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不可欠である494). e. 心筋炎 心筋炎の多くは,ウイルスや細菌,リケッチア,クラミジア,真菌,寄生虫などの感染によって発症する.ウイルス性心筋炎の原因ウイルスとしてはコクサッキーB群ウイルスが最も頻度が高い.感冒症状に引き続き,その一部は劇症型心筋炎として急激な経過をとることがある.急速で広範な心筋の炎症後に広範な繊維化を伴い左室機能低下が遷延することも少なくなく,心内膜下生検による速やかな診断と循環維持のための急性期管理が重要である.また,心筋炎には,非感染性のものも含まれ,それらは自己抗体が関与していることが考えられる.いずれの場合も,炎症の持続により心筋細胞壊死が生じると,それに続いて生じる自己抗原の放出が引き金となり,慢性心筋炎として炎症が持続し,最終的には拡張型心筋症へ進行することがある(図23) 495-497).そのような持続的炎症に関連した拡張型心筋症について,ESCでも組織所見とあわせて炎症性拡張型心筋症58)(inflammatory dilated cardiomyopathy; iDCM)として定義しているが,病因や診断についてはまだ確定的なところに至っていないのが現状である. f. 筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 筋ジストロフィーは遺伝性で進行性に筋力低下を示す疾患群であり,Duchenne型,Becker型,Emery-Dreifuss型,肢帯型筋ジストロフィー,顔面肩甲上腕型,ミオトニー型に分類される.筋ジストロフィーは筋細胞骨格と細胞外マトリックスを構造的に結合するジストロフィン蛋白の遺伝子変異が原因となる. i. Duchenne型筋ジストロフィーに伴う心筋症 患者の多くは10代に左室収縮能の低下を認める.運動制限のため心不全症状を伴わないことが多いため,症状の 有無に関係なく定期的な心機能評価が必要である.胸郭変形や側湾の影響により心エコーによる評価が困難となることも少なくない.左室壁運動が正常であっても, 201Tl心筋シンチグラフィでの広範な灌流欠損が予後予測に有用とされる.心筋細胞の脂肪/線維性置換が左室後壁基部から徐々に左室自由壁に広がるのが特徴的である.肥大性心筋症様よりも拡張型心筋症様の表現型が多いが,肥大型心筋症から拡張型心筋症へと移行する例も認められる.ほぼ全例で僧帽弁逸脱が認められるが,その正確な原因は不明である.ジストロフィン蛋白はほぼ欠損しているが,心機能異常は骨格筋力低下の程度とは相関せず,運動機能がまだ保たれている場合にも合併することがある498). ii. Becker型筋ジストロフィー Duchenne型と類似する臨床像を示すが,歩行困難などの進行はやや遅い.Becker型筋ジストロフィーの心筋症合併頻度は60~75%で499),発症時期は個人差が大きく,歩行可能な時期でも心機能低下を示すことがあり,中学生以降では定期的評価が必要である.Duchenne型で特徴的な左室後壁の線維化は通常認められず,肥大型心筋症様または拡張型心筋症様の表現型,局所左室壁運動異常,心尖部血栓,僧帽弁閉鎖不全症等が認められる.初期に右室拡大をきたし,その後に左室拡大と左室収縮不全に陥るのが典型的な経過である500).Duchenne型もBecker型もX染色体連鎖の遺伝形式をとるが,保因者であっても約11%に進行性の左室機能低下を合併すると報告され,経過観察が重要である501). iii. Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー X連鎖潜性遺伝形式または常染色体顕性遺伝形式をと 図23 心筋炎と炎症の遷延による細胞障害説 遺伝的背景 心筋細胞の炎症,壊死 (急性心筋炎) ウイルス,細菌,真菌など 感染 薬物,サルコイドーシス,自己抗原など 非感染 自己免疫によるさらなる障害 拡張型心筋症慢性心筋炎治癒