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第4章 拡張型心筋症 1 定義 2005年の特発性心筋症調査研究班の手引き8)同様,本ガイドラインでも拡張型心筋症は,「(1)左室のびまん性収縮障害と(2)左室拡大を特徴とする疾患群」と定義した.診断の確定には,基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す「二次性心筋症」(WHO/ISFCの「特定心筋疾患」)に該当3)を除外する.なおESCの分類でも,拡張型心筋症は,「左室拡大と左室収縮能障害を特徴とし,びまん性の収縮障害を引き起こしうる異常な負荷状況(高血圧や弁膜症)および冠動脈疾患の合併がない疾患群」と定義されている5). 拡張型心筋症と鑑別すべき二次性心筋症 AHA分類で示されているように拡張型心筋症は形態学的および機能学的な分類に基づくものであり,病因論的には遺伝性と後天性の混合した疾患群である(図1) 4).臨床的には,「左室拡大」と「左室収縮能障害」をきたす類似の疾患は多く存在する.したがって,いわゆる原発性(特発性)の拡張型心筋症の診断においては種々の二次性心筋症,いわゆる原因が明らかである特定心筋症を除外する必要がある(表40).それらをふまえて,拡張型心筋症とさらに鑑別が必要な心筋症として,拡張相へ移行した肥大型心筋症である拡張相肥大型心筋症や,不整脈原性右室心筋症があげられる.とくに拡張相肥大型心筋症は,長い経過を経て,診断時は形態からのみでは拡張型心筋症と鑑別するのが困難であることがしばしば経験される. 2 原因(基本病態) 2.1 拡張型心筋症の基本病態と概念 拡張型心筋症は,「原発性」心筋症のなかで(1)心筋収縮不全と(2)左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり,慢性心不全症状を特徴とし急性増悪を繰り返す予後不良・進行性の疾患である.また,致死性不整脈による突然死や動脈の血栓塞栓症を生じることもある. 家族内発症による遺伝子変異キャリアや,不整脈のみで発症した早期の拡張型心筋症について,収縮力がほぼ正常であっても早期から診断に努めることが重要である.二次的に説明できない心筋の構造的機能的異常を認めた場合には,拡張型心筋症の早期あるいは前臨床期をみている可能性を考え,継続的な検査と適切な時点でのマネジメントおよびリスク評価が重要である.典型的な左室拡張がなくとも,収縮力のみが低下する病態(hypokinetic non dilated cardiomyopathy; HNDC)あるいは軽度拡張型心筋症(mildly dilated cardiomyopathy; MDCM)も,臨床病態的には重篤な例も含まれ,注意が必要である465, 466).家族性拡張型心筋症家系内で無症状で左室拡張が認められない症例の10~20%で5年以内に拡張型心筋症に進展することも報告され,注意深い経過観察が必要となる467, 468). 2.2 拡張型心筋症の原因 拡張型心筋症の病因は長らく不明とされてきたが,遺伝性(家族性)と非遺伝性(非家族性)に分けて分析されるようになり,とくに成人で発症する拡張型心筋症の多くは,両成因が関与した症候群という考えが主流となっている. 2.2.1 遺伝性(家族性) 現時点でも既知の変異が,家族性拡張型心筋症患者の