p.55 抽出テキスト
法は必須であり,β遮断薬が基本となる. a)β遮断薬 有意なLVOTOに対しては血管拡張作用のないβ遮断薬が第1選択となる.β遮断薬は,心拍数を減少させ,陰性変力作用がある.心拍数の減少により,拡張期は延長し左房圧の低下が期待される.また,運動時の心拍増加を抑え左室拡張末期圧上昇が抑制されることも期待される.一方,陰性変力作用により,左室内圧較差を減少させ,胸痛や失神発作などの自覚症状を改善する.プロプラノロールなどの非選択的なβ遮断薬が使われることが多く409),使用量は2~5mg/kg/日が一般的であるが,さらに高用量(8~ 24mg/kg/日)が生存率を改善させたという報告がある410, 411).他のβ遮断薬(アテノロール,メトプロロール)なども用いられるが,小児では各β遮断薬の比較検討はない. b)カルシウム拮抗薬 カルシウム拮抗薬には,陰性変力作用と心拍減少効果があることから,成人ではベラパミルが症状と運動量の改善をもたらすとの報告がある.小児でのデータは乏しいが,症候性でβ遮断薬が無効の場合は試してみる412).ベラパミルの使用量は3~8mg/kg/日が一般的である.ただし,強いLVOTOや肺高血圧を合併している場合には,肺水腫や突然死をきたす可能性があり注意する326). c)抗不整脈薬 ジゾピラミドやシベンゾリンは,Naチャネル抑制による陰性変力作用を有し,左室流出路圧較差軽減および抗不整脈作用があるため,成人では症状改善に有用とされる413)が,小児での経験は少なく慎重に投与を考慮する414).心電図をモニターし,QTを延長させるアミオダロンやソタロールとは併用しない.これらの薬物は心拍数を増加させる可能性があるため,β遮断薬の併用が望ましい.経口投与では血中濃度が上がりにくいことにも留意する. d)ACE阻害薬 ジゴキシン,その他の強心薬(陽性変力作用薬),ACE阻害薬については,閉塞を悪化させる可能性があるため原則使用しない.しかし,ACE阻害薬は拡張相肥大型心筋症では用いられることがある. e)利尿薬 利尿薬は前負荷の減少をもたらすので一般的に用いないが,心不全を呈する症候性幼児や労作時息切れが強い場合には,注意しながら少量の利尿薬を用いることで症状の改善が得られることがある. iii. 非薬物治療の適応a)経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA) 成人では,経験のある施設で行う冠動脈心室中隔穿通枝への選択的アルコール注入により,LVOTO圧較差軽減,症状改善,運動耐容能改善が得られると報告されているが, 小児では長期予後のデータがなく,体格の小さな小児ではリスクも高いため現時点で推奨する根拠がない. b)中隔心筋切除術 中隔心筋切除術(septal myotomy-myectomy:Morrow procedure),Modified Konno手術などが行われているが,小児での経験は少なく長期的な成績も不明である415, 416). c)不整脈治療 幼少児では不整脈はまれであるが,コホート研究で16 ~18%が非持続性心室頻拍を示していた417).心室性頻拍に対して,アミオダロンないし手術適応のある場合には心筋切除術,あるいはICD植込みで対処する.小児でのICDの経験は少ないが,突然死が学童期や若年者に多いことから考慮すべきである418). b. 非閉塞性肥大型心筋症の場合 症状もなく不整脈もない場合,薬物治療の適応があるかは議論のあるところである.何らかの危険因子(突然死の家族歴,遺伝子異常など)を有する場合には,運動制限を考慮する.中等度および強い運動は禁止する(学校生活管理指導表BないしC区分).症状がある場合には,左室拡張期圧を下げ,症状を軽減し,不整脈を管理することが目標となる.収縮力低下がなく労作時息切れや労作時胸痛がある場合は,β遮断薬またはCaチャネル拮抗薬が考慮される.息切れが主体の場合は注意しながら少量の利尿薬を追加する.収縮力低下(EF<50%)があり症状がある場合には,β遮断薬に加えACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB),少量の利尿薬を考慮する. 6.6.4 合併症の予防 a. 突然死の予防 肥大型心筋症は若年者の心臓突然死の最も一般的な原因であり,とくに運動に関連した突然死が多い419).小児では成人に比べ突然死の頻度が約2倍とされ,最も起こしやすい年齢は12~35歳である83).成人では,突然死に関連する危険因子として,診断時年齢(若年),非持続性心室頻拍(3連発以上,心拍数120/分以上,30秒以内),最大左室壁厚(≧30mm),突然死の家族歴(年齢を問わず肥大型心筋症と診断された1親等内の突然死,または肥大型心筋症の診断の有無にかかわらず1親等内の40歳未満の突然死),失神(とくに運動中)の既往,心停止あるいは持続性心室頻拍の既往,左房拡大(左房径≧45mm),左室流出路圧較差,運動時の血圧反応の異常(年齢40歳以下で運動時の収縮期血圧上昇が20mmHg未満)が報告されてきた105, 420, 421).肥大型心筋症における5年の心臓突然死予測確率モデル(HCM Risk-SCD formula)が考案され,リ