p.38 抽出テキスト
しかし冠動脈瘤を合併した川崎病既往児/ 者においては,再灌流療法として血栓溶解療法とprimary PCI のいずれを優先すべきかについては十分なエビデンスがない.その理由として,成人例に比し川崎病既往者におけるACS は症例数が圧倒的に少ないことに加え,小児期のACS に的確なprimary PCI を実施できる施設が限られていることなどが考えられる.さらに,巨大瘤によるACS では,冠動脈粥腫(プラーク)によるACS に比し,閉塞/ 狭窄部位を通過して冠動脈遠位へカテーテルを到達させることが熟練した循環器内科医をもってしても困難な場合があり,primary PCI を選択すべきかは慎重に判断すべきである.川崎病心臓血管後遺症におけるACS は上述のごとく冠動脈瘤(とくに巨大冠動脈瘤)内の新鮮血栓による血栓性閉塞によること,また成人に比し出血性合併症が少ないこと,および体格の点でPCI に不利であることなどから,小児においては血栓溶解療法が選択されることも多い. STEMI や左脚ブロックを伴う急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法の効果は確立されており,発症12 時間以内であれば再灌流の時間が短いほど死亡率や合併症が減少する.発症12 時間以内かつ来院から2 時間以内にprimary PCI が施行できない場合には全身投与による血栓溶解療法が推奨される159).血栓溶解療法後3 ~24 時間以内にPCIが可能な場合には,血栓溶解療法単独にくらべ治療効果が高いのでPCI が追加されるが,心停止を繰り返す場合や心筋梗塞発症後の蘇生に長時間を要した場合には,出血のリスクを高めるので血栓溶解療法は相対的禁忌である. 血栓溶解薬にはウロキナーゼ,組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA),改変型tPA がある(表14).ウロキ ナーゼはフィブリン親和性が低く線溶系活性を亢進する.これに対しtPA はフィブリン親和性が高く,改変型tPA は血中半減期を延長させるので総投与量の減量と急速単回静注が可能である.ただしステント留置などPCI を予定する場合には,血栓溶解薬投与の適応を慎重に判断する必要がある. 今後エビデンスレベルの確立が求められるもの 巨大冠動脈瘤によるACS に対する血栓融解療法とprimary PCI の適応と選択基準. 1.6 急性心筋梗塞に対する内科的初期治療 【要旨】• 心筋梗塞発症後早期には可能ならprimary PCI,困 難であればウロキナーゼ,tPA などの全身投与による血栓溶解療法(静注法)が推奨される(推奨クラスI,エビデンスレベルC). • 静注法が効果不十分な場合,ICT の追加を考慮する(推奨クラスI,エビデンスレベルC). • 急性心不全に伴う循環不全に対し,利尿剤,ドパミ ン,ドブタミン,PDE 阻害薬(ミルリノンなど)を持続静注する(推奨クラスI,エビデンスレベルB). • 小児期の急性心筋梗塞においてカルペリチド,ニコ 表14 川崎病冠動脈瘤の血栓性閉塞に対する血栓溶解療法 適応急性心筋梗塞発症後12 時間以内無症候性冠動脈瘤内血栓 薬剤の種類第三世代モンテプラーゼ遺伝子組み換え改変型tPA 第二世代アルテプラーゼ遺伝子組み換えtPA第一世代ウロキナーゼ 投与法経静脈的全身投与十分な効果が得られない場合,ICTを考慮する 投与量静注法モンテプラーゼ2.75 万U/kg 2~3 分で静注 アルテプラーゼ29 万~43.5 万U/kg (0.5~ 0.75 mg/kg)総量の10% を1~2 分で静注,残りを1 時間で点滴静注ウロキナーゼ1~1.6 万U/kg 30~60 分で点滴静注冠注法ウロキナーゼ0.4 万U/kg 10 分間で冠動脈内注入.最大4 回まで 〈小児において安全性・有用性は確立されていない〉