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p.16 抽出テキスト

を認める場合は,症状のみで確定診断(定型例: 全国調査では「確実A」として集計)とし,4 症状の場合には心エコーでCAL を認めた場合にも川崎病と確定診断される(非定型例: 全国調査では「確実B」として集計).

しかし,これまでそれらの条件を満たさない,すなわち主要症状が4 つ以下であっても,CAL がすでに始まっている場合や,経過や検査所見から見て川崎病の経過をたどってCAL を合併するリスクが考えられる場合には,不全型川崎病(incomplete Kawasaki disease)と診断して,川崎病の治療を行って病状が改善していた例があった.これらは,改訂5 版では「容疑例が約10% 存在する.」とされていた群で,診断方法について不明瞭な部分があったため,改訂6 版では,主要症状数とCAL の有無によって,できるだけ不全型川崎病の診断と川崎病としての治療を躊躇せずに実施する方針を明確にした.同時に,冠動脈の拡大性病変を合併することのある疾患や,川崎病と症状が類似した疾患一覧表を付記して,十分に鑑別診断を行うことを勧奨した.

しかし鑑別診断にあまり時間を費やすことは好ましくなく,とくに主要症状が1 つあるいは2 つのみの場合でCALが認められている場合には,川崎病の可能性を検討しつつ,遅くとも第7 病日までにはIVIG +アスピリンの標準的治療を開始することが望ましい.

CAL の定義としては,前項に述べたように冠動脈内径のZ スコア+2.5 以上を原則とするが,実測値で判定する施設もまだあると考えられるため,その内径に近似すると考えられる基準として,5 歳未満3.0 mm 以上,5 歳以上

4.0 mm 以上と記載した.一方で,従来川崎病に特徴的で

あるといわれてきた「冠動脈壁の輝度増強(perivascular brightness)」については,超音波機種を問わずに普遍的で正確な評価方法が明確でなく,否定的であるとされる報告92)がある.また,他の発熱疾患を対象とした研究82)では特異性がなく,観察者の主観による影響が否定できないため,AHA のステートメント2)でも記載されなくなっており,診断の手引き第6 版においても 川崎病の診断に有意義な所見としていない.

また,参考条項には改訂4 版以来に約30 年ぶりの改訂を加え,とくにこれら不全型の診断時に有用と思われる, 1病初期の血清トランスアミナーゼ値の上昇,2乳児の尿中白血球増加,3回復期の血小板増多,4脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはBNP 前駆体のN 端側フラグメント(NT-proBNP)の上昇,5心エコー検査での僧帽弁閉鎖不全・心膜液貯留,6胆嚢腫大,7低アルブミン血症・低ナトリウム血症など,川崎病に特異的または特徴的な検査所見を最初の項にまとめた.これらの検査所見は,それぞれ主要症状が満たされていない時に川崎病を疑

うきっかけになる項目として,川崎病の診療経験の多い医師が日常留意している所見と思われるが,各項目の数値的に最適な判断基準は明確でないので,今後の検討が必要である.

参考条項では,それら以外に,川崎病の中でとくに急性期病状が重症と考えられ,集中治療も要するような症状を第2 項に,治療抵抗性を予測させる危険因子を第3 項にまとめた.それ以外にこれまでも挙げられていた所見を含めて,川崎病にも見られる非特異的所見を第4 項にまとめた.

4.2 不全型の実態

これまでの診断の手引き改訂5 版による診断分類について,直近の第24 回全国調査結果6)における各分類の頻度は,2 年間の報告患者31,595 人中,定型例は77.8%,不定型例は1.6%,不全型は20.6% であり,各頻度に男女差はほとんどない.図1 に示すように年々不全型の割合は増加している.年齢別にみると2 歳未満の若年齢,もしくは6 歳以上の年長児では不全型の割合が比較的高い.不全型の主要症状の数は4 つがもっとも多く70.5%,次いで3 つ23.3%,2 つ5.4%,1 つ0.7%,不明0.2% であった.

不全型症例の診断には,個々の主要症状の特徴を十分に知って症状の有無を判断する必要がある.乳児におけるBCG 部位の発赤や,頚部リンパ節腫脹が年長児では他の症状に先行することや,超音波検査で多房性を呈することの確認などは,川崎病と診断する際に特異度の高い症状である.また,前述の診断の手引き改訂第6 版の参考条項第1 項にまとめた,1~7の所見を確認することも重要である.

不全型川崎病はかならずしも軽症ではなく,CAL の合併も少なくない93–95).Sudo らは2007 ~2008 年の川崎病全国調査結果を解析し,不全型川崎病は免疫グロブリン不応例の頻度は少ないものの,治療開始病日が定型例に比較して遅く,CAL の合併頻度が高いことを明らかにした93).最新のメタ解析によると,不全型川崎病は定型例と比較してCAL 合併リスクが高い(オッズ比1.45,95% 信頼区間1.16 ~1.81)ことも明らかになっている96).

改訂6 版の診断の手引きでは,4 症状で冠動脈にまだ病変を認めていない場合,また3 症状でCAL がある場合には,他の疾患を否定したうえで不全型川崎病と診断することを明記した.不全型川崎病97)は川崎病の一病型であり, CAL を悪化させないために,遅くとも第10 病日以前に解熱させられるよう標準的治療法を,あるいはIVIG 抵抗性が予測されれば強化された治療をできる限り早く開始する