p.54 抽出テキスト
5.1 植込型LVADにおける終末期 植込型LVADは,わが国ではこれまでは主にBTTとして用いられ,症例によっては自己心機能の改善が得られ離脱する可能性もある(BTR).さらに,近年,欧米ではLVADにより,長期生存が期待できるが心臓移植の適応がない場合にDTとして,また心臓移植の適応が明らかでない場合にはBTDとして用いられており8),わが国でも臨床治験を経てDTが保険収載の見込みである.DT終末期医療ガイドラインは,“我が国における植込型補助人工心臓適応適正化の考え方:Destination Therapyについて“の第4項に記載されている448).植込型LVADの適応により全身循環が維持され,BTT,BTRあるいはBTD,DTを目指している状況では,植込型LVADによる補助継続が妥当である.しかし,以下の状態は終末期と考えられる. 1諸臓器(肝臓など)機能障害が高度で回復不能と判断される場合,2高度な脳神経障害を認める場合,3呼吸不全(循環不全に伴うものは除く)を認める場合,4高度な血液障害(出血傾向など)を認める場合,5重症感染症を認める場合. これに加えて,1BTTとして適応されている場合(心臓移植の適応から外れるようになった場合〈一時的な状態で適応に復帰できる可能性がある場合は除く〉),2 BTDとして適応されている場合(BTT,BTRあるいはDTとしての適応がないと判断される場合),3 DTとして適応されている場合(在宅治療を行うことができない状態〈一時的な状態で加療により在宅治療の継続が可能な場合は除く〉). 5.2 終末期における植込型LVAD補助の 継続について 植込型LVADによる循環補助の治療目的は,心臓のポンプ機能を補助あるいは代行することによりBTT,BTRあるいはBTDへの時間的猶予を得て次の手段に移ること,あるいはDTとして在宅による長期生存を目指すことであり,心臓以外の脳を含む諸臓器機能不全などでその治療目的が達成できないと判断される場合には,新たな治療を加えることは行わず,植込型LVAD駆動の中止を検討す 5 終末期管理る449). 植込型LVADの適応については,治療に関するインフォームドコンセントが行われる.その際に,本人およびケアギバー,家族等に,終末期となった場合には十分な説明と同意を得たうえで新たな治療を加えることは行わないこと,および植込型LVAD駆動中止を行うことについても十分な説明のもと同意を得る.これらの同意説明の記録を十分に残しておくことは必須である.上記が満たされたうえであれば,終末期における植込型LVAD駆動中止など延命措置の中止については,民事上および刑事上の責任が問われることは望ましくない. 多職種チームによる検討,または必要に応じて第三者などの専門家からなる委員会により,終末期となったと判断される場合には,本人およびケアギバー,家族等(本人の意思が確認できない場合はケアギバー,家族等のみ)に病状について十分に説明を行い,本人およびケアギバー,家族等(本人の意思が確認できない場合は,ケアギバー,家族等のみ)が受容した段階で植込型LVAD駆動を中止する.ケアギバー,家族等が植込型LVAD駆動の継続を希望した場合でも,新たな治療を加えることは医学的適応がないことにより行わないのが妥当と考えられる.なお,終末期に及ぶと想定される状態の対応については,事前に本人およびケアギバー,家族等と相談し,対応方法および代理意思決定者を決定しておくことが望ましい450, 451).本人の意志を最大限に反映する手段として,アドバンス・ケア・プラニング(ACP)と呼ばれる価値観共有のプロセスが重視される.医療者には,このプロセスにおいて,必要な情報や選択肢を提示することが求められる.また,本人の意志は変化するため,病状の変化などに応じて適宜意思確認が必要である.ただし,ACPは義務や強制されるものではないことにも留意すべきである. 植込型LVAD駆動中に,終末状態でないにもかかわらず本人あるいはケアギバー,家族等から中止の強い要望があった場合には,多職種チームで協議し,必要に応じて当該施設の倫理委員会に諮る.しかしながら,積極的安楽死や自殺幇助の行為と判断される場合はこれを行うべきではない. LVAD植込患者が死亡した場合には原則として取り出しが必要である.死亡宣告後にポンプを停止させ取り出しを行い,製造販売元に回収を依頼する.植込型LVADの体内植込部品はペースメーカとは異なり,リチウム電池などのバッテリを含まないため,火葬に際して破裂に伴う事故は生じないと考えられる.