p.30 抽出テキスト
など他の非侵襲的検査の進歩により川崎病冠動脈障害の確認,経過観察を目的とした検査数は近年減少してきている. また,CAG は冠動脈狭窄の機能的重症度やCAL の生理学的異常を直接的に示すものではない.したがって最近のCAG は,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の術前,術中,術後や冠動脈バイパス術(CABG)の術前後での検査として,単独の検査としてではなく,血管内エコー法(IVUS),圧力センサー付きガイドワイヤーによる冠内圧測定,ドプラガイドワイヤーによる冠血流速測定(FFR,iFR)などの冠動脈狭窄の機能的重症度評価の検査を伴うようになった127, 244). 4.1.1 心筋虚血所見を認める患者に対する PCI やCABG 前後の評価 各種負荷検査で心筋虚血を認める患者においては, CAG はPCI の適応を決定する術前検査として安全かつ有効に行うため,血管形成術の施行中,施行後の効果判定と経過観察に必要とされる203, 247–249).とくに川崎病の冠動脈狭窄に対するPCI は再狭窄率が高く,術後早期に狭窄をきたす例があるため,施行後の確認検査は重要である250, 251). 4.1.2 冠動脈障害の程度,経過観察 米国心臓協会(AHA)の重症度分類2)と同様に,本ガイドラインの「川崎病CAL の重症度分類」(表5)は急性期の心エコー図を含む画像診断に基づいており,もはや冠動脈瘤の大きさを測るためにCAG 検査は必須とされていない.しかし,他の画像診断技術を用いたとしても,冠動脈瘤の大きさだけでなく,形態や,位置,数などを詳細に把握しておくことが,その後の経過観察の手段,期間,治療法の決定などのために望ましい. また,経過観察中に内膜肥厚により瘤が退縮し,造影上は内腔が正常な血管所見となった場合,いままでは治癒とみなされ経過観察を中止されてきたが,発症後10 年余を経ても内皮機能低下が認められ104, 144),実際にACS を発症した例も報告されている252).したがって,CAG による内腔評価だけでなく,冠動脈MRI 検査や冠動脈CT 検査による冠動脈壁構造の経過観察の継続が必要である(第3章3. 画像診断を参照のこと). 一方,川崎病遠隔期の冠動脈狭窄は瘤の流入口,流出口部に好発する137, 253).狭窄の評価には多方向からの造影が必要である.有意狭窄は主要冠動脈枝で内径75% 以上,左冠動脈主幹部で内径50% 以上の狭窄とされており,有意狭窄例では,心筋虚血症状が出現しなくても個々の症例の狭窄進行速度に応じて6 ヵ月から数年の間隔で各種画像検査を行うことが望ましい137, 253). 川崎病では諸検査による心筋虚血の検出率が低く,心筋虚血の初発症状として突然死が起こりえるため137, 253, 254),心筋虚血所見がなくとも左冠動脈前下行枝の75% 以上の狭窄では,PCI が考慮される249). 冠動脈障害例の約16% に完全閉塞が認められるが,閉塞しても臨床的には無症状で,経過観察のルーチンの造影で初めて明らかにされることもまれではない137).閉塞例にはかならず造影上で側副血行路が認められる.しばしば虚血所見が陰性となるほど著しい側副血行路の発達が認められるのが,川崎病による閉塞の1 つの特徴として知られている.しかし,成長するに及んで心筋虚血の検査所見や症状が出現してくる例もあり,慎重な経過観察が必要である.また一見,正常冠動脈とみられるものでも,順行性の造影画像で気づかれない細い1 分枝の閉塞が,対側枝からの側副血行路の描出で明らかにされることもあり,静脈相に至るまでの十分な時間を追って撮影することが必要である255). また,小児における冠動脈MRI 検査や冠動脈CT 検査などで,狭窄性病変が疑われた場合,CAG を行うことが望ましい. 4.1.3 ICT 中等瘤~巨大瘤の心エコー図での経過観察中に,無症状の患者で瘤内血栓が認められ,血栓溶解のための心臓カテーテル検査,CAG が行われることがある.血栓はもやもやと造影剤がにじむものから,陰影欠損となり血栓として読影されるのが難しい例もある.このような場合でも冠動脈内血栓溶解療法(ICT)により陰影欠損が消失する例もあり,血栓が認められればすみやかにICT が試みられるのが望ましいと報告されてきた256–258).しかし,成人の急性心筋梗塞において,血栓溶解療法は冠動脈内投与ではなく,経静脈投与が標準治療となっており159),小児もこれに準ずるものと考えられる. 4.1.4 CAG の不利益 CAG の不利益としては,侵襲的手技による合併症発生,不必要なPCI の増加,それに伴う医療費の増大などが挙げられる.一般に成人のCAG の合併症としての死亡率は0.2% 以下で,脳血管障害,心筋梗塞,出血などの合併症は0.5% 以下とされている259). 当然,X 線CT 検査と同様に発育期にある小児対する放射線被曝線量はできるだけ低減する努力をすべきである260, 261) また川崎病患者で巨大冠動脈瘤を残しワルファリン内服中の患者のカテーテル検査を行うときには,大腿動脈穿刺