p.66 抽出テキスト
iii. 免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎,心筋障害 免疫性副作用として心筋炎が報告されている.頻度としては,ニボルマブによる心筋炎が0.06%, ニボルマブとイピリムマブの併用で0.27%と高くはないが,初期症状が軽微でも急速に劇症化し致死的になることがあるため注意が必要である507). その他,心筋症を発症しうる抗がん剤を表43に示す506). j.ファブリー病 心ファブリー病の心病変は,左室肥大を主とした障害が基本病態であるが,病期の進行に伴い左室収縮機能障害とともに肥大の退縮や左室後壁基部に限局した菲薄化が出現し,拡張相肥大型心筋症様の病態を呈する. k. 周産期心筋症(産褥性心筋症) 心疾患の既往がなく,心不全を発症する原因が他にみあたらない女性が,妊娠・産褥期に心不全を発症し,拡張型心筋症様の病態を呈するものである.半数以上は完全治癒するが,約4割に心機能低下が残存し,重症例は致死的である.妊娠・分娩が本疾患の発症と進展に関与していると考えられ,妊娠高血圧症,多胎妊娠,子宮収縮抑制剤使用に頻度が高く,その後の再妊娠で再発傾向を認める465, 508). 4.1.2 鑑別すべき他の心筋症 原因が特定できない原発性心筋症のなかで,構造的・機能的変化が拡張型心筋症と類似しているが,鑑別すべき心筋症として,拡張相肥大型心筋症,不整脈原性右室心筋症,また心筋症としての分類ではないが,左室緻密化障害があげられる. a. 拡張相肥大型心筋症 肥大型心筋症の一部には,長い経過中に肥大した心筋壁厚が次第に薄くなり,左室収縮力の低下,左室内腔の拡大をきたし,拡張型心筋症に似た病態を呈するものがある.家族歴を有する割合が高く,致死性不整脈による突然死や心不全増悪を繰り返すことが多く,予後不良である. 表42 アントラサイクリン薬剤による心筋症発症の危険因子 • 総投与量• 女性• 65歳以上,18歳未満• 腎不全• 心臓を含めた胸部放射線療法の併用および既治療• 化学療法の併用(アルキル化剤,微小管阻害薬,免疫療法) • 心負荷を増大させる基礎心疾患• 高血圧症• 遺伝的要因(Zamorano JL, et al. 2016 506)を参考に作表)表43 左室機能障害を引き起こす抗がん剤 抗がん剤発症率(%) アントラサイクリンドキソルビシン(アドリアマイシン) 400 mg/m2 3~5 550 mg/m2 7~26 700 mg/m2 18~48イダルビシン(>90 mg/m2) 5~18エピルビシン(>900 mg/m2) 0.9~11.4ミトキサントロン(>120 mg/m2) 2.6リポソーマル アントラサイクリン(>120 mg/m2) 2アルキル化剤シクロフォスファミド7~28イホスファミド<10 g/m2 0.5 12.5-16 g/m2 17代謝拮抗剤クロファラビン27微小管阻害薬ドセタキセル2.3~13パクリタキセル<1モノクローナル抗体トラスツズマブ1.7~20.1ベバシズマブ1.6~4ペルツズマブ0.7~1.2小分子チロシンキナーゼ阻害薬スニチニブ2.7~19パゾパニブ7~11ソラフェニブ4~8ダサチニブ2~4イマチニブメシル酸塩0.2~2.7ラパチニブ0.2~1.5ニロチニブ1プロテアソーム阻害剤カルフィルゾミブ11~25ボルテゾミブ2-5 (Zamorano JL, et al. 2016 506)を参考に作表)