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p.23 抽出テキスト

り,左房拡大を示す症例が多い. c. 合併症:左室腔内閉塞i. 左室流出路狭窄,僧帽弁複合体(Mitral Complex)の異常

肥大型心筋症では,心室中隔左室面と僧帽弁前尖の間に機能的狭窄を呈する症例が多い.これは閉塞性肥大型心筋症と分類され,非閉塞型と区別される.

左室流出路閉塞は,左室収縮期圧の上昇を引き起こし,結果として左室弛緩時間の延長,左室拡張末期圧の上昇,僧帽弁尖の収縮期前方運動(SAM)による僧帽弁逆流,心筋虚血および心拍出量の低下をもたらす.その主たる機序としては,一時期は,閉塞した流出路を,血液が高速で通過して生じる陰圧により,僧帽弁が中隔に引っ張られるVenturi効果で説明がなされてきたが,現在ではその関与はわずかであると考えられている.

近年は,1乳頭筋の前方偏位のため,収縮により僧帽弁が中隔側に引っ張られ,流出路内に偏位する,2前尖が伸長して,前尖の体部が後尖と接合するため,前尖先端部に余剰部分が生じる,3乳頭筋間が狭小化して,前尖中央部に付着する腱索にたるみが生じるため,僧帽弁先端部(とくにその中央部)は緊張がなくなり,流出路の血流の影響を受けて中隔に押し付けられるなどにより,左室収縮期に僧帽弁複合体の位置が偏移し,それがdrag forceにより前尖の流出路へのさらなる偏移をきたし(flow drag[pushing] mechanism),結果として流出路の閉塞を引き起こす,という機序が主たる原因とされている124-126).その証拠として,前尖の収縮期前方運動開始時には,多くの症例で左室流出路の流速は正常範囲内であるという事実が挙げられ,流速が速くなることにより陰圧が生じ,前尖が引っ張られるというVenturi効果説と実際の現象とは解離があることが明らかとなっている127-129).流出路の圧較差は種々の要因により非常に変化しやすい.とくに収縮性の増強,前負荷の減少,後負荷の減少は,心室の容積を減少させ,僧帽弁を中隔に近づけ,圧較差が増強するように働く.

SAMはMモード法にて確認する.左室流出路閉塞により駆出血流が途絶する例では,大動脈弁の収縮中期半閉鎖がみられる.左室流出路を通過する高速血流はカラードプラ像のモザイクシグナルとして,また,連続波ドプラ法では,収縮中期~後期にピークを有する駆出血流速波形として観察される.簡易Bernoulli式を用いて,この駆出血流の最高流速(Vmax)より左室流出路圧較差(pressure gradient:Δ P)が推定でき(Δ P=4Vmax 2) 130),心臓カテーテル法で求めた圧較差と良好な一致を示す131).左室流出路血流速波形は僧帽弁逆流血流速波形と酷似するが,前者は大動脈弁開放時から大動脈弁閉鎖時まで,後者は僧帽弁閉鎖から僧帽弁開放まで持続し,持続時間の違いで鑑

別する.しかし,両者の血流信号が重なり,鑑別が困難な場合はhigh PRF(pulse repetition frequency)法が役立つ.

内腔狭窄による圧較差の有無は,突然死リスク評価において重要であり,安静時,さらに座位や半座位にてバルサルバ手技を行い検出を試みる必要がある(図9)

132).簡易

Bernoulli式による圧較差が50mmHg未満の症例において,無症状の場合は1年ごとの経過観察でよいが,有症状の場合はトレッドミルまたはエルゴメータを用いた運動負荷エコーが推奨される(図10) 7, 18, 19).ただし,統一されたプロトコールはなく,またリスクも存在するため,それぞれの検査室で十分トレーニングを受けて行うことが望ましい133).心エコー検査施行下でのドブタミンや硝酸剤による圧較差誘発は,生理的誘発ではないため,運動負荷が困難な症例に限定して行われるべきである.閉塞性肥大型心筋症におけるSAMにて僧帽弁弁尖部の歪みを生じ,僧帽弁逆流が出現する場合がある.また,拡張相肥大型心筋症では,心拡大,収縮機能低下に伴い機能的僧帽弁逆流が認められ,予後に影響することより慎重な評価が必要である.

増強因子収縮力前負荷後負荷Valsalva手技‒ ↓ ↓立位‒ ↓ ‒期外収縮後↑ ↑ ‒ β刺激薬↑ ↓ ↓硝酸薬↑ ↓ ↓ PDE5阻害薬‒ ↓ ↓脱水‒ ↓ ↓頻脈↑ ↓ ‒労作後↑ ↑ ↓減弱因子Muller手技‒ ↑ ↑蹲踞‒ ↑ ↑ α刺激薬‒ ‒ ↑ β遮断薬↓ ↑ ‒ジソピラミド・シベンゾリン↓ ‒ ‒全身麻酔↓ ‒ ‒ハンドグリップ手技‒ ‒ ↑図9 左室流出路狭窄の評価(Braunwald E. 1997 132)より改変) © Elsevier(1997)