p.68 抽出テキスト
は,心室頻拍の基盤となる心筋の変化がすでに存在していることを示す. ii. 運動負荷心電図 運動負荷検査は拡張型心筋症例では主として心室性不整脈の評価と運動耐容能の評価に用いられる.前者は主としてトレッドミル法で,後者は心肺運動負荷法(CPX)や6分間歩行法で評価されている. 運動負荷では不整脈の誘発,不整脈の種類,運動負荷時の血圧の変化を判断できる.重篤な不整脈が誘発された場合は,突然死につながる可能性があり,ICDの植込み等の適切な治療を要する.とくに,右脚ブロック型を呈するLown分類2~4の心室性不整脈が運動により誘発された場合は,左脚ブロック型の不整脈誘発例や非誘発例に比べ有意に予後不良である516, 517). CPXでは運動耐容能の指標である最高酸素摂取量と嫌気性代謝閾値が低下する.この指標はNYHA心機能分類に比べ客観性に優れ,治療効果や予後判定の評価にも使用可能である. 6分間歩行法はおおよその運動能力518)を推定するものである.本法は重症例では予後評価に有用なこともあるが,その変化は臨床的身体状況とは一致しないこともある519). iii. 臨床電気生理学検査 電気生理学的検査で拡張型心筋症などの心不全症例の予後を予測する意義に関しては従来から否定的な見解が出されていた520).現在ではアブレーション治療を前提として,持続性心室頻拍が誘発されるか否かを判定する,または除細動機能付きのデバイスを選択すべきか否かを決定する目的で施行されることが多い.デバイス治療に関するACC/ AHA/HRSガイドライン521)では,原因不明の失神ではEPSで持続性VT/VFが誘発されればICDのクラスI適応とされているため,失神を伴う拡張型心筋症例ではEPSを施行する意義がある. 4.4 バイオマーカー 拡張型心筋症に特異的なバイオマーカーは存在しないが,心不全のバイオマーカーは多数報告されている.なかでも,BNPとNT-proBNPは心不全のバイオマーカーとして重要であり,スクリーニングから重症度判定,予後予測まで幅広く用いられている(図24) 522).バイオマーカーについての詳細は「急性・慢性心不全診療ガイドライン」11)を参照いただきたい. 心不全におけるバイオマーカーの推奨クラスとエビデンスレベルを表44 11)に示す. 4.5 心エコー法 心エコー図・ドプラ法は,拡張型心筋症の定義である「収縮性が低下し,拡大した心室」をベッドサイドでも簡便に診断できることより,特発性拡張型心筋症や特定心筋症の診断の際に必要な検査の1つである.心エコー断層像により左室拡大と左室壁運動低下を認めた場合,拡張型心筋症や二次性心筋症を疑う.ただし,どの程度の左室拡大や壁運動の低下をもって拡張型心筋症とするかについて明確な指標はない. 4.5.1 心形態からの二次性心筋症の鑑別 拡張型心筋症は,心室内腔の拡大と収縮不全を特徴とする.心エコー図による心形態の観察は,二次性心筋症の鑑別に役立つことがある.ただし,最終的には心エコー図単独による鑑別は困難であり,MRI,RI心筋シンチグラフィ,心筋生検など他の診断ツールと組み合わせる必要がある.ただし,現在の診断ツールでは,二次性心筋症の診断を確実に行うことは困難であり,拡張型心筋症と考えられても,二次性心筋症の診断に至るサインが患者から発せられていないか,常に観察を怠らないことも重要である. 4.5.2 心機能・血行動態・合併症評価 心機能・血行動態・合併症評価は,日本循環器学会の急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版) 11)に 準じる. 図24 BNP,NT-proBNP 値の心不全診断へのカットオフ値(日本心不全学会予防委員会.2013 522)より) 心不全の可能性は極めて低い 心不全の可能性は低いが,可能ならば経過観察 BNP 0 40 100 200 (pg/mL) 125 400 900 (pg/mL) NT- proBNP 軽度の心不全の可能性があるので精査,経過観察 治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介 治療対象となる心不全の可能性が高いので精査あるいは専門医に紹介 18.4