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p.51 抽出テキスト

ら1 ヵ月以内に起こる31, 263, 267).死亡原因は,肺動脈血栓症,出産時多量出血による循環血液量減少,出産直後の急激な静脈還流量増加やチアノーゼの急激な増悪などに起因する254).帝王切開は,自然分娩と比較して死亡率が高いとの報告があるが270),重症例に対して帝王切開を行っているというバイアスがある.このため,現状では,経膣分娩との優劣は明らかでない271, 272)(レベルB).チアノーゼの重症度によるが,流早産,死産の頻度が高い31, 263, 264). Eisenmenger 症候群は,短絡とチアノーゼが残存した心疾患であるため,IE の高リスク患者となる.よって,分娩時や産科的手技・処置の際の予防投与を推奨する(第1 章9. 感染性心内膜炎を参照のこと). b. 妊娠継続をする場合の対応(表30)

リスク情報を十分に提供されたうえで,なお患者が妊娠継続を希望する場合は,妊娠20 週以降は入院として床上安静を保ち,脱水の予防や補正を行い,呼吸困難時は酸素吸入を行う.周産期には,ヘパリン投与や継続的な酸素吸入を行う.出産時は,SpO2,呼吸心拍数をモニターし,無痛分娩,集中治療室管理とする195)(レベルC).帝王切開を行う場合は,麻酔時の体血管抵抗低下を避け,できる限り循環動態を一定に保つ努力をしなければならない273, 274).大量出血や血圧低下は致死的となるので早急に補正する.死亡例では広範な肺動脈血栓症を認めることが多い.抗凝固療法の適否についてはいまだ意見の統一がみられていないが,施行する場合は,妊娠20 週からヘパリン投与を開始し,出産直前に中止,さらに,出産後に再開する195, 263).しかし,元来,出血傾向の強いEisenmenger 症候群でのヘパリン投与には厳重な注意を要する264).出産後,最低2週間は入院管理とし,全身状態や循環動態の厳重な監視を行う260).周産期の一酸化窒素や,シルデナフィル,ボセンタンなどの肺血管拡張薬の使用は,いまだ症例報告レベルで,現時点では明らかな有効性が認められるとはいえない275).また,出産直後の循環虚脱に対して,補助循環使用により救命された例があるが,広く行われるものではない.繰り返しになるが,Eisenmenger 症候群の妊娠・出産は,

母体死亡率(30 ~80%),胎児死亡率(約50%)ともに高いため,妊娠・出産は避けることが強く望まれる.出産後数日~1 ヵ月以内に死の転帰をとることが多い31, 263)(レベルB).

1.5 Fontan 術後

1.5.1 解剖学的特徴と病態

Fontan 手術は二心室修復が困難な機能的単心室血行動態を有するチアノーゼ性先天性心疾患患者(単心室,純型肺動脈弁閉鎖,三尖弁閉鎖など)の低酸素血症解消と心室容量負荷軽減をおもな目的とした姑息的最終修復術であり,肺循環への駆出心室が欠如した術式である.手術法は右心房と肺動脈の直接吻合法(atriopulmonary connection: APC)と心房(低形成右室)収縮の影響の少ない大静脈肺動脈連合法(total cavopulmonary connection: TCPC)に分類される.TCPC 法はさらに心房壁の一部を利用したlateral tunnel 法(intra-atrial rerouting: IAR),利用しないintra-atrial grafting 法,心臓外導管や下大静脈を肺動脈に直接吻合した心外導管(extra-cardiac rerouting: ECR)法がある276, 277).

肺循環への駆出心室欠如から,中心静脈圧(CVP)上昇と体心室拡張能が肺循環を維持する.結果的に体心室前負荷障害,後負荷増大による低心拍出量を特色とした慢性心不全病態を示す277).運動耐容能は低下しているが278),自覚症状と一致しない場合も多い279).また,成人Fontan術後患者では慢性的な腹部臓器の静脈うっ血による多臓器機能異常が懸念されている.術後遠隔期の合併症には房室弁機能異常を含んだ心機能異常や不整脈を含む心血管系障害277),肺動静脈瘻(pulmonary arteriovenous fistula: PAVF)やプラスチック肺炎を含む呼吸器系の問題,肺血栓,脳梗塞や喀血を含む止血線溶系異常277, 280, 281),また,これと関連する肝疾患や蛋白漏出性胃腸症(protein losing entropathy: PLE),腎機能不全等がある282–284).これらに加え糖脂質等代謝異常の存在と心事故との関連が指摘されている285, 286).さらに,Fontan 術後患者でのaortopathyの知見もみられ287),大動脈解離も報告されている288).成人Fontan 術後患者では,多臓器疾患としてのFontan 病態を詳細に把握することが長期予後改善を目指す管理,治療戦略に重要とされている277).

表30 Eisenmenger 症候群患者が妊娠継続する場合の

注意点• 妊娠20 週以降は入院管理,出産後も2 週間は入院管理• 酸素投与• 強心薬,利尿薬投与(心不全合併時) • 出産時の心拍,動脈圧,(経皮的)動脈血酸素飽和度,ヘマトクリット値の監視• 出血や血圧低下による循環動態変化に対する的確な対応• 抗凝固薬の使用(使用の可否につき定説はない) • 脱水の予防,早期補正(すべてレベルC)