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p.62 抽出テキスト

や自己免疫によるものも原因として考えられている.拡張型心筋症のなかには,炎症細胞浸潤がなくとも,拡張型心筋症と診断された患者組織からウイルスゲノムが検出されたことが報告されている472).また,拡張型心筋症患者において主要組織適合抗原クラスII分子を介して心筋炎感染後の持続的な免疫応答に関与するヒト白血球型抗原DQ/ DR/DP変異と強く関連することなどから,ウイルス感染を契機に持続的な自己免疫機序が作動し,拡張型心筋症に移行することが推定されている.実際,拡張型心筋症患者の血清にはミオシン,β1アドレナリン受容体473, 474),M2ムスカリン受容体475),トロポニンI 476),Na-K-ATPaseポンプ477),ラミニン478)などのさまざまな抗心筋自己抗体が存在することが指摘され,これらの少なくとも一部は何らかの病態生理学的意義を有することが示されている.一方で,拡張型心筋症症例における何らかの自己抗体の検出率は9~95%であり,報告により著しいばらつきや特異度の低さが指摘されており479),個々の症例での自己抗体検出の臨床的意義はいまだ一定していない.

3 疫学

3.1 拡張型心筋症の有病率

拡張型心筋症の有病率については,その正確な報告はいまだない.わが国はもとより,米国でも,拡張型心筋症の正確な有病率は不明である.心不全患者のうちの心筋症の割合から推定すると,2017年度の循環器専門施設・研修関連施設における心不全による入院患者数は26万157人で,年に1万人以上の割合で増加している.日本全体における心不全患者総数に関する正確な統計はないが,推計では2020年には120万人に達するとされる.米国では,心不全患者数が全人口に占める割合は2%とされ,この比率でいくとわが国では約240万人の心不全患者がいることに

なる.わが国におけるさまざまなコホート研究480-482a~e)(表41)によれば,拡張型心筋症を基礎疾患とした患者は心不全入院のうち15~27%の割合であり,さらに約30~40%は再入院患者であることを加味すると,心不全症状を呈する心筋症患者は,人口千人あたり1~3人ということになるが,これらには二次性心筋症の一部がかなり含まれていると考えられる.一方,拡張型心筋症を指定難病として特定疾患受給者証の発行数(厚生労働省衛生行政報告)でみると,認定患者は,平成24年で25,233人,平成29年度で27,968人であった.平成27年度からは中等症以上の患者に限られて登録されるようになったことを加味すると,軽症を含めた拡張型心筋症の有病率は人口千人あたり0.5人つまり約2,000人に1人程度と推定される.

18歳以下の小児を対象とした登録研究482f)において10万人あたり1年に1.13件の心筋症の発症とされる.同じ研究で年齢については,1歳未満で10万人あたり1年に8.34件,1~18歳で10万人あたり1年に0.70件の発症と報告されている.

3.2 拡張型心筋症の予後

拡張型心筋症の予後については,明確な調査がないのが現状であるが,一般の心不全患者の予後を参考にすると,その1年死亡率はJCARE-CARD 480), CHART-1 481)では7.3%と報告されている.心不全患者の3年以内の再入院率はCHART-1で30%,CHART-2で17%,総死亡率はCHART-1で24%,CHART-2 で15%と改善を認めていることから,わが国では心不全の予後が以前より改善している可能性が予想される482).わが国では心臓移植の原因疾患として最も多く,2018年8月までに408例の心臓移植症例のうち,68%を拡張型心筋症が占め,依然として移植に至る重症心不全の原因疾患として最多である483).拡張型心筋症に関してのみの最近の予後に関するデータはないが,平成11年の厚生省の調査で5年生存率76%となって

表41 わが国における主な心不全コホート研究における拡張型心筋症の割合

N虚血性拡張型心筋症弁膜症高血圧症その他報告年CHART-2 482a) 3,029 59 17 17 10 7 2013 JCARE-GENERAL 482b) 2,685 30 15 26 35 17 2007 JCARE-CARD 482c) 2,675 32 24 - 25 18 2009 NARA-Heart 482d) 432 40 27 11 3 19 2016 WET-HF 482e) 1,876 36 15 23 38 2016