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p.67 抽出テキスト

b. 不整脈原性右室心筋症(ARVC)

不整脈原性右室心筋症は,右室優位の心拡大と心機能低下,右室起源の重症心室性不整脈を基本病態とする509).左室は正常ないし軽度異常にとどまる.主に右室心筋の脂肪変性と線維化を認める.伝導遅延により右側前胸部誘導(V1-3誘導)のε波または限局性のQRS幅延長(>110ms)が特徴的所見である.右室起源の左脚ブロック型の心室期外収縮の頻発や心室頻拍がみられることが多い.しばしば家族性で,不整脈原性右室心筋症の原因としてデスモゾーム関連遺伝子異常が報告されている.心室頻拍と心不全の合併が予後不良とされる510). c. 左室緻密化障害(LVNC)

左室緻密化障害は,WHOではunclassified cardiomyopathyの1つとして位置づけられ3),AHA分類では遺伝性心筋症とされている.胎児心筋が緻密な心筋構造に形成される過程が障害され,スポンジ状の胎児心筋が遺残しながら,心筋緻密層が低形成のため心機能低下が生じると考えられる,左室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を特徴とする疾患群である.エコー上,心筋壁が心内膜側の緻密化障害のある厚い層と心外膜側の緻密化した薄い層の二層構造を呈する.従来,先天性心疾患として認識されていたが,エコーやMRIなどの画像診断の発達とともに成人例での報告が増加している.これまでZASP,tafazzinなどの遺伝子異常が報告されている.家族内発症もあるが弧発性が多く,小児から成人まで発症するが有病率などの実態は不明である.複雑な肉柱構造のため血栓形成が高頻度である.血栓症や不整脈を合併することがあり,びまん性の壁運動低下,左室の拡大および収縮不全を呈し,臨床的には拡張型心筋症の病態をとる511, 512).

4.2 症状・身体所見

4.2.1 自覚症状

拡張型心筋症に特徴的な自覚症状はない.また,無症候性に経過することも多い.心不全による臓器うっ血や心拍出量低下に伴う症状がみられる.自覚症状としての呼吸困難,浮腫,易疲労感,食思不振や悪心がみられる.さらに不整脈や塞栓症による症状を訴えることもある.不整脈としては,洞性頻脈,心室性不整脈,心房細動が多くみられる.心室頻拍あるいは徐脈性不整脈は,めまいや失神をもたらし,突然死もまれではない.具体的な症状は,急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

11)を参照い

ただきたい. 4.3 心電図

4.3.1 12誘導心電図とホルター心電図

a. 12誘導心電図

拡張型心筋症に特異的な心電図所見はない.しかしながら,心筋の線維化,心房心室の拡張,刺激伝導系の障害,心不全等に由来する波形変化,不整脈が認められる.左室高電位~左室肥大(拡大),r波減高(とくにV1からV3誘導のpoor R progression),異常Q波,QRS幅延長,左側胸部誘導におけるVAT(ventricular activation time)延長,脚枝ブロック,心室内ブロック,ST-T変化などが出現する.左室の拡張がさらに進行すると,QRS幅が0.12秒を超え,左脚ブロック所見を呈する.さらに左室の線維化が進行すると,左側胸部誘導のR波が減高し,S波が主体の胸部誘導波形を示すとともに,四肢誘導は低電位化する.一方,右室の拡大,圧負荷が生じると右側胸部誘導でT波が陰転化し,V4,V5誘導までT陰転が波及する.

心房も房室弁の逆流や左室拡張末期圧の上昇に伴って拡大と線維化が生じ,P波幅の延長や左房負荷所見を呈し,心房性期外収縮,心房細動が出現してくる.心室期外収縮も心機能の低下とともに多発するようになり,連発や多源性期外収縮も出現する.

拡張型心筋症では主として左室に病変を有するため,心室期外収縮の波形は右脚ブロックを呈することが多い.

心不全状態ではおおむね頻脈となる.異所性心房起源の頻脈や,睡眠中も100/分を超える洞頻脈を呈している場合は,心房頻拍や不適切洞頻脈(inappropriate sinus tachycardia)に基づく頻脈誘発性心筋症を疑う513).心筋の変性により刺激伝導系が傷害されると,I~III度房室ブロックを生じる. b. ホルター心電図

心房性,心室性不整脈は左心機能が低下するにつれて増加する.拡張型心筋症では心室期外収縮,多源性期外収縮,3連発以上の非持続性心室頻拍が認められる.拡張型心筋症では植込み型除細動器(ICD)や心室再同期機能付き除細動器(CRT-D)植込みの適応検討や,上室性頻脈の心拍数コントロールのためには必須の検査法である. i. 加算平均心電図

加算平均心電図は急性心筋梗塞後の突然死予測に有用とされているが,伝導障害を伴うことが多いため陽性的中率は低くなる514).このため加算平均心電図を拡張型心筋症の予後予測に用いるには一定の限界がある515).ただしQRS終末部を明らかに超えて遅延電位が記録される場合