p.53 抽出テキスト
の妊娠経験があった.しかし,その36% は流産で,8% で中絶が施行されていた.したがって,出生生存率は45% (255 妊娠で115 出生・生存)と低い(レベルC). a. 母体合併症 母体の心血管系合併症では不整脈が少なくない.上室頻拍(心房頻拍や粗動)やペースメーカ植え込みを含めると15% であった.10% で心不全が発症していた. b. 胎児,新生児合併症 在胎週数の平均あるいは中央値は,31 ~38 週と早産率が高く(61%),出生体重は約1,500 ~2,300 g であった.胎児,新生児の合併症は,子宮内発育遅延が約20%,死産の1 例を含め周産期死亡は全体で約7%(8 例)であった.また,出生児の先天性心疾患を合併は約5% となっていた. c. 産科的合併症 産科関連の合併症は,17% で産後出血が認められたが,血栓3%,妊娠関連高血圧腎症と妊娠高血圧症候群は各2% と多くなかった. 1.5.5 妊娠・分娩時の病態管理 a. 抗凝固療法 一般に,Fontan 術後患者では心不全に加え,その特殊な静脈系のうっ滞から凝固能が亢進し,血栓症を合併しやすい.妊娠中はさらに凝固能が亢進することから,Fontan術後患者の妊娠中の凝固系の管理は重要とされ,何らかの抗凝固療法が推奨されている(クラスIIa).しかし, Fontan 術後遠隔期での抗凝固療法が確立されていないのと同様に303),妊娠・出産時の抗凝固療法も確立していない.これまでの後ろ向き研究の報告では,妊娠中の管理では,40 ~50% でアスピリンやヘパリンによる抗凝固療法が施行されていた52, 289, 301, 302, 303a).また,抗凝固療法がまったく施行されていなかったり,ワルファリンが持続投与されていた症例も報告されている56).出産後は下肢静脈血栓の発生を予防するための適切な管理が必要である. b. 分娩法 一般に成人先天性心疾患患者では出血量が少ないことや予定帝王切開の明らかな利点がないとのことから,経膣分 表32 Fontan 術後患者の妊娠・出産報告 合併症心血管系産科系胎児,新生児 報告出産 症例妊娠 回数年齢 平均/中央値NYHA 心機能分類I~II 度 / III~V 度生存出 産中絶流産SVT/ PMI心不全帝王切開出血血栓症高血圧中毒症在胎週数 平均/ 中 央値出生体重 平均/ 中 央値早産IUGR周産期 死亡先天性 心疾患 Canobbio MM, et al. 1996 300) 21 33 24 15 5 13 1 1 11(14) ― ― 0 0 38 2,344 1 ― 0 1(ASD) Drenthen W, et al. 2006 61) 6 10 28.6 36/2 4 1 5 1 2 3/(4) 1 0 1 0 26-38 2,215 2 1 1 0 Gouton M, et al. 2015 56) 37 59 27 37/0 38 4 16 3 4 16/(38) 3 2 0 1 34 1,968 25 4 3 2(LSVC, SV) Caddwell M, et al. 2016 301) 8 43 29.4 8/0 14 0 6 3 1 7/(14) 7 1 0 0 29-30 1,682 10 8 1 0 Pundi KN, et al. 2016 289) 19 70 ― ― 29 6 35 9 3 10/(14) 2 0 1 1 33.1 2,086 18/ (22) 3 1 2(VSD, PDA) Zentner D, et al. 2016 302) 27 40 ― ― 15 4 17 1 1 ― 4 0 ― ― 31 1,585 10 ― 2(1 *) ―全体118 255 (24- 29.5) (81/2)115 20 92 18 12 (50%) 17 3 2 2 26-38 1,682- 2,344 66 16 8 5 頻度(%) ― 1.9/ 症 例― I~II (98%)45% 8% 36% 15% 10% ― 17% 3% 2% 2% ― ― 61% 19% 7% 5% 頻度の母数― ― ― ― 255 255 255 115 115 ― 100 100 100 100 ― ― 108 85 115 100 ASD:心房中隔欠損,IUGR:子宮内発育遅延,LSVC:左上大静脈遺残,NYHA:ニューヨーク心機能分類,PDA:動脈管開存,PMI:ペースメーカー植え込み,SVT:上室頻拍,SV:単心室,VSD:心室中隔欠損, *:死産