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p.57 抽出テキスト

り有意に低かった301, 421).

通常は中枢側を上行大動脈に吻合するため,グラフト内腔圧が高く血流が豊富である.一方で,血栓形成や内膜過形成による閉塞や,静脈壁の硬化による遠隔期の閉塞も起きやすい.冠動脈枝の狭窄度の影響が小さいため,中等度狭窄のとくに右冠動脈領域には,若年者でも最善の選択となりうる420, 422).また,内胸動脈では十分なバイパス血流が得られない,心筋梗塞急性期など血管抵抗が上昇している状態にも有用である.

小児期CABG 後,成人期には,再手術の適応となることもある.Kitamura らの報告では,最長25 年の経過観察で114 例のうち9 例に再CABG を施行し,グラフト閉塞7例,新規狭窄病変の進行が2 例であった330). ii.シーケンシャル吻合,複合グラフト

動脈グラフトは,抗血栓性に優れ長期開存性が期待できるが,本数や長さには限界がある.回旋枝や右冠動脈にそれぞれ複数の病変に対して,1 本のグラフトで2 ヵ所以上吻合する必要が出て来うる.Dion らは,ITA によるシーケンシャル吻合の平均約10 年の追跡で,良好な開存と再血行再建の少なさを報告した423).上行大動脈に中枢吻合されたAC バイパスグラフトでは予備能が豊富でグラフト内圧が高く,とくに静脈グラフトは狭窄度の影響は受けにくいため,標的枝の狭窄が中等度でも適用することができる.

複合グラフトは,基本的に動脈グラフト同士を組み合わせて,複数の冠動脈枝への血行再建をする手術法で,限りある動脈グラフト血管を最大限活用できるメリットがあるが,競合血流(competitive flow)

* が起きやすいため,適

切な症例および標的冠動脈枝の選択が重要である.とくにY 型(もしくはT 型)では,吻合された複数の標的冠動脈枝の狭窄度などが複雑に関係しているが,前下行枝へのグラフト開存性を障害しないことが求められる424).

Fujita らは,川崎病の若年者に対しても,RA など動脈グラフトによるY 型複合グラフトは有用で開存も良好であったと述べている400).Glineur らは,両側ITA を用いてY 型の複合グラフトを作成すれば,より多くの枝に内胸動脈でのバイパス吻合が作成でき,冠動脈イベントの回避に有効であったとしている425). * 自己冠動脈血流とバイパス血流との競合でバイパス血流が乏

しくなる現象で,結果としてグラフト閉塞のリスクが高まる

iii.オフポンプ手術

人工心肺を使用しない(オフポンプ)手術のメリットは,脳合併症や腎不全など重要臓器の障害の回避であり,川崎病などの比較的若年者では,メリットが得られにくいものと想定される.麻酔科も含めたチームでのオフポンプ手術への習熟度,吻合手技の正確性や吻合部の位置など,血行

再建のクオリティが維持される状況に限り,オフポンプ手術が妥当かもしれない. iv.冠動脈瘤への外科治療

川崎病による冠動脈瘤は,破裂の危険性はきわめて低いとされるが,一方で,瘤内での血栓形成や血栓閉塞により,心筋梗塞の原因となる.造影CT は冠動脈瘤の形態と狭窄病変の評価に有用である189).

一方で,超急性期だけでなく,拡大~破裂例の報告もあり139),成人例では,遠隔期に拡大した5 ~6 cm の冠動脈瘤においては,破裂のリスクを考慮するべきかもしれない426).手術の適応とすべき瘤径については明らかとなっていない.

3.2 生活指導・運動指導

【要旨】成人期川崎病患者においても成人の粥状動脈硬化を促進させる冠危険因子に対しては,徹底的な生活習慣の改善や運動指導を行う.

一般的に,成人の粥状動脈硬化を促進させる冠危険因子の存在はよく知られているが,成人期に達した川崎病患者の後炎症性動脈硬化を有したCAL の進行や予後に対して影響する冠危険因子の存在は特定されておらず,不明である.成人期に達した後炎症性動脈硬化を有した川崎病患者においても,粥状動脈硬化の冠危険因子を避けられない可能性があり,少なくとも成人の粥状動脈硬化を促進させる冠危険因子に対しては,徹底的な生活習慣の改善や運動指導を通して冠危険因子のコントロールを図るべきである.

3.2.1 生活習慣の改善,冠危険因子の治療

後炎症性動脈硬化を有した成人期川崎病患者においても,各種ガイドラインに準拠した成人の粥状動脈硬化を惹起する冠危険因子の除去に努める. a.高血圧症

日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019 427)では血圧レベルを4 段階に整理し,120/80 mmHg 未満を「正常血圧」,120 ~129/80 mmHg 未満を「正常高値血圧」, 130 ~139/80 ~89 mmHg を「高値血圧」,140/90 mmHg以上を「高血圧」とした.

成人期川崎病患者における降圧目標は,合併症がある患者の降圧目標と同じく130/80 mmHg 未満とする.降圧目標に到達していない場合,まず生活習慣の改善など非薬物