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p.43 抽出テキスト

2.2.2 グラフト開存率とグラフト選択

成長期にある小児患者においては,有茎内胸動脈や右冠動脈末梢部へは右胃大網動脈(GEA)など有茎動脈グラフトが優れた開存性を示すことが明らかとなった. Kitamura らによると,静脈グラフトの1,10,25 年の開存率はそれぞれ84.4%,57.2%,51.5% で337),グラフトそのものが経年的に劣化することから,近年は使用が回避されている.大伏在静脈(SVG)と内胸動脈(ITA)の長期開存率を比較すると,ITA の開存率は,左前下行枝(LAD)へのバイパスとLAD 以外へのバイパスともに開存率が著しく高い331, 337).グラフトの開存率は,ITA は20 年で87%,SVG は20 年で44%,GEA は5 年で86% であった330).非LAD にもITA/GEA は20 年87%,SVG は44% であった330).

年齢によるITA 開存率への影響を見ると,10 歳以上と未満で93%,86%(P=0.16),SVG では,10 年で58%, 25%(P=0.004)で,手術時年齢によりグラフト開存率に差が認められる330).川崎病114 例における25 年の経過観察期間で,狭窄度

が緩いことによりITA がstring sign を呈したのちに,狭窄の進行に伴ってITA の内腔径が回復したものは4 例認められた330).Tsuda らは,12 歳未満に対するCABG の検討で,ITA グラフトの長期開存率は,10 年,20 年でそれぞれ87.1%,87.1% であったと報告している331).体格の変化,成長とともにITA は成長し延長するが338, 339),SVGは成長せず相対的に短縮するため,開存しても吻合部や自己冠動脈の変形が生じうる337, 339, 340).小児においても両側ITA の利用は安全で有効である341, 342).

ITA では,血栓閉塞がほぼ起こらないため,冠動脈瘤の性状や他の重要な枝との関係を考慮したうえで,抗凝固薬や抗血小板薬を減量もしくは緩和しうる可能性がある.

2.2.3 CABG の術式選択

Jeong らは20 例の川崎病へのCABG の成績を報告している.このうち,25% にあたる5 例に対してオフポンプでのCABG を行っている.バイパス44 本のうち4 本(9%)のグラフトに機能不全があり,標的冠動脈枝の再血行再建

表16 川崎病心臓血管後遺症における外科治療の適応

CABG冠動脈の中枢部に高度閉塞性病変が存在するか,または急速な進行を示し,心筋虚血が証明される場合はCABG が有効な治療法となりうる.使用されるグラフトとしては,左右の有茎内胸動脈を第一に考慮し,次いで有茎右胃大網動脈が推奨される.

冠動脈造影所見:もっとも重要な検査であるが,閉塞もしくはほぼ閉塞の病変でなければ,肉眼的狭窄度だけでなく, FFR やcoronary flow velocity reserve(CFVR),心筋シンチグラフィなど,機能的な評価を加味することで,治療成績が向上する.領域の心筋の生存性(バイアビリティ):狭心症の存在,心電図所見,タリウム心筋シンチグラフィ,断層心エコー図所見,左室造影所見(局所壁運動),造影MRI,造影CT などから総合判定する.以下の冠動脈枝に有意な狭窄~閉塞を認めるときにCABG を考慮する. 1.左冠動脈主幹部2. 多枝(2,3 枝) 3.左前下行枝近位部4.危険側副路状態(jeopardized collaterals)その他,適応を決定するうえで以下の状態を考慮する.

1 心筋梗塞既往例で,第2 回目,第3 回目の梗塞が考えられる状態や,明らかな虚血が認められる際には,適応は拡大しうる.たとえば右冠動脈系単独への外科治療なども考慮される. 2 冠動脈閉塞部の再開通(recanalization),側副路(collateral)形成のある場合は慎重に観察し,心筋虚血所見の強い場合には外科治療を考慮する. 3 移植グラフトの遠隔期開存性を考慮し,低年齢児ほど適応決定は慎重に行う.内科的管理が行え

れば,冠動脈造影を適宜反復して慎重に追求し,患児の成長を待つが,重症例では,1~2 歳での手術も行われている.この場合でも有茎内胸動脈グラフトの使用が勧められる.

僧帽弁閉鎖不全症僧帽弁手術内科的治療に抵抗し,長期存続する重症僧帽弁閉鎖不全症では,弁形成術や弁置換術の適応となりうる.びまん性低収縮状態~重症心不全重篤なびまん性低収縮状態にある場合には,CABG だけでなく,その後に心臓移植も選択肢となりうるため,長期の補助循環や補助心臓に対応できる施設との連携が重要となる.その他まれな合併症として,心タンポナーデ,左室瘤,末梢動脈の瘤形成,閉塞性病変がみられ,手術適応となることがある.