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p.14 抽出テキスト

13mm以上の左室壁肥厚を認めた場合,肥大型心筋症の可能性を考慮する.上記のように15mm以上の壁肥厚が認められた場合は,肥大型心筋症の可能性が高まること,13~14mmの場合も肥大型心筋症の可能性を念頭に除外診断を行うことと遺伝子検査などの肥大型心筋症を支持するような検査を追加することの重要性を強調している.

蓄積疾患や心臓外病変を有する全身疾患に伴う心肥大については,肥大型心筋症類似の病態を呈する二次性心筋症として区別する.二次性心筋症は,原因によっては疾患特異的な治療法があることに留意すべきである(第3章2原因の項参照).ファブリー病は,酵素補充療法が導入されてから10年以上が経過し,その有用性は確立している16).また,アミロイドーシスに対する新規治療も急速に進歩しており17),二次性心筋症の適切な診断はますます重要になってくる.

1.2 分類

肥大型心筋症の病型はさまざまであるが,本ガイドラインでは,2005年特発性心筋症調査研究班の分類をもとに,近年の知見を加味し,肥大型心筋症の病型を以下のように定義する(表8) 6-8, 14, 15).

1.2.1 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)

従来,安静時に左室流出路圧較差30mmHg以上存在する病型と定義されてきたが,安静時に有意な圧較差を認めなくても,運動などの生理的な誘発で有意な圧較差を認める症例が多いことが報告されてきたため18-23),本ガイドラインでは以下のように定義する.

・ HOCM(basal obstruction)安静時に30mmHg以上の左室流出路圧較差を認める.・ HOCM(labile /provocable obstruction)安静時に圧較差は30mmHg未満であるが,バルサルバ

法や運動などの生理的な誘発で30mmHg以上の圧較差を認める.

1.2.2 非閉塞性肥大型心筋症(non-obstructive HCM)

安静時および誘発時に30mmHg以上の圧較差を認めない.

1.2.3 心室中部閉塞性心筋症(MVO)

肥大に伴う心室中部での内腔狭窄がある場合,形態的には,左室中部に著しい肥大を認め,砂時計様の左室形態を示す.日本人肥大型心筋症の10%程度に認めると報告されている24).MVOに対する薬物療法は,しばしば効果は十分ではなく,治療に難渋することもある.経過中に約25%の患者が左室心尖部瘤を形成する.心尖部瘤を合併した場合,同部が心室頻拍の起源になったり,左室内血栓を生じ塞栓症の原因になる25, 26).

1.2.4 心尖部肥大型心筋症(apical HCM)

心尖部に肥大が限局する場合.1976年坂本二哉ら, 1979年山口洋らによりわが国から初めて報告された疾患である27, 28).その後,欧米からも本症の報告がなされたが,わが国と欧米からの報告では,心尖部肥大型心筋症の頻度や臨床像の違いがみられた.わが国では,中年以降の男性の弧発例が多く認められ,自覚症状はないか軽微であるのに対し,欧米では家族性であるものや症状の重篤な症例が報告された.この違いの理由の1つとして,診断方法や診断基準が一定でないことも一因と考えられ,本ガイドラインでは,心尖部肥大型心筋症の定義を心エコー検査で乳頭筋レベル以下の心尖部に限局して壁肥厚を認めるものとする29, 30).この診断基準で検討した心尖部肥大型心筋症の頻度は,日本で肥大型心筋症患者全体の15%程度に認められるのに対して米国では3%と低頻度である31).乳頭筋を越して心室中部よりまで肥大を認めるもの(広義の心尖部肥大型心筋症)も,臨床の現場では,心尖部肥大型心筋症と診断される場合もあるが,心尖部に肥大が限局した心尖部肥大型心筋症に比し,家族歴を有する頻度や重症の心不全症状を認める場合が多い29).

1.2.5 拡張相肥大型心筋症(D-HCM)

肥大型心筋症の経過中に,肥大した心室壁厚が減少・菲

表8肥大型心筋症の表現型の分類

1. 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)・HOCM(basal obstruction)安静時に30mmHg以上の左室流出路圧較差を認める・HOCM(labile / provocable obstruction)安静時に圧較差は30mmHg未満であるが,運動などの生理

的な誘発で30mmHg以上の圧較差を認める

2 非閉塞性肥大型心筋症(non-obstructive HCM)安静時および誘発時に30mmHg以上の圧較差を認めない

3 心室中部閉塞性心筋症(MVO)肥大に伴う心室中部での30mmHg以上の圧較差を認める

4 心尖部肥大型心筋症(apical HCM)心尖部に限局して肥大を認める

5. 拡張相肥大型心筋症(dilated phase of HCM; D-HCM)肥大型心筋症の経過中に,肥大した心室壁厚が減少・菲薄化し,心室内腔の拡大を伴う左室収縮力低下(左室駆出率50%未満)をきたし,拡張型心筋症様病態を呈する