GL検索 v0.1.0
画像は 16 ページを描画したものです
page 16

p.16 抽出テキスト

り40),血中ACE濃度の変動など,心筋肥大に関与するさまざまな修飾因子が,肥大型心筋症の発症進展に影響を及ぼすものと推察される.

サルコメア遺伝子変異を有する肥大型心筋症症例は,それらを有さない肥大型心筋症症例と比較して左室肥大の程度はより重度であり,心筋組織内の微小循環障害や心筋線維化の程度がより高度であることが知られている41).また,サルコメア遺伝子変異を有する肥大型心筋症の約5%は複数のサルコメア変異を保有しており,より重篤な表現型を呈することが報告されている42).さらにわが国の多施設共同研究でも,サルコメア遺伝子変異を有する肥大型心筋症症例では,遺伝子変異の非保有症例と比較して心血管イベントの発生率が有意に高率であることが報告されている43).

肥大型心筋症の遺伝子表現型相関(genotype-phenotype correlation)に関する報告はこれまでも数多くなされているが,現時点では個々の症例における長期予後管理に応用するための十分なエビデンスの構築には至っていない14).遺伝子診断によるリスク層別化と予後予測については,現在のところ解決すべき課題が多いのが現状であり,今後次世代シーケンスを用いた網羅的な遺伝情報の解析による,新たな知見の集積が待たれている. 2.2 肥大型心筋症と鑑別すべき二次性心筋症

蓄積疾患や心臓外病変を有する全身疾患に伴って心肥大を呈する二次性心筋症は,その原因によっては特異的な治療法が効果がある可能性があるため,その鑑別は重要である.表10に肥大型心筋症類似の表現型を呈する二次性心筋症を示す7, 23).

二次性心筋症の頻度は,臨床的に肥大型心筋症が疑われる患者全体の5~10%と考えられている.多くの代謝性疾患は心肥大を呈することが知られている.

ファブリー(Anderson-Fabry病)病が頻度としては最多で,35~40歳以上の肥大型心筋症患者の0.5~1.0%とされている44).日本人の心肥大患者におけるファブリー病の頻度については1~3%の報告がある45, 46).X染色体長腕Xq22.1にコードされたGLA遺伝子の変異により,ライソゾームの加水分解酵素の1 つであるα -ガラクトシダーゼ(α-Gal)の活性低下や欠損により生じるX連鎖性遺伝性疾患である.男性では血漿,白血球α-Gal活性を測定することで診断される.一方,X連鎖性であるため女性ではヘテロ接合体となり,酵素活性だけでは診断ができない場合があり,家族歴や遺伝子検査などにより判断する.

AMP活性化プロテインキナーゼ(PRKAG2)遺伝子変

表9肥大型心筋症の原因となる主要なサルコメア関連遺伝子(Online Mendelian Inheritance in Man: OMIM phenotypic series,192600)

Gene Location Protein OMIM gene number Frequency Giant filament TTN 2q31.2 Titin; タイチン188840 <5%

Thick filament MYH7 14q11.2 Myosin-7(β-myosin heavy chain); 心筋ミオシン重鎖160760 10-20%

MYL2 12q24.11 Myosin regulatory light chain 2; 心室型ミオシン調節軽鎖160781 – MYL3 3q21.31 Myosin light chain 3; 心室型ミオシン必須軽鎖160790 1%

Intermediate filament MYBPC3 11p11.2 Myosin-binding protein C, cardiac-type; 心筋ミオシン結合蛋白C 600958 15-30%

Thin filament TNNT2 1q32.1 Troponin T, cardiac muscle; 心筋トロポニンT 191045 3-5%

TNNI3 19q13.42 Troponin I, cardiac muscle; 心筋トロポニンI 191044 1-5% TPM1 15q22.2 Tropomyosin alpha-I chain; αトロポミオシン191010 <5% ACTC1 15q14 Actin, alpha cardiac muscle I; 心筋αアクチン102540 –

Z-disc CSPR3 11p15.1 Cysteine and glycine-rich protein 3, muscle LIM protein; 筋LIM蛋白600824 – Calcium- Handling PLN 6q22.31 Cardiac phospholamban; フォスフォランバン172405 – (Elliott PM, et al. 2014 7)を参考に作表)