p.36 抽出テキスト
められる.心筋線維の配列の乱れとして重畳(overlapped),渦巻き(whorled),交錯(intertwined),異常分岐(abnormally branching)などが散見される.典型例では正常心にみられる心筋細胞の平行走行は消失し,錯綜配列が多くなり,個々の心筋細胞の高度な肥大,心筋の核型は不整となり,または巨大化し,核クロマチンの増量が出現する(bizarre myocardial hypertrophy with disorganization; BMHD).錯綜配列を示す部位の間質には編みこんだような線維化がみられ,これはplexiform fibrosisと呼ばれている(図17A,B).また肥厚した心室壁には小動脈の内膜および中膜の肥厚がみられる (small intramural coronary artery dysplasia; SICAD) (図17C). しかし,このような組織学的所見は剖検心に見られることが多く,心筋生検によって得られる材料においても肥大型心筋症に特徴的な心筋肥大や錯綜配列を認めれば有力な所見となるが,生検標本上では肥大のみの所見であることもある.実際の心筋生検はサンプリングエラーが多く,確定診断には心エコー検査などの臨床情報が必須である.しかし,以下に述べるような肥大を主体とした二次性心筋症との鑑別には心筋生検は有用な検査である15, 247, 249). iii. 肥大型心筋症と鑑別の必要な特発性(原発性)心筋症 拘束型心筋症(RCM)との鑑別が重要である.小児例と異なり成人の拘束型心筋症は比較的まれな疾患であるが,近年,特有の遺伝子異常も指摘されている250).拘束型心 筋症は心室の拡張不全が主症状であり,収縮能は比較的保持されている病態であるが,この病態を示す疾患としては,拘束性機能障害を呈する肥大型心筋症の他,高血圧性心肥大,心内膜層が線維性肥厚する疾患,たとえば心内膜線維弾性症や好酸球増多症を伴うレフレル心内膜炎がある.また,組織学的には肥大型心筋症と鑑別できない拘束型心筋症の病態を示す症例もしばしば経験する.さらに,心アミロイドーシス,ヘモクロマトーシス,糖原病などの蓄積病などの場合もあり,これらの鑑別には心筋生検が有用である.これら肥大型心筋症,拘束型心筋症ならびに関連する主な二次性心筋症の病理組織学的な鑑別の要点については以下に記す.表24もあわせて参照されたい. iv. 肥大型心筋症と鑑別が必要な主な二次性心筋症a)心アミロイドーシス 原因不明の心機能低下,拡張不全を示す症例で心電図上のlow voltage,心エコー図でも心筋の肥厚,エコー輝度の増加を示すときは,心筋生検による心アミロイドーシスの検索が望まれる.また,臨床的に高血圧性心疾患や肥大型心筋症が疑われた症例で心筋生検によりアミロイドーシスであることが判明することもある. アミロイドは組織学的にHE染色で無構造な好酸性を示し,間質に沈着,コンゴ赤染色またはDFS染色では橙色を 50μm 20μm 2μm A D E F B C 図17 肥大型心筋症とその鑑別疾患の組織所見 A: 肥大型心筋症,剖検例Masson’s trichrome(MT)染色,典型的なdisarryを示す. B: 肥大型心筋症,心筋生検MT染色,斑状のplexiform fibrosisで高度な線維化を示す症例では拡張相肥大型心筋症への移行も疑われる. C: 肥大型心筋症,心筋生検MT染色,small intramural coronary artery dysplasia(SICAD)が心筋生検で確認された. D: 心アミロイドーシス症例,HE染色 (inset:Congo red染色陽性),高齢者の心筋生検でATTRであった. E: 肥大型心筋症疑診例の心筋生検HE染色,細胞質に高度な空胞変性が見られる(insetはGb3の免疫染色).ファブリー病が示唆された. F: Eと同一症例の電顕では無数のIamellar bodyが観察された.