p.57 抽出テキスト
Danon病は,ライソゾーム膜のLAMP-2蛋白の異常により筋細胞に空胞が多数できるX連鎖性優性遺伝を示す代謝異常症である.肥大型心筋症に加え,筋力低下,精神神経症候を重症度に応じて認め,心病変(肥大型心筋症,不整脈)が予後を規定する.肥大型心筋症は求心性肥大から拡張相肥大型心筋症へと進展し,心臓移植対象となることがある433).男性がより早期に発症し重症であるが,女性の重症例もある.いまだ疾患特異的治療法は開発されていない. 糖原病III型は,ケトン食療法の可能性が示唆されている434, 435). c. ミトコンドリア病 ミトコンドリアの構造や機能に関わる遺伝子の異常を背景にさまざまな臓器の症状を呈する病態で,小児ミトコンドリア病の20~40%に心筋症を合併し,表現型は肥大型心筋症が多いが拘束型心筋症,拡張型心筋症,左室緻密化障害など多彩である.新生児期・乳児期発症例はきわめて予後不良であり,原因不明の肥大型心筋症として見逃されている可能性もある. d. 糖尿病母体児 糖尿病母体(1型,2型)から出生する児の約3分の1に病的心肥大の合併を認める.母体の高血糖が,胎児の高血糖と高インスリン血症を引き起こし,心筋細胞肥大をきたす.軽度の左室肥大から高度の両心室肥大まで重症度は幅広く,ときに致死的な経過をたどる.心肥大の多くは数日~数ヵ月で消退する.胎児心エコーの指標と予後との関連が報告されている436, 437). e. 双胎間輸血症候群 一絨毛膜双胎の10~30%にみられる合併症で,双胎の胎盤間に血管吻合が存在し,一方の胎盤動脈から他方の胎盤静脈へ血液が慢性的に送られると,受血側は多血で体格は大きく,供血側は貧血で体格が小さくなる.受血児に,心肥大,心筋障害,右室流出路狭窄などがみられる438).胎内から両心室肥大を認め,致死的経過をたどる例もあるが,生後10日~2ヵ月で消退する例もある. 7 日常管理 7.1 日常生活 拡張型心筋症の項(第4章6.1 日常生活参照)にまとめて記載. 7.2 運動(表39) これまでスポーツ選手や若年者において,肥大型心筋症が突然死の原因疾患として知られており439),また身体活動によって突然死が引き起こされる440)として,肥大型心筋症についてはスポーツ活動に関する許可条件としての論文がみられており439, 441),運動療法の対象から外されてきた経緯がある.肥大型心筋症患者は息切れ,胸痛や失神など身体活動に伴う症状を訴えることがある.これらの症状は左室流出路狭窄,心筋虚血,拡張不全の増悪や運動に直接関与しない血管床の不適切な拡張などに伴って出現するといわれており442-444),これらにより運動耐容能が制限されていると考えられている445).しかし,心不全患者の過度の安静がもたらす弊害や定期的な運動が心血管系イベントを減らし,身体機能やQOLを向上させることが知られるようになり,運動トレーニングがHFrEF患者の再入院を減少させ, QOLと身体機能を向上させることが明らかとなった. HFpEFについては,無作為割付試験446, 447)およびメタアナリシス448)において,運動トレーニングが最高酸素摂取量で示される運動耐容能を高め,QOLを向上させることが示されている.しかし,これらの報告はHFpEF全般の運動療法効果を示しており,詳細なHFpEFの原因疾患を示しておらず,肥大型心筋症に限った効果であるか否か検討されていなかった. 表39 肥大型心筋症における運動療法の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベルMinds 推奨グレードMinds エビデンス 分類 肥大型心筋症に対し,運動耐容能改善を目的として実施するIIb C C1 IIIデコンディショニングの進んだ肥大型心筋症患者や身体機能の低下した患者については,レジスタンストレーニングによる筋力ならびに筋持久力改善により日常生活活動やQOL が向上するIIb C C1 V