GL検索 v0.1.0
画像は 44 ページを描画したものです
page 44

p.44 抽出テキスト

回避率は10 年86.5% で,ITA は40 本で3 本に閉塞が認められた343).

川崎病でない成人CABG では,オンポンプ対オフポンプのランダム化比較試験が行われている.Kobayashi らは,オンポンプ対オフポンプの比較で,動脈グラフトの開存率に差はなかったとしている344).人工心肺使用が標準的な欧米の論文では,オフポンプの方がグラフト本数が少なく,開存率が低い傾向にあり,早期から遠隔期の再血行再建や心イベントの発生が多いとする報告もある345–347).また,オフポンプがとくに有用であると認められているのは,超高齢者や透析,慢性閉塞性肺疾患(COPD)など高リスク例に対してである.川崎病に対するCABG では,成人~高齢者例と比較し,脳梗塞など人工心肺によるリスクが低い,血管径が小さく血管壁も薄いため手技的に難易度が高い,超長期間の開存性が期待されること,などの特徴を考慮すると,ほとんどの症例で,あえてオフポンプで手術を行うメリットは乏しい.さらには,手術時年齢が著しく若く,本来は活動的な日常生活を送り,手術後から超長期にわたるグラフトの開存と機能が求められる.また,身長や体格が変化する年齢の患者には,グラフト血管も伸長し変化に適応する性質を有するなど,求められるグラフト採取の質,吻合の質が高いことを強く認識するべきである.

2.2.4 CABG の成績

治療方針を決定する内科外科合同のハートチームカンファレンスを経て,手術適応が決まるが,その後,動脈硬化による成人例にCABG を行っている成人心臓外科チームが担当することも多い.日常に実践される外科治療をそのまま適用するのではなく,対象となる疾患や患者の違いを認識し,その結果として,エビデンスを解釈し手術方法を選択するべきであろう. a.早期成績

川崎病に対するCABG の早期成績は,小児においても良好である.心筋梗塞既往や低心機能例,緊急例含め,報告では死亡率はほぼ0% で,手術の安全性は高い330, 341, 348). ITA を使用したCABG の早期開存率はきわめて良好であるが,小児例においては,ITA,標的冠動脈枝が細く,グラフト吻合部など狭窄をきたすことがある.術後のカテーテル検査もしくは造影CT による評価と,必要に応じてPCI を行うことで,遠隔の開存につなげることも可能となる349, 350). b.遠隔期成績(生存率,心イベント回避率)

Kitamura らによると,CABG 後114 例の10,20,25年後の生存率は,98%,95%,95% とおおむね良好であったが,依然心イベントが主要な死因であった.心イベント(死亡,心筋梗塞,狭心症,失神,心室性不整脈,PCI,再

CABG)の回避率は,10,20,25 年後で81%,67%, 60% であった330).

2.2.5 PCI とCABG

PCI の技術は向上し,川崎病に対しても有効性が報告されている315).Muta らは,わが国での調査結果から,最初の冠動脈治療として,カテーテル治療とCABG を比較すると,生命予後には差はなく,治療後の再血行再建に関しては,CABG で頻度が低かった。また,12 歳以下で虚血を有する例ではPCI の優位性はなく,CABG が有効であったとしている251).

Dionne らは,カナダの5 施設の結果を集計し,PCI とCABG の結果を比べたところ,再血行再建と死亡の回避率では,CABG は10 年100% であったのに対し,PCI では,50% 以下で,有意に劣っていたとしている351).Tsudaらは,12 歳未満に対するCABG の検討で,この年齢層ではPCI よりもCABG が好ましいと述べている331).

CABG 後に吻合部や冠動脈枝に狭窄を認めた際には, PCI が有用である337).

2.2.6 冠動脈瘤に対する外科治療

川崎病に合併する冠動脈瘤では,血流速度の低下やよどみによる血栓形成から,しばしば血管閉塞や心筋梗塞の原因となる.このため,ワルファリンなど抗凝固薬の内服を行うことが多い.一方で,瘤壁は肥厚し基本的に破裂のリスクは考慮する必要がないことから,川崎病に関連しない冠動脈瘤,とくに,肺動脈などに流入する冠動脈瘻に合併する壁が菲薄・脆弱な冠動脈瘤に対する取扱いとは明確に区別する必要がある.血栓形成のリスクを軽減し,抗凝固薬を安全に中止するために,バイパス吻合とともに,冠動脈瘤の切除や末梢を結紮する手術が報告されているが352),バイパスグラフトはただちに自己冠動脈の代替とはなりえず,心筋梗塞がおきることもある.また,瘤壁を部分切除して,瘤化した血管を正常径に近づける手術も報告されているが,血栓形成は血流だけの問題でなく,内膜の機能障害などが関与しており,外科治療についての有効性は確立されていない353).

2.2.7 虚血に伴う合併症に対する外科治療

僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術・置換術,重症心不全例には,心臓移植の適応となりうる.