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p.18 抽出テキスト

傾向を示す.瘤が消失し冠動脈造影上正常化した場合,退縮(regression)と呼ばれる97).この退縮は発症から1 ~ 2 年以内に小・中等瘤に生じることが多い.一方,病理組織学的には,退縮は内膜に遊走し増生した平滑筋細胞による全周性肥厚による見かけ上の内腔正常化であり,器質的変化は残存することが明らかになっている101).長期的には,瘤退縮部における冠動脈の狭窄や拡張能の低下102),血管内皮機能異常103–105)などが報告されており,瘤退縮症例については注意深い観察が必要である. c.瘤残存動脈

中等大以上の動脈瘤が残存した場合,動脈瘤の病理形態像は2 つに大別される.

第1 は,内腔が拡張したまま動脈瘤が残存するものであり,瘤壁は硝子化した線維組織により構成され,瘤壁に沿った石灰化が広範に認められる.瘤の流入部,流出部では内膜肥厚あるいは器質化血栓による内腔狭窄が生じる106, 107).瘤部の血栓性閉塞により急性冠症候群(ACS)を生じた症例の報告がある108).第2 は,瘤内に生じた血栓の内腔閉塞後に血流が再開通したものである.再開通した血管の周囲には平滑筋細胞が豊富に取り囲み,瘤の割面は蓮根のような形状を示す.中枢側の冠動脈は瘤の血栓性閉塞部で複数の再疎通血管に分岐したのち,再び合流して1 本の冠動脈になって末梢に至る107).この再疎通血管も細胞線維性組織の増生により内腔狭窄に陥る場合があり,遠隔期においても動脈瘤部には活発なリモデリングが生じている107, 109). d.瘤形成のない冠動脈

川崎病後遺症とは関連のない原因,すなわち不慮の事故や悪性腫瘍などで死亡した川崎病既往症例の冠動脈を観察すると,動脈拡張は明確でないが年齢を一致させた非川崎病症例(対照)の冠動脈とは明らかに異なる組織変化が認められる110).その一方,急性期に血管炎が存在したことを示唆しえない,対照の冠動脈とのあいだに組織学的差異を見出せない遠隔期川崎病症例の存在も確認されている111).つまり,瘤形成がない川崎病既往例には冠動脈炎瘢痕が残存するものから著変を認めないものまでさまざまな程度の血管変化が含まれていると考えられる.これらの長期予後についてはいまだ統一した見解が得られていない.今後も継続して検討されるべき課題である.

1.2 冠動脈以外の血管障害

川崎病では冠動脈以外の動脈にも高頻度に炎症が生じ,大動脈から小型筋性動脈までの広い分布を示す.しかし,その主体は腎動脈や腹腔動脈などの中型筋性動脈であり,時に動脈瘤を形成する112–114).動脈炎は実質臓器の外側に

存在する血管に限局し,実質臓器内の動脈に炎症が生じることはまれである.また,全身の動脈炎はほぼ同期して推移し,活動期と瘢痕期病変が混在することはない115).

1.3 心筋障害

急性期川崎病症例の多くに心筋炎症状が生じることはよく知られているが,多くの場合治療の必要はなく治癒する.急性期川崎病剖検例の心筋病変の病理組織学的検索によれば,心筋層内の炎症細胞浸潤は全例で観察され,1)心筋間質の炎症細胞浸潤を主とし,心筋細胞障害はまれである,2)浸潤細胞は,早期は好中球優位で,徐々に単球・マクロファージへと変化する,3)炎症細胞浸潤は当初心全体に分布するが,やがて心基部に限局してくる.4)刺激伝導系にも高い頻度で炎症細胞浸潤が観察されることが特徴的所見として挙げられる116).遠隔期においては,心筋炎後の後遺症としての間質線維化が継続するとする報告117)がある一方で,心筋病変の多くは瘤を有する冠動脈の灌流域に一致した陳旧性虚血性病変としての線維化であり,心筋炎後変化は残さないとする報告がある118).

2 心臓血管後遺症の冠循環動態

【要旨】川崎病CAL の特徴は,拡大性病変と狭窄性病変が混在し複雑な血行動態を呈する多枝病変であることであり,加えて冠動脈瘤はもちろんのこと退縮したCAL でも血管内皮機能障害が継続していることである.

2.1 冠動脈瘤における血行動態

正常な冠動脈における血流は層流となっている.小瘤内の血流波形パターンは全例拍動性の層流であり,average peak velocity(APV),coronary flow reserve(CFR),冠動脈壁へのずり応力も正常範囲内である.中等瘤では主として瘤の内径の増大により血流波形は拍動性から乱流パターンに変化し,APV,CFR,ずり応力は一部異常値を呈するようになる.さらに巨大瘤では全例が乱流パターンとなり,APV は10 cm/ 秒以下,CFR は1.5 以下,ずり応力も10 dyne/cm2 以下と有意に低下する119).また,冠動脈瘤は