p.43 抽出テキスト
わち,わが国のガイドラインで定めたACE阻害薬あるいはARB,β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,利尿薬による標準的な薬物治療が推奨される.これらの標準的薬物治療に反応しないNYHAクラス III-IVの心不全症状を有する肥大型心筋症では,わが国のガイドラインで定めた適応基準に準じて心臓再同期療法,補助人工心臓および心臓移植が適応となりうる. 全く無症状の肥大型心筋症患者,とくに誘発を行っても圧較差を認めない非閉塞性肥大型心筋症患者に対する確立した薬物治療のエビデンスはない.併存疾患の治療は心不全のステージを進めないために有用かもしれない.また,現時点で無症状であっても定期的な経過観察は必要である. 肥大型心筋症による心不全における治療薬の推奨とエビデンスレベルを表28に示す. 6.2 突然死 突然死は肥大型心筋症関連死の約40%を占めると報告されており80, 302),最も重大な死因の1つである.肥大型心筋症に伴う突然死の発現頻度は1%/年あるいはそれ未満といわれ80, 302-304),突然死の危険性が高い患者は多くないが,一部に高リスク患者が存在している.一般的に,突然死の危険性が高い例は若い症例(とくに25歳未満)に多いとされてきたが,中年以降も認められる80, 302). 突然死の危険因子として,心停止,心室細動あるいは持続性心室頻拍からの蘇生例は,再発の危険性が高い(年率10%程度305, 306)).さらに突然死の危険因子として5つの危険因子が知られている306, 307).1)肥大型心筋症に伴う突然死の家族歴,2)原因不明の失神,3)著明な左室肥大(≧ 30mm),4)ホルター心電図による非持続性心室頻拍, 5)運動中の血圧異常反応 が報告されてきた105, 307).肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)では9),これらの危険因子を横並びで記載し,患者背景も鑑みた上で突然死予防のための植込み型除細動器(ICD)適応を検討することを推奨した.一方でこれらの危険因子の重みづけは均等ではなく,突然死と関連している程度が各因子で異なるとの指摘がある.たとえば,非持続性心室頻拍については,若年(30歳以下)では独立した危険因子になるという報告もあるが308),単独では弱いとされる307).さらに,近年の研究から左室流出路閉塞,CMRによる広い遅延造影像,拡張相に移行した肥大型心筋症,左室心尖部の瘤形成(左室中部閉塞に伴うものを含む)などが突然死の危険因子としての可能性を指摘されている24, 25, 154, 307, 309).なお,心房細動や電気生理学的検査による持続性心室頻拍・心室細動誘発の誘発性については,突然死の予測性に限界がある307, 310).また,遺伝子変異についても臨床転帰との関連性について調べられてきているが,現時点では突然死の予測性はまだ確立していない311). 2011年ACCF/AHAガイドラインでは114),危険因子のなかでも第1度近親者の突然死歴,最近の原因不明の失神,著明な左室肥大(≧30mm)を重要視している.また,非持続性心室頻拍や運動中の血圧異常反応は単一の危険因子としては強くはないが,それ以外の病態(左室流出路狭窄,CMRでのガドリニウム遅延造影所見,心尖部瘤,突然死関連の強いとされる遺伝子変異)もあわせてICD適応決定のための突然死の危険度を層別化している.2014年 表28 肥大型心筋症による心不全における治療薬の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベルMinds 推奨グレードMinds エビデンス 分類 NYHA I の非閉塞性肥大型心筋症(HFpEF)の拡張機能改善を目的としたβ遮断薬あるいはカルシウム拮抗薬(ベラパミル)投与IIb C C2 V NYHA II-IV の非閉塞性肥大型心筋症(HFpEF)の症状改善を目的としたβ遮断薬あるいはカルシウム拮抗薬(ベラパミル・ジルチアぜム)投与I B B III NYHA II-IV の非閉塞性肥大型心筋症(HFpEF)のうっ血症状改善を目的とした低用量利尿薬(ループ系あるいはサイアザイド)の投与I C C1 VI拡張相肥大型心筋症(HFmrEF,HFrEF)に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬あるいはアンジオテンシンII 受容体拮抗薬およびβ遮断薬I C C1 VI NYHA II-IV の拡張相肥大型心筋症(HFmrEF,HFrEF)に対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬投与IIa C C1 VI NYHA II-IV の拡張相肥大型心筋症(HFmrEF,HFrEF)のうっ血症状改善を目的とした利尿薬投与I C C1 VI