p.46 抽出テキスト
者の急性冠症候群(ACS)の発症数は92 件/ 年,カテーテル治療ないしバイパス手術件数は,60 件/ 年に及んでいる356).日米の報告では,40 歳未満の若年成人の心筋梗塞例における川崎病心臓血管後遺症が関連する割合は,5.0 ~ 9.1% と報告され2),川崎病の心臓血管後遺症は,成人領域の臨床現場の問題となっている5). 以上のことから,川崎病後冠合併症の管理は,学校生活,思春期から若年成人への移行期,壮年以降の成人期と生涯に渡り,生涯医療の観点からのライフステージに応じた経過観察が重要と考えられる.しかし,とくに成人期の心臓血管後遺症の病態,診療実態は不明であり,後ろ向き研究,少数の冠動脈イベント例のケースシリーズなどの報告が主体である.したがって,川崎病心臓血管後遺症の小児期を中心とした自然歴と成人の虚血性心疾患のエビデンスを参照しながら,学校における管理,薬物療法,非薬物療法,生活管理,妊娠出産への対応が,個々に臨床像に応じてなされる.しかし,川崎病後の遠隔期冠動脈病変(CAL)は,成人病に伴う虚血性疾患で認められる典型的な粥腫とは病理学的に異なるとされること2),思春期,若年成人以降の加齢,冠動脈危険因子の心臓血管後遺症の病態への影響が不明であることなどの考慮が必要である.さらに診療実態として,成人例の多くを占める川崎病未診断例(疑診断例)などの問題がある5).また診療離脱例も問題となり,成人移行に際して,移行期に特有の社会心理学的特徴を踏まえたシームレスな成人診療への移行支援体制の整備が重要である.経過観察の間隔と評価法,CAL の重症度分類に応じた薬物療法,非薬物療法は,「第5 章3. 成人期の管理」で述べる. 今後求められるエビデンス • 川崎病後正常冠動脈例で,川崎病は生涯医療上の動 脈冠危険因子となるか. • 川崎病後冠動脈障害では,成人期に粥状硬化が合併 しやすいか. • 川崎病急性期直後,どの程度の冠動脈拡大が成人期 の若年性ACS の危険因子となるか. 1 学校における管理 【要旨】• 川崎病既往者の学校生活管理について,CAL の重症 度別にまとめた. • 川崎病CAL の(重症度)評価には,古くから使用さ れてきた厚生省基準(1983 年)と,近年提唱され定着しつつあるZ スコアがあり,本ガイドラインではZスコアと厚生省基準を併記した. • 重症度分類I,II 群(拡大性病変がなかった群)は, E 可で運動制限なし. • 重症度分類III 群(退縮群)も,瘤を含む拡張性病変 が正常化した症例群であり,E 可で運動制限なし. • 重症度分類IV 群(冠動脈瘤残存群)は,狭窄病変 がない病変残存群であるので,E 可が基本であるが, 10 ≦Z,または内径8 mm 以上の巨大瘤が残存している場合は,D またはE 禁を原則とする. • 重症度分類V 群(狭窄性病変残存群)は,基本的に はさまざまなレベルの運動制限があり,小児循環器医の指示に従う. 川崎病既往者の長期予後の詳細はまだ不明の点が多い.急性期早期におけるいかなるレベルのCAL が,中・長期的に臨床的上問題となるかの報告もまだ少なく136, 140, 150, 153, 357),十分な情報,エビデンスは存在しない.川崎病既往者の生活管理を決める指標は,CAL 合併の有無,さらに合併する場合はその重症度である(第1 章3. 重症度分類を参照のこと).近年,わが国からもAHA からも体格に合わせた冠動脈拡張・病変の評価であるZ スコアが提示されている2, 3). わが国では川崎病急性期CAL の重症度評価には,厚生省基準(1983 年) 79)が長く使用されてきた経緯がある.さ らに,近年Z スコア2, 3)が登場し,臨床現場ではこの2 つに基準が混在している状態である.このように川崎病CAL評価基準は統一されていない状況となっているが,本ガイドラインではZ スコアと厚生省基準を併記して(表18),学校における管理基準について述べる. 川崎病既往者の学校生活における管理指導については,家族,学校関係者,医療従事者(主治医)が,その児の病状について十分に情報共有することが重要である.これは,平成23 年版学校生活管理指導表(図5) 357a)や川崎病急