p.26 抽出テキスト
ある138, 143, 144). したがって,流出路狭窄に対するアルコール中隔焼灼術や外科的中隔切除術の適応を検討する際には,評価のために行うことが望ましい114, 138, 143, 145).その他,左室重量の定量的評価146),右室心筋への肥大の波及147),非連続性の心筋肥大139, 145)などが,シネMRIを用いて評価が可能である. 4.4.2 肥大型心筋症の主な亜型:心尖部肥大型心筋症と 中部閉塞性肥大型心筋症 心尖部肥大型心筋症の心尖部肥大は,アコースチックウインドウの制限と短縮のため,経胸壁心エコー検査では観察が困難であり,CMRの施行は有効である148).非対称性の中隔肥厚を有する群と心尖部肥大を有する群における遅延造影の分布パターンを比較検討すると,斑状の遅延造影はそれぞれの主な肥大部位に認められ,遅延造影の分布には明らかな違いが認められた149).また,心尖部の心室瘤は非造影の経胸壁心エコー検査では40%が見逃されるという報告があるが25),CMRでは多くの例で描画は容易である.心尖部瘤は,収縮低下あるいは無収縮を示す菲薄化した心筋を呈し,遅延造影ではしばしば貫壁性の線維化による陽性を呈し有害事象と関連する.また,心室瘤を伴う中部閉塞型肥大型心筋症では,しばしば重症不整脈を伴い,その診断に遅延造影MRIは有用である150). 4.4.3 遅延造影MRI 肥大型心筋症において,遅延造影MRIで高信号を示す部位(LGE)の多くは心筋の線維化を示していると考えられる.このように高信号を示す部位は,LGE陽性と判定され,全左室容積のパーセントで定量評価が可能である. LGE陽性は肥大型心筋症の約7割前後で認められ,主に左室壁の肥厚部および,心室中隔と右室自由壁との接合部に認められる(図12).このような遅延造影の造影パター ンは,肥大型心筋症と他の肥大を示す疾患との鑑別診断に有用である151, 152).突然死リスクの層別化 肥大型心筋症において,LGEの有無とその予後との関連については,今日なお議論のあるところであるが,遅延造影を示さない症例は一般に予後は良好である.711人の肥大型心筋症患者を対象に,LGEの有無と予後との関係を3.5年間観察した研究では,LGEと突然死のリスクとの間には全く関係が認められなかったとする報告がある153). 一方,1,300人の肥大型心筋症で定量的造影MRIを用いた検討では,広範なLGEの陽性は,突然死の独立した予後予測因子であり,LGEの量が左室重量の15%を超えると,一般的な突然死のリスクを持たない肥大型心筋症でも,突然死のリスクは2倍になることが示されている154).24時間ホルター心電図上の心室頻拍のリスクを,肥大型心筋症のLGEの有無で比較した観察研究では,LGEを有する肥大型心筋症の心室頻拍のリスクはLGEを示さない肥大型心筋症に比して非常に高く,心筋の線維化が潜在的に致命的なリエントリー性心室頻拍の発生のための構造的な病巣であることが示唆された155).7つの研究を検討したメタ解析では,LGEが存在すると突然死のリスクが増大し,心臓突然死は3.41倍,全死亡は1.8倍,心臓死は2.93倍であった.また,LGEの広がりは心臓突然死の増加と関連しており,LGEの範囲が10%では,心臓突然死は1.56倍,心不全死は1.61倍,全死亡は1.29倍,心臓死は1.57倍であった.ベースラインの基準値で調整しても,LGEの広がりは心臓突然死のリスクと強く関連し,LGE 10%でリスクは1.57倍であった156).LGEの有無と広がりは,肥大型心筋症の突然死および心臓死および全死亡と強く連関していることが報告されている157, 158). A B C 図12 肥大型心筋症の遅延造影MRI A:非対称性中隔肥大を示す肥大型心筋症に認められた遅延造影B:心尖部肥大型心筋症の遅延造影C:中部閉塞性肥大型心筋症の心尖部瘤に認められた遅延造影