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p.7 抽出テキスト

診療ガイドラインは,診療行為における有益性と不利益のバランスなどを考慮した患者および医療者の意思決定を支援する.それは,evidence-based medicine(EBM)をもとに作成されるが,一方,EBMの十分ではない疾患もあり,また欧米の試験がそのまま日本人に当てはまるわけでもなく,最終的な診療方針は,診療ガイドラインを参考に,患者の病状,意思,社会的背景などを最もよく知る主治医を含む医療チームで決定されるべきである.

本ガイドラインで取り上げる心筋症は,虚血性心疾患などに比べ,十分なエビデンスのある領域とは言いがたいが,一方,従来原因不明とされた病因に関して急速な進歩を遂げた疾患でもある.Goodwinが,1961年に心筋症を,“a subacute or chronic disorder of heart muscle of unknown or obscure aetiology,often with associated endocardial, and sometimes with pericardial involvement,but not atherosclerotic in origin”とし1),この概念を引き継いだ1980年のWHO/ISFC合同委員会では,心筋症は“原因不明の心筋疾患”と定義された2).しかし,肥大型心筋症における遺伝子変異の同定に始まり,心筋症の病因の一部が次第に解明され,“原因不明”という概念が,心筋症の定義にそぐわなくなってきた.これらの進歩をうけ,1995年のWHO/ISFC合同委員会の定義では“原因不明”が削除され3),2006年にAHAより,2008年にESCより新しい心筋症の定義,分類が提唱された4,5).さらに,肥大型心筋症では,2011年にACC/AHAより6),2014年にESCよりガ

イドラインが発表されている7).わが国では,2005年に「心筋症診断の手引きとその解説」が作成され8),独自の心筋症分類を採用している.循環器病の診断と治療に関するガイドラインも整備され,「2002年 肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(吉川純一班長),2007年,2012年改訂(土居義典班長) 9)」,「2011年 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン(友池仁暢班長)

10)」が策定されている.今回改訂された本ガイドラインは,これまで策定されたガイドラインを参考にしながら,肥大型心筋症と拡張型心筋症に関する診療ガイドラインを統合した世界で初めての「心筋症診療ガイドライン」である.

本ガイドラインは,

1 心筋症のこれまでの分類法を参考にしながら,わが国の

診療実態に即した心筋症の新しい定義の作成

2 肥大型心筋症は,EBMの十分でない疾患であることよ

り,前述のACC/AHA,ESCのガイドラインを参考に,わが国より発信されたエビデンスを盛り込みながら,診療現場での実際の意思決定に有用であること

3 拡張型心筋症における病因解明の進歩を折り込み, 本

症が左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)の代表的な疾患であることより,急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

11)を参照にした最新の診療・治療方

改訂にあたって

MELAS mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and strokelike episodes脳卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症MERRF myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかんMVO midventricular obstruction心室中部閉塞PTSMA percutaneous transluminal septal myocardial ablation経皮的中隔心筋焼灼術RCM restrictive cardiomyopathy拘束型心筋症

S-ICD sub-cutaneous ICD皮下植込み型除細動器SAM systolic anterior motion (僧帽弁)収縮期前方

運動SCD sudden cardiac death心臓突然死

SRT septal reduction therapy中隔縮小治療

TTR transthyretinトランスサイレチン

VAD ventricular assist device心室補助人工心臓

WHO World Health Organization世界保健機関

α-Gal α-galactosidase α- ガラクトシダーゼ