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p.32 抽出テキスト

カニューレ挿入も報告されているが,サッキングの恐れがあり一般的ではない224).

アウトフローグラフトは右室下面から右房心外膜間を通り上行大動脈右前方に至るように配置する.右室前面を通り右室を圧迫しないこと,またグラフトのkinkingが起こらないように注意する219).上行大動脈とアウトフローグラフトの吻合角が90度に近いと,LVAD送血血流が大動脈弁方向に向かうため逆流を発生しやすいとの報告がある225)ので,なるべく血流が頭側に向かうようにするためアウトフローグラフトをやや斜めに離断して吻合する.左開胸アプローチで下行大動脈にアウトフローグラフトを吻合することは可能であるが,大動脈基部に血流うっ滞を生じて血栓が形成され,心筋梗塞を発症するリスクがある226). LVAD駆動後も大動脈弁の開放が見込まれる症例を選択するか,定期的にLVAD回転数を減じて大動脈弁の開放を促すシステムを持つ機種(3.5 Jarvik2000 の項参照) 227)を使用する.

3.2 EVAHEART

EVAHEART 2はオープンインペラー構造の遠心ポンプで,非常にフラットな圧-流量曲線を持ち高い拍動流効果を持つ31, 228).また常用回転数が1,600~2,000 rpm と低く,ポンプ内部のせん断応力が小さいため血液障害が少ない229-232).コントローラは3つのバッテリ(メインバッテリ2個,非常用バッテリ1個)を搭載し電源喪失を起こしにくい.VAD治療における最大の死因は脳血管障害であり,インフローカニューレチップ周辺は血液うっ滞を起こしやすく血栓形成のリスクが高い部位である.EVAHEART 2では,ダブルカフチップレスカニューレ(DCTカニューレ)を採用しており,左室内に血液うっ滞を起こさない233).植込手術は胸骨正中切開で行う.小拳大のポンプポケットを左季肋部に作成し,ドライブラインを右側腹部,または反転させて左側腹部で皮膚を貫通させる.左側腹部に出す際はドライブラインの曲率を半径4 cm以上とし過度な屈曲を避ける.人工心肺を確立した後,上行大動脈に大きめのサイドクランプを掛けアウトフローグラフトを吻合する. DCTカニューレの性能を発揮するためには,適切な縫着手技を行うことがきわめて重要である234).

1左室心尖部を専用のコアリングナイフを用いてコア

リングする. 2固定用のプレジェット付スーチャー(全12針)の針を

心外膜から心内膜側へ全層性に刺入しコアリング孔より出す.その際,心筋断面へ針を折返したり,心筋断面から針を出さない. 3各エバーティングマットレス縫合針を,DCTカニュー

レのプロキシマルカフ,ソーイングカフ双方に連続的に刺入する.この縫着方法によりカニューレ先端部の左室内腔への突出は最小限に抑えられ,かつ左室壁内膜とファーストカフが密着する形で固定できる.送脱血管をポンプと接続するが,エア抜き作業は心室細動下に行うと容易である.アウトフローグラフト接続の際,コネクタねじを緩め同部位を最上位置に保持してアウトフローグラフトの鉗子を緩め,確実に脱気した後レンチでしっかり固定する.除細動にて心拍動を再開,体外循環を離脱し,EVAHEARTを1,500 rpmで始動する.経食道心エコー所見を見ながら回転数を1,700~1,900 rpm程度に調整する.

抗凝固療法に関しては,ワルファリンは術後急性期3ヵ月でPT-INR 2.5~3.0,慢性期3ヵ月以降ではPT-INR 2.0~ 3.0で維持する.抗血小板薬はアスピリン100~300 mgを併用する.

3.3 HM-II 209, 235)

ポンプの横幅は約10 cmと長いために,心膜は心尖部を越えるまで十分に切開する.左季肋部胸郭が狭い場合には,左奥深くかつ右腹直筋鞘背面までポケットを拡大する.ポンプサイザーを用いて,ポケットの大きさに加え脱血管角度の適切性も確認する.ポンプポケットが小さすぎると,サッキングやポンプ血栓等の遠隔期イベントが発生しやすいことが知られている219).

装着は心拍動下または心室細動下で行う.大動脈弁への介入を行う場合には心停止とする.必要に応じて僧帽弁や三尖弁への手技をまず行う.卵円孔開存は必ず閉鎖する.心尖部を十分に脱転して,専用のコアリングナイフを使用して僧帽弁方向へ向けて心尖部心筋をくり抜く.切除部位は形態的心尖の前方2 cmでLADの左方2 cm付近が最も適している.左室内に血栓がないかをよく観察する.脱血の妨げとなる肉柱を切除する.心尖カフ縫着には8~12針のプレジェット付き2-0または3-0糸を使用する.脱血管を挿入して,2~3本の太い結紮糸でカフにしっかりと固定する.左室の空気を除去して脱血管をポンプ本体へ接続する.前述したように送血人工血管を上行大動脈に縫着する.十分な空気抜きをしてから送血人工血管をポンプ本体に接続し,ベンドリリーフをコネクタにしっかりはめ込む.人工心肺の補助を下げながらVADの駆動を開始する.日本人の至適回転数は8,200~9,200 rpmである.

術後の抗凝固療法や抗血小板療法は他の機種と同様で,ワルファリン(PT-INR 2.0~2.5)と少量アスピリンを使用