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p.37 抽出テキスト

4.3.2 体外循環からVADへの移行

体外循環からVADへ移行する際は,1心臓に血液を充満させた状態を維持し,VADの駆動を開始する(左心が虚脱状態で駆動を開始すると,陰圧により空気を引き込む可能性がある),2駆動開始時は各血液ポンプ特有の適切な回転数で駆動させる(逆流しない最低回転数),3体外循環離脱過程でTEEにて左室容量を確認し,徐々に回転数を上げていく.

VADの機種によっては,推定流量計が装備されているものがある.しかし,あくまで推定であり,スワン・ガンツカテーテルによる心拍出量などとあわせて1つの指標として用いる必要がある.また数値自体に重きをおかずに,推移で観察することが望ましい.補助流量が低下した場合には,1前負荷の減少(肺血管抵抗の上昇,右心機能の低下,循環血液量の減少),2VAD駆動状況の変化(脱血カニューレの屈曲,サッキング,血栓などによる駆動障害,送血人工血管の屈曲),3後負荷の増加(血圧,体血管抵抗の上昇)などを考慮する.

VADの適正回転数以上の設定は左室内吸引による左室容量減少のために心室中隔の左室側へのシフトを促す.これにより右室の形態的変化によるTRの助長,右心不全をきたし,より一層の左室容量の減少につながり補助流量の低下となるため十分な注意が必要である.

体外循環の離脱の際はTEEの4 chamber viewにて心室中隔を中心に左右の心室バランスを維持することに務める.心室バランスを維持しつつVADの設定回転数を上げていき体外循環を離脱する.

4.4 RVAD, BiVAD

LVADの脱血による左室容量の減少により,心室中隔の左室側への偏位が起こり,これに伴う三尖弁閉鎖不全症(TR),右心不全が起こりうる262, 263).体外循環からの離脱に際しては,心エコー下に左右心室サイズのバランスを取ることが必要となり264),駆動回転数を過度に上げすぎないことが重要である209).また,これでも中等度以上のTRが生じるときは三尖弁輪形成術(TAP)の施行を考慮する209).

一時的な右心補助として,体外循環からの送血を動脈から肺動脈または肺静脈に変更する方法がある.これによってLVAD流量,体血圧を回復させ,右室心筋の灌流,低血圧に伴う肺血管抵抗の上昇を改善する.

この方法でも改善せず,2剤以上の大量カテコラミン投与,CVP(中心静脈圧)の増加(>15~18 mmHg)にもかかわらず十分なLVAD流量(≧2 L/min/m 2)が得られない場合,RVADの装着を考慮する209).2週間以上の補助が予

想される場合はニプロVADなどの体外設置型VADが用いられ,2週間以内の回復が見込まれる場合には遠心ポンプによる一時的補助が用いられることが多い263).後者のシステムであれば,呼吸補助が必要な場合は人工肺を組み込むこともできる.肺動脈への送血管は肺動脈本幹のほかに右室流出路から挿入固定する方法もある265).脱血管に関しては,右房脱血よりも右室横隔膜面から右室流出路に向けて留置したほうがRVAD流量が増え,臓器機能回復に有効であるという報告もある266).肺出血を伴う場合は,肺動脈送血を避けて左房送血が用いられることもある267).また,日本ではまだ保険償還されていないが,海外では経皮的に肺動脈まで進めて,右房脱血,肺動脈送血が可能な経皮的RVADもある268).

術後のRVAD装着は,適応の変遷により植込型LVADの術後では減少しているが,依然として2.8~6%の症例で必要となっている7-9, 209, 264-270).日本の多施設研究におけるHM-IIでのRVAD装着率は1%であったが154),右心機能により機種が使い分けられている可能性があり注意が必要である.RVADを必要とする症例は,Profile 1もしくはProfile 2が93%を占め予後も悪い.Profile 3~7でRVADを要した症例の成績は悪くなく271),また,遅延なくRVADを装着することで予後は改善しており272),術前評価による術後右心不全の予測が重要である273-276).RVAD離脱が可能であった症例に関しては,LVAD患者と予後は遜色ないとの報告が多い一方,RVAD離脱が困難でBiVADとなった症例は予後不良である157-159, 277, 278).両心不全に対してJarvik2000 LVAD+Jarvik2000 RVAD 279),HVAD LVAD +HVAD RVAD 280),DuraHeart LVAD+Jarvik2000 RVADなどの両心をともに植込型VADでサポートする方法が報告されている.

5.1 装置の不具合

ポンプ機能不全は主要な有害事象の1 つであり, J-MACSでは“機械的循環補助システムの1つ,あるいは,複数の部品の故障が,不十分な循環補助状態(低心拍出状態)か死亡の直接の原因になる場合,またはそれらの恐れがある場合”と定義されている.周術期におけるポンプ機能不全がポンプ本体そのものの故障によって発生すること

5 ICU管理,周術期合併症と その対策