p.63 抽出テキスト
いたが,その後の適切な薬物治療,心臓再同期療法(CRT),植込み型補助人工心臓などとともに改善していると考えられる. 4 診断基準,鑑別診断 拡張型心筋症は,左室心筋の構造的・機能的異常のなかでも,左室のびまん性収縮障害と左室拡大を呈し,冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・先天奇形などの二次性心筋症を鑑別・除外するものである.収縮力低下は,2種以上の画像診断で駆出率の低下が証明されるか,経時的に異なるポイントで同一画像診断による駆出率の低下が示されることが望ましい. 4.1 鑑別すべき心筋症 4.1.1 鑑別すべき二次性心筋症(特定心筋症) さまざまな原因により拡張型心筋症様の病態を呈する疾患のなかでも,比較的頻度が高く,臨床上しばしば鑑別に注意を要する心筋症を下記に述べる.拡張型心筋症の診断のためにはこれらの疾患を除外することが必要であり,主なものについて以下に述べる. a. 虚血性心筋症 慢性虚血を原因とする拡張型心筋症に類似した左室の拡大と収縮機能の低下を特徴とする重症虚血性心疾患である.多くは陳旧性心筋梗塞を背景疾患とするが,狭心症を繰り返し発症することによる重症心筋虚血,貧血や睡眠時無呼吸症候群などによる心筋の低酸素状態も原因となる.心不全増悪による入院の原因として最多であることから,拡張型心筋症を疑う症例では必ず最初に除外する.冠動脈支配領域に一致した局所的壁運動低下が特徴的だが,びまん性低下の場合もあり,また特発性拡張型心筋症でも不均一な壁運動低下を認めることもあるため,両者の鑑別が困難な場合も少なくない.鑑別には虚血性心疾患の既往などの病歴に加えて,カテーテル検査やCTによる冠動脈造影検査が必要となる.造影剤が使用できない場合には血流シンチグラフィなどによる代用も可能である. b. 高血圧性心疾患 高血圧性心筋疾患は左室肥大および心筋細胞肥大,間質や血管周囲線維化などの組織学的異常とともに心機能障害として収縮不全を呈した拡張型心筋症類似の病態である.左室拡大を伴う遠心性肥大を呈することが特徴であり,とくに病初期にはさまざまな左室肥大の形態を示す484).病 後期には左室肥大を認めず左室駆出率が低下することがあるため,左室肥大がなくとも,高血圧の病歴や左室肥大の既往の有無について十分な評価が必要である.心不全の発症には,心臓の組織学的・機能的障害に加え,血管,腎臓など高血圧による他の臓器障害も寄与していることが多い. c. 心サルコイドーシス サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,肺,肺門リンパ節,眼,皮膚に好発する.サルコイドーシスにおける心臓病変の正確な頻度は不明であり,臨床的には5%程度といわれているが,剖検例の検討ではさらに頻度が高くなる485, 486).わが国では女性は中高年に多く,男性では好発年齢がなく若年者にもみられる487). 診断はときとして困難で,心臓に限局して発症する心臓限局性心サルコイドーシスもあることから,心筋症として治療されていた症例の剖検や心臓移植後にはじめて明らかになることもある488).初期には,肉芽腫性炎症や間質浮腫の存在する部位に一致した心室壁肥厚を認め,次第に炎症が消褪し病変部の線維化が進むと,心室中隔基部にはしばしば特徴的な壁の菲薄化を生じる.左室および右室の局所壁運動低下や心室瘤を認めるが,病変が広範に広がれば拡張型心筋症様の病態を呈する489).病理組織学的には,乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫,間質浮腫を伴ったリンパ球浸潤,線維化,微小血管病変と多彩な特徴を有する.18F FDG PETや心臓MRI,病理組織による鑑別が重要である. d. アミロイドーシス アミロイドーシスは,アミロイドと呼ばれる異常な線維性蛋白が心,肺,肝,腎,脾,消化管などの諸臓器に沈着する全身疾患であり,ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシス,遺伝性ATTRアミロイドーシス,野生型ATTRアミロイドーシス,透析関連アミロイドーシスに分類される.心アミロイドーシスは,心臓へのアミロイド沈着に起因する心機能障害をきたした病態であり,主要病態として,アミロイドの沈着による心室壁の肥厚に伴った拡張不全が主体であるが,さらに病期が進行すると,収縮不全と,進行性かつ難治性の心不全を呈する.また,刺激伝導系が障害され種々の不整脈が認められる.心エコー上,左室および右室壁肥厚,心筋内顆粒状光輝(granular sparkling sign),弁肥厚,両心房拡大,心房壁肥厚,心嚢液貯留,心房内血栓などを認めることがある490-492).冠血管へのアミロイド沈着から虚血を生じることもある493).病理組織学的にアミロイド沈着を証明することで確定診断に至るが,遺伝性アミロイドーシスが疑われる場合には遺伝子解析が