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p.50 抽出テキスト

6.4 上室性不整脈と血栓塞栓症(表34)

6.4.1 総論

心房細動は肥大型心筋症に最も遭遇する不整脈である. 33の臨床研究に基づいたメタ解析によると,肥大型心筋症における心房細動の有病率は22.5%,心房細動合併例での血栓塞栓症の有病率は27.1%と報告されている363).さらに,心房細動の新規発症率(100人・年あたり)は3.1%,心房細動合併例での血栓塞栓症の新規発症率は3.8%とされ,心房細動および血栓塞栓症の発症リスクとして年齢と左房拡大があげられている363).また,心房細動は肥大型心筋症の疾患関連死亡(突然死,心不全死,脳卒中死)のリスクを上げる(心房細動3%/年,洞調律1%/年) 273).一方,肥大型心筋症に心房細動を伴うと80%以上が何らかの症状を呈するといわれる273).その症状は息切れ,呼吸

困難などの心不全症状や胸痛,さらには失神などの意識消失があげられる.肥大型心筋症では,頻脈性心房細動を伴うと拡張期コンプライアンスの低下と拡張期充満時間の短縮による左室拡張末期圧の上昇から左房圧,肺毛細管圧の上昇をきたし,頻脈による拡張末期容積の減少から心拍出量が減少することなどがこれら症状の発現に関係すると考えられる.

なお,肥大型心筋症に伴う心房粗動あるいは他の心房性不整脈の有病率および特徴に関するデータはほとんどない.心房粗動については,心房細動治療ガイドラインの方針364)と同じく心房細動に準じて対応することが勧められる.また,発作性上室性頻拍において,WPW症候群あるいは房室結節リエントリー性頻拍の予防には,カテーテルアブレーションの有効性が高い.

表33 左室流出路閉塞に対するペーシングの推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベルMinds

推奨グレードMinds

エビデンス

分類

経皮的中隔心筋切除術あるいは中隔心筋切除術によりブロックをきたす高リスク症例IIb C C1 VI薬物療法抵抗性の安静時あるいは誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg 以上ある患者で,経皮的中隔心筋切除術あるいは中隔心筋切除術が禁忌の症例である症例IIb C C1 V安静時あるいは誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg 以上あり,洞調律で薬剤抵抗性の患者に対する,ICD の適応がある際のICD あるいはdual chamber ICD IIb C C1 VI

表34 肥大型心筋症における上室性不整脈治療と血栓塞栓症の予防の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベルMinds

推奨グレードMinds

エビデンス

分類

肥大型心筋症に伴う心房細動患者に抗凝固療法を行うI B A IVa肥大型心筋症に伴う持続性あるいは永続性心房細動の心拍数調整として,β遮断薬,ベラパミル,ジルチアゼムを使用するI C B IVa最近発症した心房細動に対して電気的除細動あるいはアミオダロンによる薬理学的除細動を行うIIa C B IVa肥大型心筋症に伴う再発性心房細動に対し,アミオダロンあるいはI 群抗不整脈薬による再発予防を行うIIa C B IVa薬物抵抗性あるいは抗不整脈薬が使用できない例で,著明な左房拡大を有さない心房細動に対するカテーテルアブレーションを考慮するIIa C C1 IVb薬物治療にても十分な心拍数調節がつかない頻脈性心房細動に対し,房室結節アブレーションを考慮するIIb C C1 VI