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p.23 抽出テキスト

1.1 血液検査

1.1.1 心筋虚血・心筋梗塞

a.心筋細胞質マーカーi.CK・CK-MB

クレアチニンキナーゼ(CK)は従来からもっとも一般的な心筋壊死のマーカーであり,心筋梗塞の診断,予後予測に広く用いられてきた158).CK-MB はその心筋特異性から,総CK との比を考慮すれば心筋障害評価の意義は高いとされる.ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)では発症後3 ~ 8 時間で上昇し,10 ~24 時間で最大となり,3 ~6 日後に正常化する.CK,CK-MB は,心筋トロポニンとくらべて診断感度が低く,陽性化にはより強い組織障害を要する.日本循環器学会の   「急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)」では,心筋トロポニンが測定できる条件下では,急性冠症候群(ACS)の診断にCK-MB 測定を推奨していない159). ii.ミオグロビン

ミオグロビンは高感度で,心筋梗塞発症1 ~2 時間後に上昇し,約10 時間で最高値となり,1 ~2 日後に正常化する.早期診断に有用であり,救急外来診療で活用され再灌流の検出にも優れている.一方,心筋特異性が低く,単独のマーカーにはならない. iii.H-FABP

ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は,心筋細胞の細胞質に豊富に存在する低分子蛋白である.H-FABP はその骨格筋含量が心筋含量に比較して少ないことから,ミオグロビンより心筋特異性が若干高い.全血迅速定性測定では陰性予測値が高いことから,急性心筋梗塞の早期診断やリスク層別化に用いられている.しかし,H-FABP の超急性期の心筋梗塞の診断感度は高感度トロポニン値より若干劣る. b.心筋構造蛋白マーカーi.TnT・TnI

心筋トロポニンT(TnT)は一部(約6%)が細胞質に可溶性分画として存在する.STEMI では虚血早期の細胞質からの遊出(発症12 ~18 時間後の第1 ピーク)と筋原線維壊死(発症90 ~120 時間後の第2 ピーク)による2峰性の遊出動態を示し,1 峰性の遊出動態を示す心筋トロポニンI(TnI)とは異なる.TnT は,CK,CK-MB にくらべ心筋梗塞診断の感度と特異度が高く,生化学検査の第1マーカーとされ,非ST 上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の診断と予後にも有用である160, 161).欧州心臓病学会(ESC)/米国心臓病学会(ACC)では,心筋トロポニンが健常人の

99% 値を超える一過性の上昇・下降を示す場合に心筋梗塞と診断するとした160).高感度心筋トロポニン測定系は従来のトロポニン系にくらべて測定精度が高く,発症2 時間以内の超急性期の診断にも有用であることが示されている.「急性冠症候群診療ガイドライン(2018 年改訂版)」では,ACS が疑われる胸部症状を示す患者の早期リスクの層別化に,TnT,TnI を測定することを推奨している159).また,発症時間が不明な患者では,来院時を発症時間として心筋トロポニンを評価する159). ii.MLC

ミオシン軽鎖(MLC)は筋原線維の壊死過程を反映し,発症4 ~6 時間後から血中に流出し,2 ~5 日後にピークとなり,7 ~14 日間異常値を持続する.

以上より,川崎病患者において心筋虚血,心筋梗塞におけるエビデンスは確立されていないが,「急性冠症候群診療ガイドライン(2018 年改訂版)」を参考にすると,ACSが疑われる胸部症状を示す患者の早期リスクの層別化には,TnT,TnI の測定が有用であり,心筋トロポニンが測定できる条件下では,CK-MB やミオグロビンの測定は推奨されない159).

1.2 動脈硬化の診断

動脈硬化の診断には,脂質異常症やインスリン抵抗性の診断が重要である.脂質異常症の指標として総コレステロール(TC),LDL コレステロール(LDL-C),HDL コレステロール(HDL-C),トリグリセリド(TG)があり,動脈硬化の独立危険因子としてホモシステインが注目されている.一方,メタボリック症候群の概念を小児期でも問題とし,構成する危険因子の程度が軽くても数が多くなると冠動脈硬化が進行することが示され,川崎病の既往歴あるいは冠動脈障害が危険因子になるか今後も検討が必要である.

川崎病遠隔期を対象としたメタ解析では,動脈硬化の危険因子となりうるTC,LDL-C,TG,収縮期血圧のうち, TC とLDL-C 値が有意に高値であった162).

1.2.1 脂質異常症(表8)

a.TC

成人の血清TC は200 mg/dL 未満は正常,200 ~219 mg/dL は境界域,220 mg/dL 以上は異常である.なお,日本動脈硬化学会は2007 年に「高脂血症の診断基準」を「脂質異常症の診断基準」へ呼称を変更しており,血清TC値は血清HDL コレステロール値を含むことから,血清TC