期を通じてエコーフリースペースが見えるようになり,さらに増加すれば,左室後壁のみだけでなく,右室全面にもエコーフリースペースを認めるようになる. 2心タンポナーデ 心膜液貯留の量にかかわらず,心膜液貯留によって心膜腔内圧が上昇すると,心室の拡張制限が生じ心タンポナーデを来す.心タンポナーデは,収縮期の右房虚脱,拡張期の右室虚脱,下大静脈の拡張などの所見から判断する.詳細な評価法は後述する.心タンポナーデの所見を認めた場合には,可能であれば,advanced FoCUS で上行大動脈拡大や大動脈弁逆流をチェックして大動脈解離の可能性を考える.バイタルサインが不安定であれば緊急の心嚢ドレナージを考えなければならない. 3左室拡大 FoCUS に用いる超音波診断装置の観察深度を常に一定(通常,15 ~16 cm)にしておけば,画面に占める左室の大きさから,見た目で左室拡大を判断することができる.FoCUS では原則的に計測を行わないが,左室拡張末期径を計測し,55 mm 以上であれば左室拡大と判断してもよい.正常な左室は縦長であり弾丸型の形態であるが,拡大すると球状となるため,そのような形態の変化から左室拡大を判断することもできる.心不全を疑う症状や身体所見のある例で,左室拡大・左室収縮能低下があれば心不全の可能性が高くなる. 4左室収縮能 現在,左室収縮能の指標としては,2断面ディスク法による左室駆出率が最も利用されている.しかし,計測に時間がかかり,誤差が生じやすく,計測のトレーニングを要することから,FoCUS では一般的には用いられていない.左室収縮能を視覚的に評価するには,心内膜面の内方運動,左室心筋の壁厚の増大に注目して判断する.また,僧帽弁前尖の運動や,僧帽弁輪の運動も参考となる(左室収縮能が低下するとこれらの運動も小さくなる).そして,左室収縮能を,1正常,2軽度低下, 3重度低下,4過収縮,5心停止に分類する. 過収縮を評価することは,原因不明の低血圧や,呼吸不全の評価に有用である.過収縮が認められた場合には循環血液量の減少あるいは末梢血管拡張(敗血症など)