p.54 抽出テキスト
退縮瘤症例の長期経過観察(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC)が勧められる. • 成人期に虚血所見を伴う冠動脈狭窄例,心筋梗塞, 心不全および重症不整脈のある例は少数ながら最重症例であり,川崎病の自然歴と成人の動脈硬化の指針に準拠して,個別の対応がなされる. • 川崎病既往の不明な成人冠動脈瘤症例は実数として 多く,その診断には小児循環器医と循環器内科医の連携が重要である. • 退縮瘤の長期リスクの階層化とリスクに応じた長期 フォローの必要性の有無は今後の課題である. 川崎病心臓血管後遺症の成人期の経過観察の方針に関して,小児期のCAL の重症度分類に応じた経過観察と成人期の特徴,成人例の入手可能な情報に基づき検討される.川崎病後遠隔期の経過観察と薬物療法は,川崎病の自然歴と成人の冠動脈疾患の薬物療法に準じて行われている. a.川崎病の病初期から冠動脈瘤を伴わない例 病初期から冠合併症を伴わない川崎病例は,現在では川崎病既往者の97% 以上を占める6).長期経過によるCALの重症度分類では,重症度分類I 群,拡大性変化がなかった群(急性期を含めて拡大性変化を認めない例)と重症度分類II 群,急性期の一過性拡大群(第30 病日までに正常化する一過性拡大を認めた例)を含む.現在,この分類の症例は長期経過観察の適応外と考えられている(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).これを支持するデータとして,川崎病既往小児の心疾患に関連した遠隔期死亡例のほぼ全例に冠動脈瘤を伴うこと379),病初期から正常例において,成人期のACS の報告は見られないことが挙げられる5).しかし,冠動脈瘤のない例でも軽度血管炎が存在し380),また現時点で,成人の粥状動脈硬化による心筋梗塞の好発年齢に達した川崎病既往者症例は少ないと言える.したがって,川崎病後正常冠動脈例が,生涯医療上の冠危険因子になるかは現時点で不明であり,定期通院を中断する場合にも,冠危険因子の管理教育が推奨される(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).また,家族,本人と協議により個々に対応し,希望に応じて成人期での数年ごとの非侵襲的検査による経過観察と生活管理は考慮してもよい. b.川崎病回復期に冠動脈瘤を伴うが,成人期に心筋虚血所見を伴わない例 長期経過によるCAL の重症度分類では,重症度分類III群退縮瘤症例(冠動脈瘤の退縮例),重症度分類IV 群冠動脈瘤の残存例,重症度分類V 群(a)虚血所見のない冠動脈障害例が含まれ,移行医療の対象疾患の大部分を占める.小児期に冠動脈瘤のある例では,遠隔期に退縮瘤も含 めて内膜肥厚を伴うことが病理学的に報告されている101).遠隔期に造影上正常であっても,内皮障害103, 104),慢性炎症381, 382),血管内エコー検査で多様な内膜病変383)を認め,退縮瘤であっても成人期に初めて発症するACS の責任病変である症例報告があり,長期の冠リスク管理と経過観察が必要である.以上から,成人期のCAL 例(冠動脈瘤残存,虚血所見のない狭窄性病変)では,遠隔期の指針に従った長期経過観察(推奨クラスIIa,エビデンスレベルB)と薬物療法(第4 章1. 薬物療法を参照のこと)の適応となる.成人例では,抗炎症効果を考慮して382),スタチンが併用されることも多い(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).小児の遠隔期には,症例に応じて抗血小板薬2剤併用(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC) 286),巨大瘤, 急性心筋梗塞の既往,瘤内の血栓傾向がある例にワルファリンの併用(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC) 286),高齢者 など成人例においては,出血性合併症も考慮した対応が必要である.退縮瘤症例は例数が多く,成人期の退縮瘤例の長期経過観察(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC)が勧められ,薬物療法の適応は,リスクに応じて症例毎に検討される5). c.成人期に虚血所見を伴う冠動脈狭窄例,心筋梗塞,心不全および重症不整脈のある症例 この群は,長期経過によるCAL の重症度分類では,重症度分類V 群(b)虚血所見を有する冠動脈狭窄群ないし心筋梗塞既往例であり,移行医療症例の最重要例である.前述の川崎病の自然歴と川崎病性でない成人の動脈硬化の指針に準拠して,病態に応じた個別の対応がなされ,継続した加療が必要である.定期的診察と年3 ~4 回の非侵襲的な虚血の検査,適宜,冠動脈画像診断(冠動脈造影検査,MDCT,MRI)が望ましい. d.川崎病既往の不明な成人冠動脈瘤症例 実臨床において,若年成人で冠動脈瘤のある症例で,川崎病の既往が不明である例が多く,川崎病性と考えられる成人期ACS の半数を占める.わが国における川崎病の急性期診断例は,第1 回川崎病全国調査の際の川崎病診断の手引きが発表された1970 年頃(前述),川崎病の急性期冠動脈合併症の診断に基づく経過観察例は,冠動脈造影検査,心エコー診断が報告された1975 ~80 年頃からと考えられる384, 385).川崎病の既往症例で典型的な冠動脈瘤のある場合は,川崎病心臓血管後遺症の診断が可能であり,小児循環器科医と循環器内科医の連携が重要である.川崎病の既往が不明な場合は,確定診断は困難であるが,他の二次性の冠動脈瘤が除外できれば川崎病心臓血管後遺症と扱われることが多い.成人の冠動脈瘤の原因として,動