GL検索 v0.1.0
画像は 45 ページを描画したものです
page 45

p.45 抽出テキスト

ポンプ交換手術は再胸骨正中切開による方法と,肋骨弓下切開による方法がある395-397).後者の場合,人工心肺の送脱血は大腿動静脈などの末梢血管から挿入する.近年では後者の方法でポンプ交換術を行うことが増えているようであるが,各施設の経験,また原因が感染の場合には感染に伴うデブリードマンの範囲などに応じてアプローチ法を決める必要がある.緊急でポンプ交換手術を行う場合は,抗凝固療法が継続された状態での手術となるため,静注用人プロトロンビン複合体製剤やビタミンKを投与したうえで,十分な止血操作が必要である397).

1.8 血圧管理(表13)

現在国内で使用されている植込型LVADはすべて連続流ポンプにより駆動する.連続流ポンプの流量はポンプの前負荷,後負荷に大きく依存することが知られており,前負荷が一定に保たれている場合,患者の体血圧,すなわちポンプの後負荷が増加するとポンプ流量は減少するが,血圧が低下するとポンプの後負荷が減少することでポンプ流量は増加する.そのためLVAD装着の主目的である心不全,循環不全に対する治療の観点からは,血圧を低く維持管理し,十分なポンプ流量を確保することが求められる.しかしながら,患者にとって過度な降圧は,臓器灌流圧低下による臓器障害や倦怠感,起立性低血圧といった自覚症状につながることも考慮しなければならない.一方でLVAD合併症の観点からは,血圧上昇は脳卒中やポンプ血栓,大動脈弁機能不全を悪化させるとの報告もあり,適切な血圧の維持管理は遠隔期の植込型LVAD患者管理の重要な課題の1つである.

1.8.1 患者教育・血圧測定

植込型LVAD装着患者では自宅退院前に血圧測定の重要性を教育し,他の健康管理指標(体重や脈拍数など)とともに自宅での定期的な測定,記録を習慣づけるように指導する.しかしながら,植込型LVAD症例ではLVADそのものが連続流式であることに加えて,自己心からの拍出が乏しい症例が多いため一般的に脈圧が低く,自宅カフ式血圧計では測定困難な症例も少なくない.そのため外出や外泊トレーニング時に店頭で患者自身に血圧測定機器を試用させ,測定可能な機器を購入してもらうなどの工夫が必要である.どうしても自宅カフ式血圧計での測定が困難な場合は外来受診時に超音波ドプラ法などで医療者が測定し,その結果を患者に提供する.軸流ポンプ型のLVAD患者を対象とした検討では,カフ式血圧計であってもテルモ社のElemano BP monitorはSlow cuff deflation法で超音波ドプラ法を標準として90%以上の症例で正確に測定できたとする報告もある398)

1.8.2 目標血圧

植込型LVAD患者の目標血圧は,当該患者の病態を考慮する必要があるが,文献的には一定以下の血圧に管理したほうがよいとされている.外来での植込型LVAD患者123例(111例が軸流ポンプ)を超音波ドプラ法にて測定した血圧によって3群に分け(管理群<80 mmHg,中等度高値群80~89 mmHg,高値群≧90 mmHg),その後の合併症や予後を評価した報告では,血圧高値群で合併症の発症が多く認められたとする結果であった399).とくに脳出血は血圧高値群で有意に多く認められ,大動脈弁機能不全も同様の傾向がみられたものの,血栓塞栓症に関しては血圧との関連性は認められなかった.また別の研究では,先の報告と同様に外来平均血圧>90 mmHg群で脳卒中発症が多かったことを示しており,さらにポンプ血栓症との関連についても言及している400).これらの結果から植込型LVAD患者の推奨される目標血圧は平均血圧90 mmHg未満と考えられ,さらに忍容性があれば80 mmHg未満にすることも考慮する.

1.8.3 降圧薬使用

また,INTERMACSのレジストリーデータを使用した植込型LVAD装着患者の血圧に関して調べた他の文献では,LVAD患者は装着直後に血圧は一時的に上昇するが,その後低下傾向となると報告している401).そして慢性期には約90%の症例で何らかの降圧薬を投与されており,その

表13 植込型左室補助人工心臓(LVAD)患者の慢性期血

圧管理に関する推奨とエビデンスレベル

血圧の管理目標推奨クラスエビデンス

レベル

心保護作用のある降圧薬を中心に積極的に薬剤を使用し,平均血圧90 mmHg 未満(忍容性があれば80 mmHg 未満)を目指すことを考慮する. IIa C

血圧の自己管理について

自宅での血圧自己測定を推奨,教育し,日常の自己管理目標とともに記録するよう指導することを考慮する. IIa C注)ただし上記指針は軸流ポンプ型LVADを中心とした報告に基づいている.現在わが国で主に使用されている植込型LVADはいずれも遠心ポンプ型であり,血圧に関して今後異なる知見が得られる可能性がある.