p.52 抽出テキスト
2 AYA 世代の管理(移行医療) 【要旨】• AYA 世代の管理では診療離脱例(いわゆるドロップ アウト)の回避が最重要課題である(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC). • 移行医療においてAYA 世代の自立性を促す管理を心 がける必要がある(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC). • AYA 世代個々の成長タイムラインを基盤とした移行 チェックリストが有用である(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC). AYA(adolescent and young adult)世代の移行医療の重要な背景として,AYA 世代特有の精神心理的構造, AYA 世代が直面する就学,就労,一人暮らし,結婚および妊娠・出産のライフイベントがある.各イベントが診療離脱例と密接に関連していることがAYA 世代の特徴である. 2.1 AYA 世代の定義と人口背景 思春期(adolescent)はおおむね12~18 歳,若年成人(young adult)はおおむね10 代後半~20 代前半とされている.AYA 世代の年齢定義で,下限は12~15 歳,上限は24 歳との記載が多いが,29 歳あるいは39 歳としているものもある360).わが国のAYA 世代人口(14.6%)は15歳未満小児人口(12.2%)を上回っている361). 2.2 小児慢性疾患を抱えるAYA 世代と 移行医療 慢性疾患の生存率向上を背景として,小児期に特別な治療を必要としたAYA 世代の移行医療が重要なテーマとなっている362).また,AYA 世代は単なる小児期から成人期への時間軸としての中間点としてだけでなく,思春期世代としての精神思考の成熟やアイデンティティの確立などの特有な課題が存在する363)ため,AYA 世代の発達段階に沿った適切なケアが求められる. 先天性心疾患の成人を対象とした,心イベントを主要原因とする予定外入院では,AYA 世代が全体の58% を占めるとの報告があり,AYA 世代の背景にある妊娠,医療保険や雇用の問題についての重要性が指摘されている364). また,先天性心疾患のAYA 世代の診療離脱例は予定外入院になる高リスクとの報告が散見される365, 366).さらに,先天性心疾患のAYA 世代の死亡は成人期移行直後に発生しやすく,この世代の未熟性との関連を指摘している367).これらは川崎病心臓血管後遺症の移行医療のモデルとして疾患背景が類似しており参考にすべきである. 2.3 川崎病心臓血管後遺症と移行医療 2.3.1 患者数の推移 川崎病全国調査による全登録数は30 万人を超え,20 歳以上の登録数は12 万人とされている368).AYA 世代の管理の重要性が示唆される. 2.3.2 臨床経過の特徴とアドヒアランス 冠動脈二枝病変や高度狭窄合併例であっても無症状で経過することが多い.とくに右冠動脈完全閉塞は定期画像診断で初めて気づかれることもあり,無症状の心イベントとして閉塞後再疎通の経過をとることが多い.これはアドヒアランス不良に関連し,怠薬,さらには診療離脱例に進展する可能性がある. 2.3.3 移行医療の実態 川崎病学会運営委員が川崎病学会の会員に対して実施したアンケート調査によれば,約90% が心臓血管後遺症の移行医療を必要とする患者を抱え,40% 以上が心臓血管後遺症患者の診療離脱例を経験していた369).15 歳以上の川崎病重症心臓血管後遺症の心筋血流イメージングからみた診療離脱例の報告370)では,5 年間受診歴のない症例を診療離脱例と定義しており全体の診療離脱例は43%,検査時20 歳未満では61% と高頻度であった.いずれもAYA 世代の川崎病心臓血管後遺症管理の重要性を示唆している. 2.3.4 移行医療管理の要点 診療離脱例回避が重要であり,以下の4 点について考える必要がある. a.小児科医と成人診療科医師間のバリア 循環器内科医(成人診療科医師)にとって慢性冠動脈疾患は専門領域であり,疾患介入のバリアは低いと推測される.そのなかで川崎病心臓血管後遺症に特有の側副循環の形成などの情報提供をすれば,循環器内科医による川崎病心臓血管後遺症への望ましい介入を果たせる可能性が高