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よる出血予防などが重要である.右心不全が原因である場合は,強心薬の持続投与やRVADの導入を考慮する207, 321). 5.15 呼吸不全 J-MACSでは,呼吸不全を“再挿管もしくは気管切開が必要な呼吸機能の低下,またはVAD植込後6日(144時間)以内に,呼吸補助を中止できないこと(ただし再手術のための挿管,または診断や治療における一時的な挿管は除く)”と定義されている.心臓移植が適応となる植込型LVAD適応患者は,一般的に高度の肺高血圧症や,肺梗塞,肺血管閉塞病変を合併していないことが多い.術後併発しうる呼吸不全の原因として,肺炎,胸水貯留などがあげられ,それらへの対処として適切な抗生物質投与,胸腔ドレーン留置や体位ドレナージなどが考慮される.さらに,早期から呼吸リハビリテーションを開始して人工呼吸器離脱を試みることは有用である324).人工呼吸器の設定を最大限まで上げても,人工呼吸器からの離脱が困難な場合は,人工肺による補助を検討する325-327).その際には抗凝固治療を強化することになるため,出血合併症の発生に注意を要する. 5.16 精神障害 VAD装着患者では,精神障害の発生に留意する.心不全患者では,うつ病等を発症する可能性が報告されている328-330).VADの重大な合併症として脳血管障害が発生しうるが,脳血管障害が原因でうつ病を発症する可能性が報告されており331, 332),精神的な後遺症へのケアも必要な場合がある.VAD装着後患者ではVAD非装着後患者に比較して心臓移植施行後の認知機能が障害されていたとの報告がある333).神経学的異常を認めないが脳内に微小梗塞巣所見を有する潜在性脳梗塞は,血管性うつ病(vascular depression)をきたす可能性がある334,335).精神障害,認知機能障害はコンプライアンス,アドヒアランスに影響するなど,各種治療,植込型VADの機器管理,および日常生活ケアなどに問題を生じる可能性がある.精神状態に関する診断,治療では,精神医療チームへのコンサルト,精神医学的診療を適切に行う. 5.17 創傷離開 術前に肝機能障害や腎機能障害,低栄養状態や高度浮腫などを合併していることが多く,通常の開心術と比較して,術後に創傷治癒遅延や創傷離開を合併するリスクが高い.縦隔炎や胸骨骨髄炎を合併するリスクも高く,これら の感染症により胸部正中創が離開することもある288, 289).また,体外設置型VADから植込型LVADへの植替え症例では,体外設置型VADの送脱血管皮膚貫通部は長期間のデバイス留置により局所感染を生じている場合が多く,血流も不良であり,創傷治癒遅延が起こりやすい119).これら創傷治癒不良部に対しては,不良組織を十分に除去したうえで,陰圧閉鎖療法が有用なことがある336). 5.18 消化管合併症 消化管合併症の中には,デバイスに関連した合併症がある.機器の開発進歩によりデバイスの小型化が実現した.第一世代の機種に比べて,植込に伴う消化管の圧迫は生じにくくなっているものの,小型化したデバイスでも報告がある.とくに小さい体格の症例ではデバイス選択を慎重に行う必要がある.また,ドライブラインの腹腔内走行が原因の腸閉塞なども報告されており,植込手術の際には注意を要する.消化管出血以外の腹部疾患の報告は多くないが,比較的母集団の大きい研究で,VAD装着患者における緊急手術を要する腹部合併症で最多なのが腸管閉塞,次いで腸管虚血であった337).この中で病変が小腸であった場合の死亡率は他の臓器に比較し有意に高かった.VADの有無にかかわらず,胆石症,消化管悪性疾患などは生じうる.近年低侵襲手術が主流の腹部外科において,VAD患者に対しても腹腔鏡下手術の安全性が報告されている338).その際にはドライブラインの位置に応じてポート留置の位置を決定する.また,気腹に伴うデバイスへの物理的影響にも注意する.侵襲度合いに応じて,術前抗凝固療法リバースを検討する.それにもかかわらず易出血性のため,後出血のモニタリングは必須である.一方で塞栓症,ポンプ血栓の発生にも注意する必要がある. 5.19 栄養障害,糖尿病 栄養状態は,VAD植込後の臨床経過に影響を与えうる.心不全状態においては栄養の摂取減少や吸収障害,およびタンパク漏出性胃腸炎や代謝障害の発生を認めることがあるので留意する.周術期などには経口摂取が十分にできない場合があり,経腸栄養やそれが困難な場合には中心静脈栄養を検討する.慢性の低栄養状態にある場合はrefeeding症候群の発生に留意する. 糖尿病患者では,血管障害,腎機能障害,および易感染性等の病態により,VAD植込後の臨床経過に影響を与える可能性があることから,適切な管理が必要である.