p.32 抽出テキスト
すなわちdeep cut sectionの作製により感度の向上を期待しうる.炎症細胞の同定にはCD3(T-cell),CD68 (macrophage)等の免疫染色が有用である.アミロイド前駆蛋白の検索についても免疫グロブリン軽鎖(kappa, lambda),トランスサイレチン(transthyretin),Amyloid-A component,そして透析患者であればβ2-microglobulinを加えて免疫染色を行うが,アミノ酸解析や遺伝子検索が必要な場合は専門施設への依頼を考慮する235, 236).その他,免疫染色が有用な例としてmajor basic protein(MBP)等の好酸球性顆粒,ファブリー病におけるglobotriaosylceramide (Gb3)等の検出,筋ジストロフィー症が疑われる症例でのdystrophinなどがある237). 少なくとも1個の組織片は電子顕微鏡(電顕)用に2.5%グルタールアルデヒド固定液(冷蔵)で固定することが望ましく,とくに光顕上,空胞変性として観察される心筋内 沈着物(ファブリー病の際の層状ライソゾーム封入体など)やミトコンドリアの形態変化,アミロイド細線維の確認に有用である.また拡張型心筋症においては,電顕所見上の筋原線維の粗鬆化ないし融解像が予後の悪化を238),逆に 表20 クリニカルシナリオによる心筋生検の適応 シナリオ 番号クリニカルシナリオ代表的な鑑別疾患クラス 分類エビデンス レベルESC 病理 分科会推奨レベル 1 新規発症2週間以内の血行動態の破綻した心不全で,左 室腔は正常大ないし拡大を示すもの心筋炎(ウイルス性,好酸球性,巨細胞性)・心筋症I B S 2 新規発症2週間~3ヵ月の心不全で,左室腔拡大と新規 発症の心室性不整脈,II~III度房室ブロック,あるいは 1~2週間の一般的治療に不応性を示すもの心筋炎・心筋症・心臓サルコイドーシスI B S 3 3ヵ月以上継続する心不全で,左室腔拡大と新規発症の 心室性不整脈,II~III度房室ブロック,あるいは1~2 週間の一般的治療に不応性を示すもの心筋症(DCM,HCMなど) IIa C M 4 DCM様病態の心不全(病悩期間を問わない)でアレル ギー反応(過敏性反応)や血中好酸球増多を示すものレフレル心内膜心筋炎,好酸球性心筋炎IIa C S 5 アントラサイクリン系薬剤による心筋症の疑われるもの 薬剤性心筋症 IIa C M 6 原因不明のRCM様病態を示す心不全 RCM・心アミロイドーシス, ファブリー病などの蓄積疾患 IIa C M 7 心臓腫瘍が疑われるもの 肉腫,癌腫の転移,リンパ腫 IIa C S 8 小児の原因不明の心筋症 先天性代謝異常症など IIa C M 9 新規発症2週間~3ヵ月の心不全で,左室腔拡大を示す も新規発症の心室性不整脈,II~III度房室ブロックが見 られず,1~2週間の一般的治療に反応するものIIb B 10 3ヵ月以上継続する心不全で,左室腔拡大を示すも新規 発症の心室性不整脈,II~III度房室ブロックが見られず, 1~2週間の一般的治療に反応をするもの IIb C 11 HCM様病態に合併した原因不明の心不全 HCM・心アミロイドーシス, ファブリー病などの蓄積疾患 IIb C 12 ARVC/Dが疑われるもの ARVC/D IIb C S 13 原因不明の心室性不整脈 種々の二次性心筋症 IIb C 14 原因不明の心房細動 III C 註;ESC病理分科会推奨レベル,S:supported,M:mixture of supported and not supported (Leone O, et al. 2012 224),Cooper LT, et al. 2007 225)より改変) © 2007 by the American College of Cardiology Foundation, with permission from Elsevier. 表21 心筋生検の検体採取から標本作製までの注意事項 • sampling errorを少なくするために,検体は3~5個採取することが望ましい• ホルマリン固定は室温で行う(低温ではcontraction band artifactが出現する) • 組織で陰性所見であっても,臨床データから疑わしい場合は,検体の深切りを行う• 標本の人工産物artifactを極力なくすため,artifactを理解し,検体の取り扱いに慣れる必要がある