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る.肥大型心筋症の冠動脈造影では収縮期に一致して,心筋による圧迫によって左冠動脈前下行枝が狭小化するmyocardial bridgingと呼ばれる狭窄所見を認めることがあるが,心臓突然死などとの関連性については確立されていない219-221). また,閉塞性肥大型心筋症において,経皮的中隔心筋焼灼術や外科的中隔心筋切除術の適応を検討する場合には,治療対象となる心室中隔穿通枝の同定や還流領域の評価の目的で冠動脈造影もしくは冠動脈CTでの評価を考慮する208, 222). 4.6.6 電気生理学的検査 前項(第3章4.2.4臨床電気生理学的検査)参照のこと. 4.7 心内膜心筋生検・病理 4.7.1 心内膜心筋生検(心筋生検):総論 a. 心筋生検の適応 今日,世界で普及している心臓カテーテル法を用いた心内膜心筋生検(endomyocardial biopsy,心筋生検)は, 1962年今野,榊原によって開発され223),外科的材料を除くと生体において心筋の組織学的情報を得る唯一の方法である.心筋症の確定診断に心筋生検は必須ではないが,心筋生検は移植心の拒絶反応のモニタリングに必須な検査であるだけではなく,原発性の心筋症と心筋炎,その他の特異的な二次性心筋症の鑑別,ときに心臓腫瘍の診断にも有用である224-226). 心筋生検の適応に関する国際的なガイドラインとしては2007年,米国心臓協会,米国心臓病学会および欧州心臓病学会が合同でクリニカルシナリオに基づく分類を提唱225),2011年には欧州心臓血管病理協会と心臓血管病理学会との合同声明が公表されており224),表20に前者の概略を示す.この中で,急性期に血行動態の破綻した新規発症心不全(クリニカルシナリオ1)は,主としてステロイド等の免疫抑制療法の適応となる劇症型の壊死性好酸球性心筋炎や巨細胞性心筋炎の早期鑑別を念頭においたものであるが225),心筋組織での好酸球浸潤は必ずしも好酸球増多症を伴わないため,慢性期を含めて過敏性反応や自己免疫性機序を反映する好酸球浸潤の検出は治療法の選択に有用である.その他,比較的頻度が高く有用性の高い事例はサルコイドーシス,アミロイドーシス,ファブリー病やアントラサイクリン系薬剤等による薬剤性心筋症を疑う症例等の鑑別であるが224-226),わが国では心臓移植適応判定の申請に先立って,明らかな虚血性心筋症を除いては心筋生検による二次性心筋症の鑑別が必須とされている227). 国立循環器病研究センターの直近12年間,5,260例の心筋生検では心臓移植後の拒絶反応のモニタリングが31.5%と最多であり,次いで拡張型心筋症,肥大型心筋症,心筋炎と診断されたものがそれぞれ23.8%,14.9%,7.5%であった226). b. 検体採取と合併症 心筋生検では右室ないし左室から検体を採取するが,組織情報の有用性や合併症の頻度においてそれらの優劣は必ずしも定まってはいない.施術者の技量,施設内での経験則や患者の状態,病変部位等により選択されるが,多くの場合,検体は右室中隔から採取され,同部位は左室の一部とみなすこともできる.透視下に盲目的に検体を採取するため,病変が局在する疾患の場合はサンプリングエラーの頻度が高く228),通常,3~5個の検体の採取が望まれる.近年,とくにサルコイドーシスが疑われる症例において, MRI 229),18 fluoro-2-deoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET) 230)や電気解剖学的マッピング231)による病変部位の同定を併用し診断精度を上げる試みも報告されている. 心筋生検では生検用カテーテル(bioptome)の穿通による血性心嚢液貯留による心タンポナーデ,血管損傷,心室性ないし上室性不整脈,脚ブロック,気胸,肺塞栓や脳梗塞,三尖弁や僧帽弁の腱索断裂による弁逆流,迷走神経反射,穿刺部の血腫や感染などの合併症のリスクがある224, 225).心筋生検において重篤な合併症を生じる頻度は1%未満とされ,1998年のわが国での調査では左右のアプローチを問わず心室穿孔が0.7%(147/19,964人),死亡例が0.05%(10/19,964人)であり,穿孔した場合の死亡率は左心室12.9%,右心室5.2%であった232).ドイツからの2010年の報告では心嚢ドレナージを要した穿孔は右室0.8%(4/490人),左室0.3%(2/622人)で死亡例はなかった233).施術後に血圧低下,頻脈を呈し,心エコー検査で心嚢液貯留が認められた場合は,速やかにエコーガイド下の穿刺ないし直視下心膜切開によるドレナージが必要である234). c. 組織検体の取扱いと検索方法(表21) 心筋生検で得られた組織検体は10%中性緩衝ホルマリン液中(室温)で一晩固定し,光学顕微鏡(光顕)用のプレパラート作製に賦す.標準染色であるHE染色と線維化の描出に優れたMasson’s trichrome染色を基本に適宜,(ジアスターゼ消化)PAS染色,Congo-red等のアミロイド染色,EVG(弾性線維)染色,ベルリンブルー鉄染色等の特殊染色を追加する.サルコイド肉芽腫の検出などサンプリングエラーの懸念される症例では組織ブロックの深切り,