p.52 抽出テキスト
血管拡張作用の強いジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬やレニン–アンジオテンシン系阻害薬投与が流出路圧較差を悪化させる可能性がある297, 298).高血圧と左室肥大を呈する患者に対し降圧薬を選択する場合には,閉塞性肥大型心筋症を鑑別したうえで検討する必要がある. 6.5.2 大動脈弁狭窄を合併した肥大型心筋症 大動脈弁狭窄症では持続的な圧負荷により左室肥大が進行してくるため,肥大型心筋症と類似した心臓形態になる場合がある.とくに臨床的に問題となるのは,重度大動脈弁狭窄症患者が閉塞性肥大型心筋症様の中隔基部の不均一な肥厚を伴っている場合である.この場合に左室流出 路の圧較差と大動脈弁の圧較差を厳密に区別することは非侵襲的には困難である385, 386).大動脈弁置換術の際にその直下にある突出した中隔心筋を切除することは比較的容易な手技であり,手術後に左室流出路狭窄が残存して症状改善が制限されることや前負荷の軽減で流出路狭窄が悪化する可能性も想定されることから,大動脈弁置換時に積極的に中隔心筋切除術を追加することを推奨する意見が多い386-389)(表36).高齢者では経皮的大動脈弁置換術が選択されることが増えてきているが390, 391),臨床的に問題となる流出路狭窄を合併し中隔縮小治療が必要と考えられる場合にはPTSMAを追加あるいは先行して行われている392) (表36). 6.5.3 肥大型心筋症患者の感染性心内膜炎合併 感染性心内膜炎は心臓内の血液の逆流・乱流・ジェット流などにより心内膜が損傷した部位に菌が付着して生じることから,肥大型心筋症のうち左室内圧較差を有する閉塞性肥大型心筋症患者や僧帽弁閉鎖不全などの重度弁膜症を合併した患者に生じる危険が高い393).閉塞性肥大型心筋症患者が感染性心内膜炎を併発し重度の僧帽弁逆流・大動脈弁逆流あるいは両者を合併した場合には外科的な置換術をする必要がある394).閉塞性肥大型心筋症患者の場合,肥厚した僧帽弁前尖と心室中隔中枢側に隣接する表面が感染床の好発部位とされる394, 395). ESCのガイドラインでは閉塞性肥大型心筋症を含めた感染性心内膜炎発症リスクの高い患者に対する歯科処置時の予防的抗生物質投与は推奨されていないが396),わが国では歯科処置時に予防的抗生物質投与を行うべきリスクの高い心疾患の1つとして閉塞性肥大型心筋症を含めている(表37) 397). 表35 高血圧性心疾患と肥大型心筋症の鑑別を補助する臨床的特徴 高血圧単独を支持する臨床的特徴正常12誘導心電図または再分極異常を伴わない高電位厳格な6~12ヵ月間の収縮期血圧コントロール(130mmHg未満)による左室肥大の退縮肥大型心筋症を支持する臨床的特徴肥大型心筋症の家族歴右室肥大CMRで心室中隔右室接合部または左室肥大が最も顕著な部分に遅延造影が局在左室最大壁厚15mm以上(白人),20mm以上(黒人)重度の拡張障害著明な再分極異常や伝導障害,Q波をもつ12誘導心電図(Elliott PM,et al. 2014 7)より) Translated and reproduced by permission of Oxford University Press on behalf of the European Society of Cardiology. Please visit: www.escardio.org/Guidelines/Clinical- Practice-Guidelines/Hypertrophic-Cardiomyopathy OUP and the ESC are not responsible or in any way liable for the accuracy of the translation. The Japanese Circulation Society is solely responsible for the translation in this publication/reprint. 表36 大動脈弁狭窄を合併した肥大型心筋症に対する中隔縮小手術の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベルMinds 推奨グレードMinds エビデンス 分類 中隔基部肥厚が病態の悪化関与に明確な左室流出路狭窄を合併した重度大動脈弁狭窄症患者に対し,大動脈弁置換術試行時に中隔心筋切除術を追加するI B B III中隔基部肥厚があり術後に左室流出路狭窄が残存する可能性が高い重度大動脈弁狭窄症患者に対し,大動脈弁置換術試行時に中隔心筋切除術を追加するIIa C C1 IVb経皮的大動脈弁置換術適応の大動脈弁狭窄患者が中隔基部肥厚により重度左室流出路狭窄を合併している場合にPTSMA を先行あるいは追加で行うIIa C C1 V