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p.63 抽出テキスト

2 粥状動脈硬化への進展(臨床)

【要旨】• CAL を有している症例では,冠動脈内皮機能障害が

存在している(推奨クラスIIa). • CAL を有する症例では粥状動脈硬化症への進展が否

定はできず,動脈硬化促進因子の排除などの生活指導が必要である.

2.1 川崎病遠隔期の動脈硬化と 一般的な動脈硬化との違い

一般的な動脈硬化はRoss の血管内皮障害反応仮説で説明される107).反応性の炎症が病態形成のスタートであり,慢性炎症と酸化ストレスの亢進をはじめさまざまなメカニズムが複合的に関与した結果,動脈硬化が惹起されると考えられている.高血圧や高血糖などにより血管内皮細胞表面のグリコカリックスが障害されるとバリア破綻が生じる.血球走化因子により内皮障害部位に誘導された単球は,接着分子を介して内皮下へ遊走しマクロファージに分化する.血中から取り込まれた酸化LDL を細胞内に蓄積し泡沫細胞へと変性し,これらの細胞が血管内膜へ集簇することで粥腫が形成される.これが成人の動脈硬化症(粥状動脈硬化)とよばれる粥状動脈硬化の本態である.

川崎病でみられる動脈硬化はおもに石灰化を伴った硝子化線維組織を主体とする後炎症性動脈硬化である462).これは粥状動脈硬化とは組織学的に明らかに異なり,川崎病血管炎の長期予後を論じる際に議論になることが多い.近年の積極的な臨床研究や病理学的検索により463),遠隔期症例における粥状動脈硬化様病変の存在が少なからず証明されつつあり,そのオーバーラップについては今後のさらなる検討が待たれる.

2.2 川崎病遠隔期における血管障害の評価

2.2.1 血管障害マーカーによる評価

CAL 残存群はCAL 非残存群および川崎病既往のない対照群と比較して高感度C 反応性蛋白(CRP)は有意に高く,CAL 残存例では冠動脈に微小ながらも炎症が存在することが示唆される464).また,CAL 退縮例においても,

高感度CRP 高値が持続し炎症が持続しているとの報告がある.川崎病遠隔期症例,とくにCAL 残存例では微小な炎症が存在し,動脈硬化へ早期に進展する可能性がある.また,CAL 残存例の遠隔期は酸化ストレスの状態にあり,血管内皮細胞障害の発現や進展に関与している可能性が考えられる.さらに,その他のマーカー(酸化LDL,urinary Nox/Cre,ADMA,vVW,接着分子,MMP,ホモシステイン)も内皮機能障害の評価に利用されている.

2.2.2 画像による形態学的評価

冠動脈の形態学的評価には経胸壁エコー法(TTE)や冠動脈造影(CAG)が用いられていたが,IVUS の出現により詳細な評価を行うことが可能となった.IVUS の使用により,従来の検査で異常が指摘されていなかった血管に内膜肥厚が存在することが明らかとなった.さらに,詳細な病理学的検討が可能であるvirtual histology IVUS(VH- IVUS)を用いて青年期川崎病症例におけるCAL を検討した報告がある383).退縮瘤と冠動脈瘤では線維性病変が主であったが,内膜肥厚とともにある程度の石灰化を伴っていた.また,病変部位が重症であるほど,石灰化とともに線維性肥厚でない不均一な成分が認められ,動脈硬化病変に類似している所見の存在が報告されている.

頚動脈エコーによる川崎病遠隔期における頚動脈内膜-中膜肥厚についての報告もみられる465).動脈硬化の代替指標とされる頚動脈の内膜-中膜肥厚度は,CAL 残存の有無にかかわらず,川崎病既往例は既往のない対照例に比較して有意に高値を示し,脈波伝播速度(PWV)やLDL コレステロールとのあいだに正の相関関係が認められた.

多列検出器型X 線CT 装置(MDCT)やMR 冠動脈造影(MRCA)はより低侵襲な評価が可能であり,川崎病遠隔期に高頻度に生じる血管の石灰化は,これらの検査で評価可能である189).石灰化病変は内膜肥厚に付随して認めることが多く,狭窄性病変に関連する所見として重要である.

2.2.3 血管内皮機能による評価

近年,血管内膜肥厚といった形態的変化を生じる前段階において機能的障害を評価することに注目が集まっている.動脈の硬度の評価にPWV が有効とされ,成人領域では動脈硬化の指標として用いられている.川崎病遠隔期において上腕動脈-足首動脈間PWV(baPWV)を検討した文献が散見されるが,川崎病既往群はコントロール群に比べて有意に高値を示し,CAL の有無には左右されなかったという報告や466),CAL 残存例のみで有意に高値を示したと