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表24 肥大型心筋症の病理組織学的な特徴および主な類縁疾患との鑑別点 肥大型心筋症拘束型心筋症心アミロイ ドーシスファブリー病糖原病ミトコンドリア 心筋症その他の二次性心筋症 肉眼病理所見典型例では非対称性中隔肥厚(ASH)に代表される不均等な壁肥厚.流出路狭窄の高度な閉塞型,心突部肥大型など亜型がある.拡張相に移行するとASHなどの特徴は失われる(図16).いわゆる肥大心(壁厚増大)や拡大心(心腔拡張)の明らかでない拡張不全心.心内膜の高度線維性肥厚は心内膜線維弾性症やレフレル心内膜炎を疑う.両心房は高度に拡大する.通常,両心室全周性に高度な壁厚の増大を伴う肥大心の形態で,割面は光沢を有する蝋様を示し,高度な沈着例はゴムのような硬度となる.肥大心を呈する場合が多いが,RCM様の機能形態を示す場合や,収縮能が低下すると心腔が拡大する.壁肥厚を伴う心肥大が見られ, Pompe 病ではとくに左室自由壁や乳頭筋が肥厚し内腔が狭小化する.割面は薄桃色でゴム状を呈しうる.心内膜線維弾性症を伴う症例もある. HCMに類似した高度肥大心を呈する場合がある.また,DCM様,あるいは左室緻密化障害様の形態変化を示す場合もある.高血圧や大動脈弁狭窄による圧負荷では均等な求心性肥大を生じることが多いが,ときに不均等な肥大を示しHCMと鑑別を要する.糖尿病や尿毒症,ステロイドも肥大心を呈しうる.スポーツ心臓(athletic heart)は生 理的適応とされるが,疾患素因が顕性化されるリスクがあり,ときに病的肥大との鑑別が難しい. 組織病理所見典型例では奇怪な変性核を有する肥大心筋の錯綜配列,すなわちBMHD像を呈し,蔓状線維化や小動脈壁肥厚を伴う.錯綜配列は電顕で筋原線維レベルでも観察される.拡張相に移行したものは線維化の強い退行的な組織像を示す(図17A-C).心筋肥大,間質の線維化,心筋配列異常等が見られるが,軽度な例が多く,特異的な所見はない.原発性のRCM の診断において組織像は,拘束型機能障害を示す種々の心内膜・心筋疾患の除外診断に有用である.アミロイドはエオジン好性無構造物として血管周囲,間質に沈着し, Congo red 染色陽性(図17 D).偏光レンズ下で黄緑色の複屈折性を認めることで確定する.心臓に沈着するものは主にAL,ATTR, AAで,透析患者ではAβMの場合がある.心筋細胞は肥大し空胞変性が目立ち,典型的な例はnetwork patternを示す.(図17 E,F).空胞化した部分は電顕用トルイジンブルー染色標本で濃染し電顕では同心円状のライソゾーム封入体が観察される.確定には酵素活性の測定,遺伝子検索を行う.心筋は高度の空胞変性を示し,沈着するグリコーゲンにより筋原線維が細胞辺縁に圧排されるため,レース状の形態を呈する.グリコーゲンはPAS染色陽性を示す.小児例の組織像では横紋筋腫との鑑別を要する.心筋は空胞変性を示すが,代償的に増加したミトコンドリアにより細胞質が赤色顆粒状に観察されることがある.電顕ではリング状の大型ミトコンドリアをはじめさまざまの形態異常が観察される.ミトコンドリア酵素活性や遺伝子レベルでの確定が必要である.高血圧心では小血管壁の肥厚,血管周囲性線維化が見られるが,同様の変化は肥満者,糖尿病でも見られ,尿毒症性の場合も合併する高血圧の影響が大きい.ただし,いずれも特異的所見はなく,臨床病理相関を考慮して判断する.なお, CD36欠損症もHCM様形質を示す場合があるが,免疫染色で心筋周囲の毛細血管におけるCD36発現が欠如する. 補足事項心筋生検では剖検心に見られるような特徴的所見が得られないことも多く,非特異的所見を示す.診断は臨床事項も含めた除外診断のうえ,総合的に確定される.錯綜配列も特異的所見ではなく,生理的ないし各種病態でも観察される. RCM は小児に多く,特発性RCMは成人では稀であるが,心筋生検はHCM,アミロイドーシス,レフレル心内膜炎などの鑑別に有用である.前駆蛋白の確定が予後の推定,治療法の選択に重要.通常は免疫染色で行うが,判定の難しい場合は,専門施設にアミノ酸解析や遺伝子解析を含めて同定を依頼することができる.心筋に観察される空胞変性の鑑別には電顕が有用で,光顕標本作製時に流失する脂溶性物質も保持される.このため心筋生検では1切片は電顕用検体を確保しておくとよい.心症状を示す糖原病はII,III, IV型で多くは小児科領域だが,稀に成人期に発見される.電顕では心筋細胞に著明なグリコーゲン蓄積がみられ,IV型では微細線維状を呈する.Danon病ではLAMP2欠損を免疫染色で検出可能,電顕では自己貪食空胞が増加する.心筋において電顕で観察されるミトコンドリア形態異常の多くは非特異的な代償機転や細胞障害を反映した所見であり,必ずしもミトコンドリア異常症を意味しない.疑診例ではミトコンドリア酵素活性や遺伝子検索が考慮される.高血圧では心筋肥大を生じてもHCM様の心筋径の大小不同性や錯綜配列などの構築異常は稀とされるが,しばしば両者は合併する.その他,甲状腺機能異常症などの内分泌疾患も原疾患に関連した心障害と二次性高血圧を介した心障害が関与しうる.また,褐色細胞腫によるものはタコツボ様機能障害を呈する場合がある.