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p.46 抽出テキスト

1.1.6 肺動脈弁狭窄症

軽度のものはmodified WHO 分類はクラスI に分類される47).狭窄部圧較差が50 mmHg 以上あれば治療の対象となる.本疾患では多くの場合は心拍出量が正常範囲に保たれ,無症状であるが,妊娠を契機に心雑音や呼吸促迫で発見されることが多い.右室機能不全症状を示すことはまれである.妊娠前NYHA 心機能分類II 度の症例が,妊娠中に一時的にIII 度になったという報告もある216)ため,有症状例には注意が必要であるが,本疾患の妊娠予後は概して良好である.中等度までの肺動脈弁狭窄症は,妊娠中も大きな問題になることは少ない.高度狭窄で症状の強い例では,経皮的バルーン肺動脈弁形成術が考慮される.この際,放射線被曝に伴う器官形成異常を避けるため,妊娠中期以降まで治療を遅らせることが望ましい.

1.1.7 Ebstein 病

Ebstein 病は,三尖弁中隔尖または後尖(または両尖)の心尖部側偏位による三尖弁逆流が主たる病態である.三尖弁逆流,右室機能,さらにASD を介する右左短絡によるチアノーゼの程度などが,妊娠経過に影響する.また,しばしばWolff–Parkinson–White(WPW)症候群を合併するため,発作性上室頻拍を認めることが多く,頻拍性心房粗動からの失神や心室細動を生じるリスクもある.これら条件において軽症例ではほとんど合併症はみられないが,重症例では右心不全,奇異性血栓塞栓症,IE,低酸素血症などがみられることがある.チアノーゼは妊娠後に初めて気づかれることがあるが,高度になると胎児と母体のリスクが増加する(第2 章1.4 チアノーゼ残存例を参照のこと).妊娠前のNYHA 心機能分類と三尖弁閉鎖不全症の程度が,母体および胎児の予後の予測因子である47).

Ebstein 病の妊婦44 例111 妊娠という多数例の報告217)によると,生産児は76% で,そのうち27% が早期産児であった.自然流産が19 例,人工流産が7 例,新生児死亡が2 例あった.出産は11% が帝王切開によるものであった.チアノーゼ症状がみられる母体からの児の出生時体重は小さく,新生児の4% に先天性心疾患を認めた.しかし,母体死亡はなく,母体の心イベント発生率も低かった.

1.1.8 修正大血管転位症(修正大血管転換症)

解剖学的右房が僧帽弁を介して解剖学的左室に結合し,解剖学的左房が三尖弁を介して解剖学的右室に結合し,大動脈は解剖学的右室から起始し,肺動脈は解剖学的左室から起始する疾患である.VSD,肺動脈弁狭窄,肺動脈弁下狭窄,Ebstein 病様の三尖弁異常を合併することが多く,循環動態はこれら心内異常および体心室である右室機能に

依存する.房室ブロック,発作性上室頻拍などの不整脈が多い.

体心室が解剖学的右室であり,modified WHO 分類はクラスIII に分類され,高リスク妊娠になる47).妊娠中に,体循環右室の機能不全,とくに三尖弁(体循環側房室弁)逆流の進行により心不全を発症する例がある.単冠動脈例での心筋虚血の報告もある.児の流死産は20% 前後で,これは心内異常によるチアノーゼのある例で多い218, 219).

妊娠分娩の管理は,弁疾患,VSD,房室ブロック,それぞれの管理に準ずる.

1.2 非チアノーゼ性心疾患(修復術後)

非チアノーゼ性先天性心疾患術後は,良好に修復される.遺残症(とくに肺高血圧症)や続発症の程度が軽い場合は,遺伝の問題を除けば,母体の死亡率を増加させず,合併症の頻度も増加しないか,増加してもわずかである47, 208, 220, 221) (レベルB).

修復術後に遺残短絡が残る場合,修復術により短絡は消失したが術後6 ヵ月未満であり,とくに人工材料を用いた手術の場合,修復術後に弁逆流(房室弁,大動脈弁,肺動脈弁)などの遺残症・続発症を伴う場合などは,IE のリスクが高くなる.したがって,このような症例においては,分娩時や産科的手術・手技の際の,予防投与を推奨する(レベルB,第1 章9. 感染性心内膜炎を参照のこと).また,術後,中等度以上の遺残病変・続発病変があり,妊娠中に悪化することが予想される場合は,再手術,カテーテル・インターベンションなどで,妊娠前に修復しておくことが推奨される.

1.2.1 心房中隔欠損症術後

問題なく治療されている場合はmodified WHO 分類はクラスI に分類される47).妊娠によく耐容し,母体と胎児の予後は良好である208, 221)(レベルB).ただし,手術後症例では妊娠時に不整脈を合併することがある221).成人期での手術例は小児期手術例に比べて心不全や不整脈の頻度が高いため222),妊娠時には注意が必要である.房室弁逆流を伴う僧帽弁逸脱を合併する場合は,分娩時の心内膜炎予防を推奨する.なお,肺高血圧症残存例は「肺高血圧症」の項に従う(第2 章2. 肺高血圧症を参照のこと).

1.2.2 心室中隔欠損症術後

問題なく治療されている場合は,modified WHO 分類はクラスI に分類され,妊娠によく耐容し,母体と胎児の予