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p.21 抽出テキスト

肥大型心筋症における運動耐容能の低下は,左室拡張能,左室流出路圧較差,心筋虚血,収縮能低下,心房細動などの多くの因子が関係する.心肺運動負荷試験における最大酸素摂取量や換気応答の低下は,全死亡や心不全症状の悪化107-109),突然死110)などと関連することが報告されている.さらに心筋切除術や経皮的中隔心筋焼灼術による圧較差の軽減により,運動耐容能が改善することも報告されている.よって,肥大型心筋症における運動耐容能の評価は,予後予測や圧較差軽減のための治療方針の決定や治療に対する反応性の評価に有用である20).ただし,安静時に圧較差のある肥大型心筋症患者では,重篤な不整脈や運動中の血圧低下など運動負荷試験中の合併症が報告されており,安全には十分配慮し,検査に精通した施設で施行する必要がある.

4.2.4 臨床電気生理学的検査

心房期外刺激や高頻度刺激で持続性心房細動または心房粗動が誘発されたり,リエントリー性上室性頻拍が誘発されることがある.無症候性の肥大型心筋症では,持続性心室頻拍の誘発率は高くない.失神,心肺蘇生の既往,あるいは非持続性心室頻拍を有する肥大型心筋症での持続性心室頻拍の誘発率も,通常の2連早期刺激では15~ 18%,3連早期刺激まで行うと27~44%に上昇するが,その多くは多形性心室頻拍である111, 112),持続性心室頻拍の誘発は心事故予測因子の1つである113)が,その心事故予測の感度は80%,特異度70%であるのに対し,陽性的中率は17%で,電気生理学的検査による突然死の予測には限界がある.

4.3 心エコー法

肥大型心筋症における心エコー検査法の役割は,肥大型心筋症の診断,分類に寄与する心形態評価と重症度に寄与する心機能・血行動態・合併症評価である.なお,心筋症の心エコーについては,「循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン(2010年改訂版)」113a)にも詳細が記載さ

れているので,参照されたい.

4.3.1 経胸壁心エコー検査(表14)

a. 心形態評価

肥大型心筋症の特徴的な肥大様式は,左室壁のいずれかの場所で15mm以上(家族歴のある患者では13mm以上)の,圧負荷などで説明のつかない非均等型の左室壁肥厚である114).肥大の部位は心室中隔のみならず,左室後壁や前壁,側壁,さらに右室に局在することがある.わが国では,海外に比し心尖部肥大型心筋症が多いとされる31). Maronの分類は,前部中隔に限局する肥厚(I型),中隔全体の肥厚(II型),中隔から左室前壁や側壁を含む肥厚(III型),前部中隔以外の部位の肥厚(IV型)とされ,心尖部肥大型心筋症の少ない欧米ではよく用いられる115).肥大パターンは,傍胸骨短軸像を基本として,傍胸骨長軸像,さらに心尖部二腔,四腔断面像を併用し,見逃しのないように観察する.心尖部型は心エコー図では描出困難な場合があり,CTやCMRなど他の画像診断法から総合的に診断する.ただし,非均等型の左室壁肥厚は本症以外にも高度の右室負荷心,高血圧性心肥大,大動脈弁狭窄症などでもみられること,また,本症でも対称性壁肥厚もまれではないことも銘記すべきである116).心ファブリー病は,心筋細胞へのスフィンゴ糖脂質蓄積により全周性の左室肥大を示すため,鑑別を要する.左室,左房拡大,左室拡張障害,僧帽弁逆流を合併する117, 118). b. 心機能・血行動態・合併症評価i. 左室収縮機能

肥大型心筋症では通常左室駆出率は正常か軽度増加を示す.ただし,とくに内腔が狭小化している症例では,1回拍出量は低下していると考えられ,低心拍数の場合は注意を要する.また,一見左室駆出率は保たれていても, global longitudinal strain値は低下している症例が認められ,これらの症例はその後の予後が不良という報告があり,左室収縮機能は必ずしも正常と考えるべきではない119).

表13 肥大型心筋症における心肺運動負荷試験の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベルMinds

推奨グレードMinds

エビデンス

分類

運動中の血圧変化および運動耐容能評価のための心肺運動負荷試験IIa C B IVb

圧較差軽減のための非薬物治療の適応や効果判定のための心肺運動負荷試験IIa C C1 IVb