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p.31 抽出テキスト

ECMO装着中でも臓器障害がほとんどないか,回復の可能性が高いと考えられる場合もあり,最近では必ずしもECMO装着が植込型LVADの適応除外にはならない.中等度の腎障害や肝障害があるProfile 2相当の場合,循環の改善によって臓器機能回復の可能性が高いと判断される症例では迅速な植込型LVAD装着を考慮する.欧米ではProfile 4における装着が増加しつつある215).機種の改良に伴って,わが国でもProfile 4 において植込型LVAD装着が考慮されるようになってきた.とくに,重症心室性不整脈が頻発する症例では心不全の重症度によらずに植込型LVADを考慮する216).

DTにおける装着タイミングについては,INTERMACSの報告54)によるとProfile 3が最適とされている.最近ではProfile 4における装着も増加している.Profile 1における装着はBTT同様に推奨されていない.INTERMACSにおけるDT治療のリスク解析54)によると,若年者,開心術の既往がない,BUNが低い,右心不全が重症でない場合に予後がよい.

2.2 体外設置型VADから植込型VADへの ブリッジ214)

体外設置型VADは,重症心原性ショックのためにBTDとして行われる場合(Profile 1)と,腎機能や肝機能の中等度以上の障害,併発する感染症や高肺血管抵抗などのためにBTCとして行われる場合(Profile 2)に使用される.体外設置型VADから植込型LVADへブリッジするストラテジーはBTBと呼ばれているが,体外設置型デバイスとして補助人工心臓(空気駆動拍動型および遠心ポンプ連続流型)とともに,最近ではcentral ECMOも検討されている.

植込型LVADへのシステム変更手術のタイミングとしては,1自己判断が可能,2心臓以外の臓器障害がないか軽度,3退院して自立・社会復帰が見込める,4カニューレ皮膚貫通部を含めて明らかな感染症がないことの4点がすべて満たされた時期が望ましい.体外設置型VAD装着前の全身状態にもよるが,BTBの時期としては体外設置型装着から数日後の場合もあれば,数ヵ月以上を要する場合もある.

BTBは植込型LVAD装着適応取得のためにわが国で独自に発達してきた治療ストラテジーであり,欧米からはこれに相当する報告がない.第2回J-MACS年次報告で初めてわが国のBTBの成績が報告された5). 3.1 手術の概要

アプローチは胸骨正中切開が最も多く用いられる.とくに大動脈弁や三尖弁などに対する合併手技が必要な場合は胸骨正中切開が標準的である.これら合併手技が不要な場合には他のアプローチも可能で,再手術例では左開胸アプローチが有用である217).このほか,低侵襲アプローチとして左前方開胸と右前方開胸または胸骨上部部分切開を組み合わせる方法の有用性も報告されている218).

ポンプポケットの作成が必要な機種(EVAHEART, HM-II)では,左横隔膜前面を胸壁に沿って切離し,左前腹壁で腹膜前または腹直筋後鞘前に作成する.サイザーを用いてデバイス全体がポケット内に収まるように十分大きなポケットを作成する219).HVAD,HM-3,Jarvik2000ではポケット作成は不要であるが,心嚢の拡大が軽度または胸郭の横幅が狭い場合には,左開胸しデバイスが左胸腔内に位置するよう配置する.

ドライブラインは腹直筋内を通して左右いずれかの上腹部から体外に誘導する.さらに皮下または腹直筋鞘内を通して逆側の腹壁から体外に出すことで,皮膚貫通部からポンプまでの距離を長くとることができ,感染が起こっても縦隔まで波及しにくい220).ドライブラインを覆うベロア部分は皮膚貫通部より体内側に位置させ,貫通部にベロアが露出しないようにすることで皮膚貫通部感染を減らすことができる221).

胸骨正中切開では上行大動脈送血,上下大静脈2本脱血で人工心肺を確立する.他のアプローチの場合,大腿動静脈からの送脱血を行う.これらのアプローチでは心臓の脱転が不要であるため人工心肺を用いない方法も可能であるが,人工心肺のスタンバイと大腿動静脈の確保は必要である222).

心尖部へのカフの縫着とコアリングは,カフをまず縫着してからコアリングを行う“sew then cut”とその逆“cut then sew”がある.両者で成績に差がないことが報告されているが223),前者のほうが人工心肺時間を短縮できる.一方で左室内血栓が疑われる場合は後者が用いられることが多い.インフローカニューレは左室内で心室中隔と平行に僧帽弁方向に向かうよう注意して配置し,カフに固定する.心尖部でコアリングが困難な場合,下壁からのインフロー

3 植込手術