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p.53 抽出テキスト

い.

別のバリアとして,幼小児期から治療介入を必要としてきたAYA 世代の精神心理的ケア,とくに保護者との依存関係の強いAYA 世代のケアに対する成人診療科医師の困惑があげられる371).72% の小児科医が,成人期移行した患者の担当は循環器内科医と小児科医で共有されることが望ましいとの報告もあり369),これらの背景を反映している可能性がある. b.システムとしてのバリア

診療サマリー作成がバリア克服手段の第一にあげられる.小児科医による過去の検査所見や管理計画を包括した移行のためのサマリー作成372)は有用である.心臓カテーテル検査による選択的冠動脈造影(CAG)だけでなく,心エコー法373, 374),冠動脈CT 造影189, 229),MR アンギオグラフィー238),心筋血流イメージング203, 210)所見も有用である.サマリーを基盤としてAYA 世代管理のゴールと問題点を小児科医と循環器内科医のディスカッションにより新規に記載できれば,アクティブ・プランとして共有できシステムバリア克服手段となる.

また,AYA 世代の保険診療についてはシステムとしての大きな課題である. c.移行医療に関連する患者医師関係

小児科医および成人診療科医師が患者の成長タイムラインを考慮し,AYA 世代に必要な教育要素を知らなければならない.2017 年の米国小児学会による声明では,AYA世代には幼小児期から引き続いての疾患認識に関する教育が重要であるとともに,「自立性の醸成(fostering independence)」をあげている375).AYA 世代になっても患者自身を無視した保護者と担当医師の一方的なやり取りなどは「自立性の醸成」を妨げる可能性がある.また,six core elements として移行準備から実践への成長タイムラインに即した小児およびAYA 世代教育が推奨されている371).

一方,AYA 世代とその家族は長期にわたり診療を継続してきた小児科医への依存心を有している可能性があり,「自立性の醸成」とともに考慮しなければならない.これらは川崎病心臓血管後遺症移行医療でも認識すべき背景である. d.移行チェックリスト

AYA 世代にとって移行医療タイムラインの中で何が必要であるかの可視化が重要であり,医療的内容だけではなく教育的要素や職業選択などについて実用的な計画が必要になる376).先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言377)は川崎病心臓血管後遺症移行医療としても参考になり,それを基盤とした川崎病に関する移行チェックリスト例(表19)を提示する378). 3 成人期の管理

3.1 治療

3.1.1 成人期の経過観察と薬物療法

【要旨】• 川崎病の病初期から冠動脈瘤を伴わない例は,長期

経過観察の適応外(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC)であるが,冠危険因子の管理教育が推奨される(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC). • 川崎病回復期に冠動脈瘤を伴う例(成人期に心筋虚

血所見を伴わない場合)は,移行医療の対象となる例の大部分であり,長期経過観察(推奨クラスIIa,エビデンスレベルB)と症例に応じて薬物療法(第4章1. 薬物療法を参照のこと)の適応となる.成人例では,抗炎症効果を考慮してスタチンが併用されることも多い(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).症例に応じて抗血小板療剤の2 剤併用(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC),巨大瘤,急性心筋梗塞の既往,瘤内の血栓傾向がある例にワルファリンの併用(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC)がなされるが,高齢者などで,出血性合併症の考慮が必要である.

表19 川崎病移行期の伝達・準備事項

1 自身の川崎病の既往歴,合併症,イベント,治療歴

2 冠合併症の検査内容

3 薬物の内容,効果と副作用

4 長期予後

5 生涯医療の必要性

6 移行の必要性

7 起こりうる症状

8 生活管理(食習慣,運動,喫煙,飲酒,肥満防止)

9 進学,就職

10 結婚,妊娠出産,遺伝

11 救急を要する症状と受診先

12 社会保障制度(医療給付制度),保健(社会保険,国民保険,生命保険)

13 生活上のスキルの養成(交渉,自己決定,問題解決)

(三谷義英.2018 378)より)