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p.35 抽出テキスト

保険適用はない.シクロオキゲシナーゼ阻害薬のフルルビプロフェンは,かつて川崎病急性期の肝障害時に経験的に用いられていたが280),アスピリンにくらべて肝障害が少ないというエビデンスは乏しい.ホスホジエステラーゼ阻害薬のシロスタゾールは,心拍数増加作用もあることから,冠動脈の有意な狭窄がある例では使用に注意を要する159).新しいP2Y12 受容体拮抗薬のプラスグレル281)とチカグレロル282)は,小児の鎌状赤血球症の血栓症などに対する報告がある.

1.3.2 抗凝固薬

a.ワルファリン

ビタミンK 類似の構造を有し,肝臓におけるビタミンK依存性凝固因子の生成を阻害して抗凝固作用を示す.心筋梗塞や静脈血栓症などの血栓塞栓症に対し,小児でも成人でも保険適用がある.小児の投与量は,12 ヵ月未満で0.16 mg/kg/日,1 歳以上~15 歳未満で0.04 ~0.10 mg/kg/日, 1 日1 回経口投与である.ワルファリンに対する感受性には個体差があり,同一個人でも変化するため,定期的にプロトロンビン時間(PT)の国際標準比(INR)を用いて投与量を調節する.胎児の催奇形性と出血傾向のリスクがあるため,妊婦への投与は禁忌である.ワルファリンの効果は食事や薬剤の影響を受けやすく,納豆,青汁,ビタミンK 強化の人工乳では減弱し,母乳栄養や摂食不良の状態では増強する.薬剤を併用する際は,添付文書や適正使用情報283)を参考に調整する.

川崎病におけるワルファリンの適応は,巨大瘤,急性心筋梗塞既往,瘤内の血栓形成などで,INR 2.0 ~2.5 を治療域とし,年齢(乳児では出血のリスクが高い)や病態により適宜調整する268).実測値で中等瘤であっても,乳幼児(体表面積0.5 m2 未満)の内径6 mm 以上では心イベントが高率という報告もあり89),Z スコアも参考にワルファリンの適応を考慮する.わが国の後ろ向き研究によれば,ワルファリン・アスピリン併用群ではアスピリン群に比べ,巨大瘤の心筋梗塞発症率が有意に低値で285),また,ワルファリン・アスピリンの併用療法を行った巨大瘤83 例では心筋梗塞の回避率が1 年で92.5%,10 年で91.0% と比較的良好であった286).

巨大瘤合併例では,心筋梗塞の多く(87.1%)は川崎病の発症2 年以内に生じることから136),この期間の抗凝固療法は厳重に行うべきである.巨大瘤が残存した場合,ワルファリンの投与は最低5 年間必要という報告もあるが287),適応となる動脈径や妥当な中止時期について一定の見解はない268).ワルファリンによる心筋梗塞予防の限界136,153),出血や血栓が高率といった問題288)もあり,長期的な適応についてはリスクとベネフィットを勘案して決定する.

b.ヘパリンナトリウム(未分画ヘパリン)

アンチトロンビンIII を活性化し,トロンビンをはじめ第IXa ~XIIa 因子およびカリクレインを阻害することによって血液凝固を抑制する.血栓塞栓症の治療・予防などの保険適用があるが,小児適応はない.小児では,当初から維持量10 ~20 単位/kg/ 時を持続静注する方法と,初期に50 単位/kg を10 分以上かけて単回静注した後に維持量を持続静注する方法がある268).出血のリスクを考慮し,より低用量(5 ~8 単位/kg/時)から開始し,適宜増量している施設もある.本ガイドラインでは,わが国の成人のガイドライン278, 289)を参考に,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の目標を対照値の1.5 ~2.5 倍とし,おおむね46 ~70 秒(2.0 倍とすれば50 ~60 秒程度)とすることを推奨する268).出血(可能性を含む),重篤な肝・腎の障害,中枢神経系の手術・外傷の直後,過敏症,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の既往などは原則禁忌である. c.その他

ヘパリンあるいはヘパリン類似薬として,皮下注射製剤のヘパリンカルシウム,アンチトロンビンIII と結合し第Xa 因子を阻害して血液凝固を抑制する低分子ヘパリン,ダナパロイド,フォンダパリヌクスなどがあるが,いずれも小児の保険適用はない.ビタミンK に依存せず凝固因子を阻害する直接経口阻害型抗凝固薬(DOAC)として,ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンの4 種の薬剤が開発され,おもに成人の心房細動に対し使用されている.いずれも小児適応はないが,リバーロキサバンは深部静脈血栓症とFontan 手術後に対する治験が行われている.川崎病に対するDOAC の臨床試験の開発が期待される.

今後エビデンスの確立が求められるもの

• アスピリンと他の抗血小板薬との併用療法の適応. • 巨大瘤に対するワルファリンとDOAC の比較.

1.4 冠血管拡張薬・抗狭心症薬(表13)

【要旨】CAL 合併患者に対するACS 発症予防を目的としたβ遮断薬,Ca 拮抗薬,硝酸薬の投与(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).