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p.56 抽出テキスト

スクの層別化に基づいた植込み型除細動器(ICD)の適応が提唱されている7).小児でこのようなデータはないが,一般的には,左室肥大の重症度(最大左室壁厚が30mm以上またはZ-score≧6),失神の既往,非持続性心室頻拍,突然死の家族歴,心肺蘇生の既往が心臓突然死の危険因子と考えられている418).

日本学校保健会の作成した学校生活管理指導表(平成23年度版)に基づき,ハイリスク児ではほとんどの運動やスポーツ競技は禁止する(学校生活管理指導表B区分).有症状児および閉塞型肥大型心筋症の症例では中等度および強い運動は禁止する(学校生活管理指導表BないしC区分) 422).突然死の危険性が低いとされるものや無症状の例ではレクリエーション程度の運動は制限する必要はないが,スポーツトレーニングや競技は禁止する.蘇生既往例ではICDが第1選択となる.上記危険因子を2つ以上有する場合にもICDの適応を考慮する.危険因子が1つだけの場合は,個々の症例で患児と家族のリスクと有益性を鑑みたうえで慎重に適応を考慮する.

小児において有症状例やハイリスク群(肢誘導のQRS電位の合計>10mV,心室中隔厚が正常の190%を超える)の突然死を検討した報告423)では,β遮断薬(プロプラノロール,メトプロロール,ビソプロロール)の高用量投与のみが突然死を予防するうえで有効で,さらにジソピラミドの併用が突然死のリスクを軽減したとされるが,現時点で確立したものではない.一方で,肥大型心筋症に洞結節機能不全や房室ブロックを伴い症候性の徐脈をきたす症例があることにも注意を払う必要がある.

乳幼児期発症例ではうっ血性心不全のため多くが死亡し予後不良である424).心雑音のみの症状の乳児でも1年生存率は50%であるが,数年経つとうっ血性心不全の症状は軽減するかわりに突然死の割合が高くなってくる425). b. 感染性心内膜炎の予防

閉塞性肥大型心筋症では感染性心内膜炎の罹患率が高くなるので,抗菌薬の予防内服が必要とされているが393),確立されたエビデンスはない. c. 塞栓症の予防

心房細動等を合併する場合は,心原性塞栓症を起こすことがあるため抗凝固薬の投与が必要で,抗血小板薬を併用することもある.

6.6.5 拡張相肥大型心筋症の治療

肥大型心筋症の経過中に,心拡大の進行と収縮力低下をきたす例があり,拡張相肥大型心筋症と呼ばれる.拡張相肥大型心筋症の評価や治療は慢性心不全の管理に準じ, β遮断薬(カルベジロール)に加え,ACE阻害薬やARB,利尿薬の使用を考慮する426).

6.6.6 疾患関連肥大型心筋症の管理と治療

a. RAS/MAPK症候群

Noonan症候群はRAS/MAPK症候群(RASopathies)の1つであり,複数の責任遺伝子(PTPN11,SOS1,RAF1, BRAF,KRAS,HRAS,SHOC2)が報告されている.低身長,翼状頚,外反肘,特異顔貌,胸郭異常などの特徴があり,心合併症として,肥大型心筋症,肺動脈弁異形成・狭窄,心房中隔欠損,心室中隔欠損,両大血管右室起始などがある.RAF1遺伝子変異を伴う例では高率(約90%)に高度の肥大型心筋症を呈する427).肥大型心筋症は,左室壁肥厚,非対称性中隔肥大など特発性肥大型心筋症と同様の形態所見を呈すが,予後は特発性肥大型心筋症より悪く,とくに生後6ヵ月未満で心不全を伴って診断される例の予後は悪く,低身長や収縮力低下も独立した危険因子とされている428).

LEOPARD症候群もRAS/MAPK症候群の1 つであり,主要症状の多発性黒子(multiple Lentigines),心電図異常(electrocardiographic conduction abnormalities),眼間解離(ocular hypertelorism),肺動脈狭窄(pulmonary artery stenosis),性器異常(abnormal genitalia),成長障害(retardation of growth),感音性難聴(sensorineural deafness)を認める.常染色体優性遺伝であるが,孤発例が多い.約80%の症例に肥大型心筋症を認め,その重症度が予後に影響する.非対称性中隔肥大や全周性肥大を呈し,約40%に左室流出路の狭窄を認める.責任遺伝子のPTPN11 の変異箇所と重症度との関連も示唆され, Gln510Glu変異例は,新生児期より重度の肥大型心筋症を呈する429).RAS/MAPK系を修飾する治療法の試みが報告されている430). b. 代謝異常症

Pompe病(糖原病II型)は,グリコーゲン分解酵素(acidalpha-glucosidase)の欠損または活性低下により多量の正常グリコーゲンが細胞内に蓄積する常染色体劣性遺伝を示す糖代謝異常症である.心臓,肝臓,骨格筋でグリコーゲン蓄積が顕著で,とくに乳児型Pompe病(2歳までに筋力低下で発症)では全周性心肥大を認め,肥大型心筋症の形態を呈する.アルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)による酵素補充療法を早期に行えば,心機能の改善が得られることが示唆されている431).

ファブリー病は,α-ガラクトシダーゼ欠損または活性低下により糖脂質がライソゾームに蓄積し心筋肥大をきたす.アガルシダーゼベータ(遺伝子組換え)による酵素補充療法を行い,対処療法を併用する432).