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第6章 粥状動脈硬化との関連

1 粥状動脈硬化への進展(病理)

【要旨】• 川崎病心臓血管後遺症は血管炎後の後炎症性動脈硬

化症と呼ばれるもので,成人における粥状動脈硬化症とは成因,病態,病理組織像のいずれにおいても大きく異なる(推奨クラスI). • 川崎病心臓血管後遺症には血管内皮障害が継続して

存在するため,粥状動脈硬化症の促進因子になりうる. • 川崎病症例の成人におけるACS では,血栓形成は粥

腫の破綻によるものよりも内膜のびらんに起因する場合が多い(推奨クラスI). • 後炎症性動脈硬化症と粥状動脈硬化症との関連につ

いては,まだ一定の見解はない.

1.1 後炎症性動脈硬化症と粥状動脈硬化症

川崎病心臓血管後遺症はすなわち血管炎の瘢痕治癒像であり,後炎症性動脈硬化症と呼ばれる.したがって,粥状動脈硬化症とは成因,病態,病理組織像いずれにおいても大きく異なるが,川崎病既往患者が成人期に達した時,生活習慣病としての粥状動脈硬化症が川崎病心臓血管後遺症にどのようにオーバーラップするかという点については明らかになっていない点が多い.

中等大以上の動脈瘤を形成した場合には,動脈瘤退縮例を含めて遠隔期にも内皮細胞機能障害や慢性炎症反応が持続することが指摘されている102–104, 458).血管内皮細胞障害に対する局所の反応は粥状動脈硬化症の発生病態と共通するものであり,急性期動脈炎を経た後に血管炎後遺病変を残した場合には,正常とは異なる血管構造異常が血管機能異常や血流障害を招来する.その結果として内皮障害がもたらされ,粥状動脈硬化症を促進させることは十分に考

慮し得る.遠隔期管理において,血管内エコー法(IVUS)や光干渉断層法(OCT)は動脈病変の組織性状を評価することが可能であり,動脈炎後遺病変においては冠動脈瘤退縮動脈にも内膜肥厚が存在すること,局所性狭窄部位では高度の内膜肥厚や石灰化が観察されることなどが報告されている459, 460).デバイスの所見と実際の組織像との対比については検討の余地が残されてはいるものの,今後,動脈炎後遺病変と粥状動脈硬化症との関連を解析するうえでも有力なツールになることが期待される.

1.2 病理組織学的所見

遠隔期においても後炎症性動脈病変はリモデリングが継続することが示されている109)が,後遺病変に加わる粥状動脈硬化症についての報告は限られる. 1 冠動脈瘤を形成した成人症例の剖検検索では,巨大動

脈瘤が残存する場合,瘤壁には微小石灰化やコレステリン結晶を含む壊死物質,泡沫細胞の集簇,出血など進行した粥状動脈硬化病変が観察される107).これは年齢を一致させた非川崎病例の粥状動脈硬化症に関する報告と比較すると高度であるとされている461).一方,動脈瘤部に生じた血栓性内腔閉塞の立場から見た場合,血栓形成機序は粥腫破綻よりも脂質成分に乏しい線維組織からなる内膜のびらんに起因する場合が多い.このように急性血栓性冠閉塞に至る病態は川崎病心臓血管後遺症と非川崎病成人との間で異なる可能性がある. 2 瘤退縮動脈や血栓性閉塞後の再疎通血管においても緻

密な線維性組織から成る肥厚内膜内に泡沫細胞の小集簇や血漿成分の染み込みなどが観察されるものの,高度の粥状動脈硬化病変は証明されていない107). 3 後炎症性動脈硬化症と粥状動脈硬化症との関連につい

ては,いまだに一定の見解がない.川崎病心臓血管後遺症,なかでも瘤退縮例を含む拡張性変化を残さない症と粥状動脈硬化症との関連については今後も継続した検討が必要である.